
こちらの記事の監修医師
ふくろうの森耳鼻咽喉科
院長 中村 健大 先生
ちゅういんとうがん中咽頭がん
最終更新日:2024/02/19
概要
咽頭は、鼻の奥から食道までの食物や空気が通る部位を指しており、口を大きく開いたとき、奥に見える口蓋垂(いわゆるのどちんこ)辺りから奥の部分を中咽頭という。ここにがんができる病気が中咽頭がん。中咽頭のうち、目に見える部分にできたがんであれば早期に発見されることもあるが、舌の根元である舌根にできたがんは視認できないため発見しにくい。原因ははっきりとはわかっていないが、喫煙や過度の飲酒(特に度数の高い酒)がリスク要因となるといわれている。パピローマウィルスの関与も指摘されている。男性に多い。咽頭の周りには多くのリンパ節があり、頸部のリンパ節へ移転しやすいという特徴がある。
原因
中咽頭がんの発生は、飲酒と喫煙が大きく関わっている。長期の飲酒歴や喫煙歴がある人は注意する必要がある。咽頭は、空気の通り道ということもあり、喫煙の影響をじかに受けやすい。さらに、食物の通り道でもある咽頭は、アルコールの悪影響もダイレクトに受ける。また、ヒトパピローマウイルス(HPV)が中咽頭がんの発生危険性を高めるということがわかっている。特に中咽頭がんでは、がんの発生がウイルスの影響を受けることも原因のひとつとして挙げられている。咽頭部は、身体全体から見れば、がんの発生頻度が比較的少ない場所とされていて、さらに中咽頭がんは咽頭部のがんの中でも発生率は低い。さらに、男性の中咽頭がん発症率が女性よりもかなり高くなっていることからも、やはり、喫煙と飲酒が中咽頭がんの発生の原因である場合が極めて多い。
症状
初期段階では、食べ物を飲み込んだときに喉に違和感を覚える、喉がしみるといった症状が見られるが、人によっては自覚症状がないこともある。がんが進行すると、しみる感じが痛みへ変わり、さらに食べ物が飲み込みにくい、言葉がうまく発音できなくなる、口を開けにくくなる、喉から出血する、呼吸困難に陥るなどの症状が現れる。声が変化するという症状が見受けられることもある。また首のリンパ節へ転移すると、喉が赤く腫れ上がる。初期の段階では自覚できない場合も多いが、少しでも違和感を覚えたら、早めに耳鼻咽喉科を受診し、早期発見につなげてほしい。
検査・診断
口の中をのぞいて中咽頭の様子を確認する。肉眼で確認できない部位は、視・触診、ファイバースコープなどの専用の器具を使って詳細に調べる。がんが疑われるような異常組織がある場合、実際に手で触ってその硬さや大きさなどを調べたり、組織の一部を切除してがん細胞があるかどうかを顕微鏡で調べる病理検査を行ったりする。がんであると診断された場合、その広がりを調べるためにCTやMRIにより検査を行う。首に腫れが確認される場合、リンパ節への移転の可能性が疑われるため、超音波検査を行い、頸部リンパ節への転移の有無を確認する。
治療
中咽頭がんの治療としては、手術、放射線治療、抗がん剤治療の3種類の治療法を組み合わせた集学的治療が行われることが一般的である。初期段階では放射線治療によるがんの進行抑制が基本で、病状が進行した場合に手術が検討される。早期がんの場合は、部分切除や放射線治療が中心となる。しかし病状がさらに早期段階であれば、切除する組織も少なく済み、誤嚥を起こしやすくなるといった術後の副作用の可能性も小さくなる。がんが広範囲に進行している場合、組織の大部分を摘出してしまうと、中咽頭が大きな役割を果たしている咀嚼や嚥下の機能、発声機能が障害される可能性がある。そのため、この場合は切除した組織を再建する手術も行う。転移が確認されたときや手術が実施できないケースなど、さらにがんが進行している場合は、抗がん剤治療が主に行われる。
予防/治療後の注意
中咽頭がんの発生は、喫煙や過度な飲酒が主な原因と考えられているため、普段から節制に努めることが予防につながる。ほかにも、バランスの良い食事、身体活動、適正な体形、感染予防など、日ごろの生活習慣を整えておくことも重要である。また治療後は再発や転移の可能性があるため、定期的に通院してその有無を確認するなど、経過を観察する必要がある。治療後も喫煙や飲酒はできるだけ控え、生活習慣を荒らさないことも大切なことだ。

こちらの記事の監修医師
ふくろうの森耳鼻咽喉科
院長 中村 健大 先生
2006年杏林大学卒業。同大学医学部付属病院耳鼻咽喉科や佼成病院を経て、2020年に開業。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医。専門分野は耳鼻咽喉科一般。
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