
こちらの記事の監修医師
ふくろうの森耳鼻咽喉科
院長 中村 健大 先生
せいたいぽりーぷ声帯ポリープ
最終更新日:2021/12/27
概要
喉頭(いわゆる「のどぼとけ」と呼ばれる部分)にある声帯に、膨らみ(ポリープ)ができる病気。声帯は口を縦にしたような形をした発声に関わる器官で、左右2本のひだを動かして中を通る空気を振動させることで声を出している。そのためポリープができると、ひだを閉じたり厚みを変えたり、空気を振動させたりする機能がうまく働かなくなり、発声に影響を及ぼす。ほとんどの場合、ポリープは左右のひだのどちらか一方にできるが、長期間にわたって治療を受けずに放置したり、ポリープが大きかったりすると、反対側にもできることがある。
原因
根本的な原因は、喉を酷使することによって起こる声帯の炎症。無理な発声をしたり、声を出し過ぎたり、風邪をひいたりして喉に炎症が生じた状態で無理に声を出し続けると、声帯の粘膜に充血が起こる。その状態で、なお声帯を酷使すると粘膜の血管が破れて内出血を起こし、血腫に。そこからさらに悪化すると、ポリープになるといわれている。そのため、声がかれる、発声しにくいといった自覚症状を感じたら放置せず、できるだけ早めに医師の診察を受けることが大切。なりやすい人としては、歌手や教師、ナレーター、カラオケやスポーツ観戦が趣味の人など日常的に大きな声を出す機会が多い人が挙げられ、発声の仕方が良くないと発症のリスクはさらに高くなる。また、喫煙やたくさん酒を飲む習慣、喉の乾燥も声帯の炎症につながる原因になるといわれている。
症状
声帯の炎症がそれほどひどくない初期の段階においては、喉の奥のほうに異物が詰まっているような、イガイガとした違和感を覚えることが多い。進行して炎症が悪化すると、声がかれる、かすれるなどの症状が現れ、声の質は息が漏れているような感じで若干低音になる。そのほか、声を出すときに普段よりも疲れを感じたり、話している途中で声が続かなくなったり、唾液を飲み込む際に痛みを感じたりといった症状も見られ、時に血の混じったたんが出ることもある。
検査・診断
問診で声を聞き、声のかれや喉の違和感など、声帯ポリープに特徴的な症状があるかどうかを確認する。加えて、喉頭ファイバースコピー、喉頭ストロボスコピーという検査により、声帯の状態を詳しく調べる。喉頭ファイバースコピー検査は、細いファイバースコープを鼻から挿入し、声帯の動きの異常や嚥下の状態、がんを疑う所見がないかどうかなどを調べる検査。喉頭ストロボスコピー検査は、高速に点滅する光を発する装置と内視鏡を口から入れ、声帯が振動する様子をスローモーションで観察する検査。通常の発声のほか、高音、低音などさまざまな条件で観察することで、声帯のひだが左右対称かどうかや、振動が規則的かどうかをチェックする。また必要に応じ、がんとの鑑別を行うためにポリープの一部を採取して、顕微鏡で詳しく調べる生検を行うこともある。
治療
治療の方法には、声帯の炎症を抑えて治るのを待つ保存療法と、外科的にポリープを取り除く手術療法がある。軽症であれば、極力声を出さないようにする、飲酒を控える、禁煙するなどを意識して喉への刺激を避けることで、自然に治ることがほとんどといわれる。炎症が強い場合も、声帯を休めた上で消炎酵素剤、消炎鎮痛剤、ステロイド、漢方薬などを吸入、もしくは内服することで快方に向かうことが多い。薬による保存療法で良くならない場合は、ラリンゴマイクロサージェリーという顕微鏡を使った手術を全身麻酔により行い、ポリープを切除する。また、声の出し過ぎなど声帯を酷使することが原因である場合が多いため、声帯に負担をかけない発声方法を身につけることも重要。そのため、言語聴覚士による声帯を痛めない話し方や歌い方のレクチャーが行われることもある。
予防/治療後の注意
普段から声の出し方に気をつけ、不必要に大声を出す、喉に余計な力を入れて話す、長時間にわたって歌い続けるなど、声帯に負担がかかる発声の仕方をしないことが大切。そして、声が出しにくいときは既に声帯に炎症が起こっているため、悪化してポリープにならないよう、無理に声を出さずに安静にすることが予防につながる。喉への刺激を減らすという意味では、過度な飲酒や喫煙を控えることも予防に効果的といわれる。また乾燥が声帯の粘膜に良くないという指摘もあり、講義などで長時間にわたって話し続ける場合には途中でこまめに水分を取ったり、部屋の加湿をしたりして、喉の乾燥を防ぐことが重要。

こちらの記事の監修医師
ふくろうの森耳鼻咽喉科
院長 中村 健大 先生
2006年杏林大学卒業。同大学医学部付属病院耳鼻咽喉科や佼成病院を経て、2020年に開業。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医。専門分野は耳鼻咽喉科一般。
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