北田 博一 院長の独自取材記事
北田医院
(大阪市鶴見区/放出駅)
最終更新日:2021/10/12

放出駅から内環状線を北に10分ほど歩いた場所にある「北田医院」は小児科、循環器内科、脳神経内科など幅広い診療に対応する地域密着型の医院だ。現院長の北田博一先生は3代目にあたるが、「地域の人たちに必要な医療を提供する」スタンスは67年の長い歴史があっても開業当初から変わらないのだそう。同院は在宅医療にも対応しており、24時間往診できるように体制を整えているほか、高齢者のリハビリテーションにも力を入れている。熱意を持って地域医療に取り組む北田院長に、これまでの経歴や医療への考え方、今後の展望までじっくりと話を聞いた。
(取材日2021年8月5日)
代々受け継がれる「かかりつけ医はなんでも診る」精神
医院のこれまでの歴史をお聞かせください。

当院を開業したのは私の祖母なのです。当時は女性の医師が珍しい時代でしたが、放出西に医院を開いたところから始まり、それから67年ほどの歴史があります。祖母の時代は夜中に喘息発作を起こした患者さんがいれば、玄関のドアをドンドンと叩かれ来院されるという本当に町のお医者さんのイメージで、ひっきりなしに患者さんが来ていたと聞いています。その後、2代目として父が継ぎ、こちらに移転すると同時に法人化し、介護老人保健施設や在宅部門をつくるなど事業を拡大しました。父が体調を崩し診療が困難になったこともあり、3代目として30歳で院長になりました。一般的に院長になるには少し早かったかもしれませんが、地域の方により良い医療を提供したいという強い思いは父と同様でした。
幅広い診療を提供されていますが、これは初代からでしょうか?
初代は「かかりつけの医者はなんでも診るものだ」という考え方でしたので、昔から診療の幅は広かったですね。さらに私は循環器内科、副院長である妹は脳神経内科を専門としているので、自分たちの専門も打ち出しました。また、リハビリテーションも積極的に行っています。この地域はご高齢の方も多く住んでいらっしゃいますので、患者さんの生活を守ることはもちろん、これ以上悪くならないようにするにはどうすればよいか、もともとあった生活に戻してあげるにはどうすればよいかを考えたときにリハビリが重要だと考えました。当院には理学療法士が多数在籍しており、患者さんの訴えをよく聞いてオーダーメイドのリハビリを提供できるようにしています。ただ、どれだけ規模を大きくしてもかかりつけ医である意識は忘れないようにしています。初代からの信念を貫き、小さい子どもから高齢者まで診療できる体制は今後も維持していくつもりですよ。
先代の意思を継ぎつつ、新しいことにも積極的にチャレンジされているのですね。

父は地域医療についてもっと考えたかったのだと思います。介護老人保健施設をつくったのも、ご高齢の方の憩いの場をつくりたいという気持ちからでした。地域の人が住みなれた場所で最期を迎えられるようにと、つくった場所なんですよ。私もまったく同じ思いで、地域のご高齢の方が安心して暮らせるような医療や施設を提供したいと考えています。祖母は「患者さんの健康を願うならそんなことは当たり前」と思っていたでしょうね。私が当院で手を加えたことは、院内のバリアフリー化と、院内を明るくするために間接照明などを入れて温かい光が入るようにしたことです。大きな病院のような雰囲気がありつつも、居心地の良い空間づくりをめざしました。
バイタリティーを発揮し、時代に対応した体制を構築
医師をめざすようになったのは、やはりご家族の影響が大きいのでしょうか?

はい。やはり父の背中を見て、というところが大きいですね。夜中に電話がかかってきて急いで診療に出ていく姿を見て、大変だなと思うこともありましたが、どこかでそんな父のことを尊敬していたのだと思います。人を治す職業へのやりがいや魅力を感じ、自分から家族に医師になりたいと伝えました。祖母は素直に喜んでくれ、父は「お前の好きなようにしろ」と言っていましたが、内心は喜んでいたのではないかと思います。患者さんから「幼い時、おばあさんにはお世話になりました」や「お父さんに相談を聞いてもらったことがあります」と聞くと私もうれしい気持ちになりますよ。
新型コロナウイルス感染症流行を受け、新たな体制を構築したと伺いました。
発熱の外来専用の診察室、待合室を設置し、新型コロナウイルス感染が疑われる患者さんに対しても積極的に診察できるような体制を整えました。発熱や風邪症状などがある方は事前に電話相談を経て予約の上、別の入り口から入室してもらうことで一般診療の方と動線を完全に分離しました。診察室もしっかり動線分離とゾーニングをしていますし、陰圧装置を設置するなどの対策をしています。会計の場所も別に設けています。また、PCR法とほぼ同等の精度で迅速に診断が可能な、核酸増幅検査機器を3台導入し、数分で結果を把握し敏速な対応へつなげています。スタッフ側はフェイスシールドやマスク、手袋を着用するほか、発熱患者専用の外来であれば処置をする際はガウンを着るなど、患者さんが安心して来院できるよう工夫しています。新たなシステム構築は大変でしたが、私は変化があるほうがやりがいを感じるタイプなので充実感をもって仕事をしています。
オンライン診療も取り入れていくのですか?

オンライン診療に対しては十分の配慮が必要だと感じています。若い方にとっては良いかもしれませんが、高齢の方は慣れておらずオンラインに対して拒否反応がある方も多いでしょう。当院は後期高齢者の患者さんが多いので、オンライン診療を取り入れるとパソコンやスマートフォンを使える患者さんのほうが有利になってしまいます。睡眠時無呼吸症候群や生活習慣病の治療を受けている方の中には、多忙で診察時間内の来院が難しい方もいるということもわかります。今後は疾患や時間を見極めた上でオンライン診療にも取り組んでいかなければと思います。新しいことも、患者さんのプラスになれば取り入れていきたいですね。
院内だけでなく地域全体の連携が課題
医院の特徴である「トータルサポート」についてお聞かせください。

当院では小さいお子さんからご高齢の方、要介護の方まで対応したいという気持ちがあります。ただ、どこかの診療科にだけ特化するのでは地域医療ではないと考えています。私の専門は循環器ですが、小さいお子さんも診られるようにならなければと勉強してきました。また、がんの緩和ケアの対応ができるようにさまざまな勉強会に参加し、最新の知見を得るようにしています。時には歯科や整形外科など他科に関する相談を受けることもありますが、いったん話をお聞きし、私たちでどこまで対応できるのかを考えてから必要な機関につなげるのも、かかりつけ医の仕事だと思っています。かかりつけ医として、診療科にとらわれずに幅広く診ていきたいですね。
在宅医療の「24時間往診体制」について聞かせてください。
定期的に患者さんの家にお伺いする訪問診療のほか、普段は通院しているけど体調が悪くて来院できない、という方への往診にも対応しています。夜中の発熱や体調不良など緊急で対応しなければならない時は私の携帯番号をお伝えし、必要に応じて連絡をもらうようにしています。難病などを抱えている患者さんは風邪では大きな病院に行けないこともあるので、私たちのような地域の医院が力になれればと思っています。また、看取りの患者さんの場合、不安を抱えるご家族に対して診察とは別の時間を設け、どういうふうに最期を迎えるか、当院でできる支援、緊急時はどうしたらいいかなど相談する時間をつくるようにしています。
今後の展望についてお聞かせください。

在宅医療について、いくつかの医療機関と連携を取ってはいるものの、現実的には自分たちの患者さんは自分たちで診るという流れになってしまっています。しかし、今後在宅医療を増やすためにはしっかり連携を取っていかなければなりません。医師同士だけでなく、看護師やケアマネジャーなど、医療介護に携わるさまざまな職種の人がすぐに把握できるようなシステムを導入するのが理想的だと考えています。診療内容だけでなく、自宅で看取ることを考えたときにご家族の考え方に関する情報を残し、共有することも重要です。今は院内で看護師や介護士と情報共有を行うシステムを活用しているのですが、今後より良い医療サービスを提供していくために、医師会や行政とも調整しながら包括的な病診連携のシステムを構築していくことが目標です。
自由診療費用の目安
自由診療とは健康診断:3000円~、インフルエンザワクチン:13歳以上65歳未満…3500円、13歳未満…1回2500円、65歳以上…自己負担額1500円(大阪市在住であれば公費助成を受けられる)