眼底疾患を精密に診断
OCTによる検査とは
玉井眼科
(名古屋市西区/庄内緑地公園駅)
最終更新日:2021/10/12


- 保険診療
近年、眼科のクリニックにもOCT(optical coherence tomography:光干渉断層計)の機器が普及し、遠くの大病院へ行かなくとも身近な開業医で正確な診断を受けることが可能になった。それまで通常の診察では見えなかった網膜の断面をモニターで見ることができるため、医師にとっては病変を起こしている部位のより確かな位置を把握でき、患者にとっては自分の目の中の状態を画像で見られるため病状を理解しやすいなど双方にメリットが生まれている。OCTをほぼ毎日使用しているという「玉井眼科」の玉井直樹院長に、具体的にどんな病気が見つかるのか、そのメリットなどについて話を聞いた。
(取材日2016年10月21日)
目次
網膜の断層撮影で、40代以降に多い緑内障の早期発見も可能。見やすい画像と数値による説明で患者も納得
- Qまず、OCTについて特徴などを教えてください。
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A
▲わかりやすい説明を心がける玉井院長
眼底を断層的に見ることができる点が特徴で、病変の位置や状態がより正確に早く把握できるようになりました。網膜と、その外側の脈絡膜の一部までしっかり見ることができます。以前ですと、そこまでは切って出して顕微鏡で見るしかなく、つまり生体ではできないことだったんです。断層を見るという点ではCTと同じ理屈ですが、CTはエックス線撮影なので何回も行うと被ばくの心配があります。その点、OCTは普通の光を使うので問題ありません。目に光が入ってきて反射するところの密度の差をコンピューターで計算しています。検査時間も5~10分と短く、画像を詳しく見たいときは拡大できるので、患者さんへの説明にも役立っています。
- QOCTでわかる疾患にはどんなものがありますか?
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A
▲一人でも多く緑内障の早期検査・治療をしていきたい
網膜の中心部にある黄斑部に変性を起こす加齢黄斑変性や中心性漿液(しょうえき)性脈絡網膜症などですね。ものがゆがんで見えるなどの症状があります。糖尿病網膜症も腫れている部位がしっかりわかるようになりました。また現在どういう状態で、以前よりひどくなっているのか軽くなっているのか、経過観察が容易にできるようになりました。「すごいな、よく見えるな」と感激される患者さんもいらっしゃいます。打撲などの外傷も浮腫を起こして腫れているところも映るのでわかりやすくなりました。
- Q非常に細かいところまで見ることができるのですね。
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A
▲OCTは眼底の断面を診ることができる
眼科の医療にとって、革新的な機械です。網膜は10層に分かれており、一番深い部分を網膜色素上皮網膜といいますが、そこがめくれているのが色素上皮剥離、その上でめくれているのが網膜剥離、網膜の真ん中でめくれているのが網膜分離症といいます。OCTの導入で、どこの部分がどこまで剥離しているかがわかるようになりました。網膜は薄いのですが、断層画像で見ると厚みがよく見えます。厚みはマイクロメーターという単位で表します。患者さんの年齢を打ち込むと、正常な同年齢の人の厚みの平均値が表示され比較ができるので、数字の上でも明確な判断が可能になりました。
- Q40代以降に多い緑内障の早期発見も可能だとか。
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A
▲眼底疾患の一つ、緑内障治療の目薬
緑内障は40歳を超えると、20人に1人という高い罹患率になっています。OCTで網膜全層を見て、全体の厚みが普通でも、視神経線維層だけが薄くなっていると緑内障だとわかります。緑内障は進行して視野欠損という症状が出てくるまで気づかないことも多いのですが、OCTでは、本人に自覚症状がなくても、断層画像で微妙な変化をとらえることができ、さらに数値でも出るので初期の段階で発見することができます。緑内障の早期発見、早期治療のためには特に役に立っているといえますね。
- Q患者にとってもメリットは大きいということでしょうか。
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A
▲患者もわかりやすく説明が聞けるので安心だ
目の中のことなので、状態が良くなっているのかわからず不安に思われても、OCTで画像や数値をお示しすることによって、患者さんは自分の目で見て理解することができます。「ここまで良くなったから、もうしばらく頑張ろう」と前向きな気持ちになっていただけるようです。良い機器だからこそ、その検査結果をどう読んで、どう判断するかが非常に大事です。OCTだけに診断を頼っているのではなく、いろいろな問診、診察をする中で、あくまで診断の一助として使用しています。機器がどれだけ進歩しても総合的に診て判断する医師の力量が重要なのは言うまでもありません。