
こちらの記事の監修医師
横浜新都市脳神経外科
院長 森本 将史 先生
のうのうよう脳膿瘍
最終更新日:2021/12/27
概要
脳膿瘍(のうのうよう)とは、脳内で細菌や真菌などから感染が起こり、炎症となって膿がたまった状態。脳以外の頭部や、他の臓器で起きた感染症から血液を通して脳まで菌が運ばれるケースや、頭部に受けた外傷から直接的に入り込んだ菌が脳の中で繁殖するケースなどがある。また、病原菌による感染以外に、原因が不明の膿瘍ができる場合もみられる。脳内のどこの部位に発生するかによって、頭痛、吐き気、けいれん、体の半身を動かしづらくなるなど、現れる症状はさまざま。膿瘍から膿が髄液へ流れ込むと、急性髄膜炎を引き起こす原因ともなる。
原因
通常、脳の内部は無菌状態に保たれている。ここに病原菌が侵入して感染が起きることで、脳の組織が傷つき、炎症が発生。その結果として、いろいろな症状が引き起こされる。感染の原因となる疾患には、さまざまなものがある。例えば耳鼻咽喉部であれば、中耳炎、副鼻腔炎、扁桃炎、虫歯など。他に、頭部以外の臓器に起きる疾患で、気管支炎、肺膿瘍、心臓弁膜症など。頭部に直接的に受けたケガや、開頭手術による外傷なども原因となりうる。脳膿瘍を引き起こす原因菌としては、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、腸内細菌など多くの細菌が挙げられる。また、真菌や、トキソプラズマ症の原因となるトキソプラズマ原虫などによって起こるケースもある。他には、結核菌も症状を起こすことが知られている。脳膿瘍自体はあまり見られる病気ではなく、原因が不明のこともある。
症状
脳内のどこに膿瘍ができるか、どれくらいの大きさかといったことで症状は異なる。また、膿瘍周辺の炎症や腫れの程度も症状を左右する。一般的には、頭蓋内圧亢進症状(ずがいないあつこうしんしょうじょう)として頭痛、吐き気、眠気、意識障害などの症状が現れやすい。また、けいれんが起きる場合もある。初期には微熱が出ることも。膿瘍が大きくなって時間が経過するとともに、発生した場所によってさらに他の症状も見られるのが特徴。例えば、大脳に膿瘍がある場合は、半身に出るまひ、言語障害、視野障害など。前頭葉であれば、記憶障害などの症状が現れることもある。
検査・診断
膿瘍の大きさや位置などを調べるための診断方法として、CTによる検査を行うのが一般的。ここで、膿瘍周辺に特有のリング状の影が見られれば、脳膿瘍と診断される。また、脳腫瘍や脳梗塞と見分けるために、MRI検査を行うこともある。この他、状況によっては、血液検査、髄液検査、けいれん発作に対する脳波検査などが必要となる場合もある。脳膿瘍と確定診断された後、治療方針を立てるために原因菌を特定する必要がある場合は、膿瘍から膿を採取して細菌検査を行うこともある。その際に、膿を採取する針を正しく誘導するために、CTやMRIを用いるケースもある。
治療
投薬による化学療法と手術による外科的治療に大別される。まずは化学療法を行って、膿瘍を小さくした後、手術で膿瘍自体を取り除く。ただし、膿瘍が大きいなど、緊急度が高いと判断される場合は、早期に手術を行う場合もある。通常の化学療法では、細菌に対する抗生物質の投与、頭蓋内圧を降下させるための浸透圧利尿剤の投与、脳のむくみを抑えるための副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)の投与が行われる。抗菌薬は、適応のあるものが大量に投与される。外科的治療は、膿瘍を摘出したり、膿を吸引して外に排出する目的で行う。手術については、開頭手術よりも安全性が高い、穿刺(せんし)吸引やドレナージと呼ばれる手法を用いることが一般的。これは、膿を採取して細菌検査を行うときと同様で、CTやMRIを用いながら膿に注射針を刺して、吸引や排出する方法だ。
予防/治療後の注意
耳鼻科や歯科の疾患を治療した後で、風邪が治まったのに頭痛がなかなか消えない、熱が下がりきらないといった症状がある場合は注意が必要となる。脳膿瘍は治療を行わないと命を落とす病気であり、適切な治療を行うことが重要。また、治療の開始時期が遅くなると、治療を行った後に後遺症が残ることがある。膿瘍の再発やてんかん発作、また膿瘍が起きた場所によっては半身のまひや言語障害などがみられ、リハビリテーションが必要となる場合もある。

こちらの記事の監修医師
院長 森本 将史 先生
1993年京都大学医学部卒業。2002年同大学院医学研究科修了。同医学部附属病院、国立循環器病研究センター、Center for Transgene Technology and Gene Therapyでの勤務を経て、2010年に横浜新都市脳神経外科病院の脳神経外科部長に就任。2011年から現職。専門分野は脳動脈瘤、バイパスなどの血行再建手術、血管内手術などの脳血管障害、脳腫瘍。
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