こちらの記事の監修医師
ふくろうの森耳鼻咽喉科
院長 中村 健大 先生
じょういんとうがん上咽頭がん
最終更新日:2022/01/06
概要
咽頭とは、鼻の奥から食道までの約13㎝の管。部位ごとに「上咽頭・中咽頭・下咽頭」と分類され、上咽頭にできる悪性腫瘍(がん)のことを「上咽頭がん」という。日本や北米では珍しく、中国南部や台湾、東南アジアでたくさん発生している病気。これらの地域で親しまれている塩漬けの魚や刺激性の高い飲食物(辛いものなど)が上咽頭がんのリスクを高めるといわれているが、詳しい原因などはわかっていない。初期症状としては、鼻づまりや鼻血、耳の閉塞感、耳鳴り、難聴などが出やすく、首にしこりが現れることも。また、ほかの咽頭がんと比べると、初期の段階であっても首のリンパ節などに転移しやすいのが特徴。
原因
特定の地域での発症が多いことから、中国人やアジア系人種である場合はリスクが高まる。塩漬けの魚を摂取する習慣があったり、刺激性の高い飲食物を多く食べたりした場合に発症する恐れがあるなど、食生活との関連性が疑われているため、心当たりのある人は注意が必要。また、伝染性単核球症などを引き起こすEBウイルス(エプスタイン・バーウイルス)との関連もわかってきているが、まだ詳しい原因などは明らかになっていない。そのほか、飲酒や喫煙もリスクを高めるといわれている。
症状
ほかの咽頭がんと比べると転移しやすいがんであることから、自覚症状がないまま、初期の段階から首のリンパ節への転移(首のしこり)が見つかるケースも少なくない。症状としては、鼻血(鼻をかむと血が混ざる)や鼻づまり、嗅覚の異常などが出てくる。また、耳の閉塞感や耳鳴り、難聴など、耳の症状が現れてくることも。がんが進行すると、頭蓋内に浸潤し、脳神経を圧迫してしまうため、ものが二重に見える複視や視力の低下のほか、三叉神経痛(顔の触覚や口腔・鼻腔の感覚を司る三叉神経が障害されて、顔に強い痛みが出る病気)が症状として出てくることもある。
検査・診断
問診後、鼻腔鏡やファイバースコープなど専用の検査器具を用いて、耳や鼻の中の状態や腫瘍の有無などをチェック。上咽頭がんは初期段階から転移していることも少なくないため、首を触って頸部リンパ節に腫れ(しこり)がないかを確認したり、超音波(エコー)検査を用いて詳細を調べたりしていく。さらに、上咽頭がんが疑われる場合、腫瘍の一部を切除して「がん細胞が含まれているか」を顕微鏡で調べる病理検査を実施。悪性腫瘍(がん)だと判明したら、さらに頭や上咽頭、頭蓋骨などのCT検査やMRI検査などを行い、がんの進行度や転移の有無を確認していく。そのほか、必要に応じて、血液検査やPETスキャン(陽電子放射断層撮影)なども行う。
治療
上咽頭は手術が困難な部位であるため、腫瘍を切除することは難しい。そのため、基本的には放射線治療と抗がん剤治療がメインとなる。がんの進行度や大きさ、ほかの臓器への転移の有無、全身の状態などにより、人によって治療方法は異なる。一般的に、腫瘍の放射線感受性が良いため抗がん剤治療を併用する。しかし、放射線が唾液を分泌する組織の機能も低下させてしまうため、鼻や喉の粘膜が炎症を起こしたり、口や喉が乾燥したりする。なお、重症の場合は、抗がん剤治療をメインに行うことになる。場合によっては、腫瘍を取り除く手術を行うこともある。
予防/治療後の注意
予防には、喫煙や過度の飲酒、刺激性のある飲食物をなるべく控えることが効果的。EBウイルスとの関連性も疑われているため、手洗いやうがいなどの感染予防も心がけること。また、がんは再発しやすく、さらに咽頭がん(上咽頭がん・中咽頭がん・下咽頭がん)にかかると、別の咽頭がんになりやすいとされているため、治療後も定期的に診察・検査を受けていくこと。
こちらの記事の監修医師
ふくろうの森耳鼻咽喉科
院長 中村 健大 先生
2006年杏林大学卒業。同大学医学部付属病院耳鼻咽喉科や佼成病院を経て、2020年に開業。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医。専門分野は耳鼻咽喉科一般。
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