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こちらの記事の監修医師
感染症内科 中村(内山)ふくみ先生

はしょうふう破傷風

概要

破傷風は破傷風菌が傷口から体内に侵入して増殖し、菌が産生する毒素によって筋肉のこわばりや呼吸障害、けいれんなどを引き起こす病気。破傷風菌は土などの環境中に常に存在する細菌で、ケガの大小にかかわらず、皮膚の傷はすべて原因となりうる。発症すると重症化することが多く、死亡する確率も高い病気である。特に新生児破傷風の場合は、発症から10日以内の死亡率が60~90%にものぼる。ただし、ワクチン(破傷風トキソイド)接種による予防効果が高い病気のため、近年では日本での新生児感染は見られない。1968年(昭和43年)以前に出生した年齢層では、定期接種に破傷風トキソイドが含まれていなかったため破傷風発症のリスクが高いと考えられている。

原因

破傷風菌が土の中にいる間は「芽胞」(がほう)と呼ばれる硬い殻をかぶり、休眠した状態で存在している。この芽胞が傷口から体内に入ると活動を開始し、増殖していく。破傷風菌は増殖する際に毒素を産生し、これが全身に広がり、脳や中枢神経、末梢神経、脊髄、交感神経などに運ばれることによって、さまざまな症状を引き起こす。感染の元になる傷は、ケガ、動物に噛まれる、やけど、凍傷などが多く、また本人に自覚のない目に見えないような小さな傷でも原因となりうる。破傷風菌の芽胞は土の他に、人や家畜のふんなどの中にも広く存在しており、普段の日常生活を送る中でまったく芽胞に触れずに生活することは難しいとされる。なおアメリカでは、破傷風菌に汚染された薬物が原因で、薬物依存者に感染する事例も起きている。

症状

破傷風菌の潜伏期間は3~21日程度で、初期に現れる特徴的な症状としては、口を開けづらい(開口障害)、首筋の張りなど。そのうち開口障害が強くなってきて、顔の筋肉がこわばり、まるで笑ったような引きつった表情になる。その後、腕や体の大きな筋肉のけいれんが起きるようになり、重症化すると、体が後ろにのけぞるようなけいれん発作が起きる。時には背骨や足が骨折するほどの強い発作にみまわれることもあるが、意識ははっきりとしていることが多い。こうした症状と並行して、自律神経の異常も起き、呼吸ができなくなったり、血圧や心拍数が急激に変化して突然心停止したりと、重篤な状態を引き起こす。

検査・診断

早急に治療を開始する必要があるため、症状や経過から診断して破傷風の疑いが強ければ、検査より先に治療を始めることも多い。補助的に傷口から菌を培養して調べることがあるが、破傷風菌の分離・培養は難しく、また検査時にすでに抗菌薬が投与されていれば、破傷風菌を検出する可能性は低くなる。状況に応じて、血液中の破傷風毒素に対する抗体の濃度を調べる場合もある。

治療

感染部位を開いて洗い流し、膿や血流が通わなくなった組織を取り除いていく。さらに薬物治療として、抗破傷風ヒト免疫グロブリン(TIG)を投与する。TIGには、破傷風菌によって生じた血液中の毒素を中和する効果が見込まれる。ただし、血液やリンパ液を通じてすでに体内の組織に運ばれてしまった毒素については、その効果は期待できない。また、抗体を作る目的で、過去の破傷風ワクチン接種歴の有無や接種後長期間が経過している場合には破傷風トキソイドを投与するケースもある。抗菌薬については、破傷風菌を死滅させる効果があるため、それ以上体内で破傷風菌が増殖することを防ぐ目的で投与される。メトロニダゾールやペニシリン系の抗菌薬も有効。その他、けいれん発作がみられる場合は、呼吸困難を起こす可能性があるため、抗けいれん薬の投与や気道確保を行ったり人工呼吸器を使ったりする必要がある。わずかな刺激でもけいれんを起こすことがあるため、病室を暗くして静かな環境で治療を行う。

予防/治療後の注意

破傷風は誰でもかかる可能性がある病気のため、ワクチン接種して予防することが重要。正しくワクチンを受ければ、ほとんどすべての人が抗体を獲得できる。以前は3種混合ワクチン(破傷風、百日咳、ジフテリア)の接種が行われていたが、2012年11月からは、4種混合ワクチン(3種混合ワクチンにポリオを加えたもの)が導入された。生後3ヵ月以降から4週間隔で3回受ける必要がある。またその後、11歳の時には2種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風)を1回接種する。ワクチンの効果は10年程度と限定的なため、ケガをしやすい職業や海外渡航の際には継続してワクチンを接種する。ケガをした際はよく洗い流し、特に中高年でその後気になる症状があれば早めに医療機関を受診することも重要。

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こちらの記事の監修医師

荏原病院

感染症内科 中村(内山)ふくみ先生

1996年、宮崎医科大学卒業。宮崎医科大学寄生虫学教室、墨東病院感染症科、奈良県立医科大学病原体・感染防御医学/感染症センターにて基礎医学・臨床の両面から感染症に携わる。2016年4月より現職。日本内科学会総合内科専門医、日本感染症学会感染症専門医の資格を持つ。