乳頭がくぼんでいる陥没乳頭
授乳が困難となる可能性も
ティーズクリニック
(墨田区/錦糸町駅)
最終更新日:2024/09/13
- 保険診療
乳頭が突出せず、乳輪より奥へ引き込まれている状態の「陥没乳頭」。日常生活に支障はないものの、出産後に赤ちゃんが乳頭をくわえられず、授乳が難しくなる可能性もあるという。デリケートな部位なだけに、一人で悩んでいる人もいるのではないだろうか。「陥没乳頭の発生率は女性の10%程度という報告があり、珍しい症状ではありません」と話すのは、錦糸町にある「ティーズクリニック」の田牧聡志院長。外傷や変形などの治療を専門とする形成外科領域で、長年経験を積んできた日本形成外科学会形成外科専門医である。他院での術後再発例にも対応している田牧院長に、陥没乳頭の症状や治療方法について、話を聞いた。
(取材日2024年7月10日)
目次
授乳の妨げになる可能性もある陥没乳頭。条件を満たせば保険適用での手術治療も可能
- Q陥没乳頭とはどのような症状なのでしょうか。
-
A
文字どおり、乳頭が乳房の内側へとくぼんでいる状態のことを指します。形状は、乳頭はある程度隆起しているが先端がくぼんでいる、乳頭が乳輪の中に引き込まれていてまったく出ていないなど、さまざまです。原因ははっきりしていませんが、母乳を作る乳腺という組織と、作られた母乳を乳頭まで運ぶ乳管の発達がアンバランスなために、乳管が通常よりも短くなり乳頭が引き込まれることで起こるといわれています。発生率は女性の10%程度という報告があり、比較的よく見られる症状だと考えています。陥没乳頭には、指などによる簡単な刺激で立ち上がる「仮性」と、搾乳器などの強い刺激を与えても立ち上がらない「真性」の2つがあります。
- Q受診のきっかけや放置することのデメリットを教えてください。
-
A
小学5年頃から中学生頃の第二次性徴によって乳房が発達する時期に、症状を自覚することが多いようです。成長とともに自然に乳頭が出てくることもありますが、思春期以降も変化がない方が、結婚や妊娠・出産を意識し始めた20~30代になって「このままで授乳できるのか」と不安を抱えて受診されるケースがほとんどです。陥没乳頭には見た目の問題もありますが、最大の問題は赤ちゃんが乳頭をくわえられず、授乳ができなくなることだと思います。また、くぼんだ部位に垢などがたまり、乳腺炎を起こしやすいともいわれていますが、患者さん自身が感じるデメリットはさまざま考えられると思います。
- Qどのような治療法があるのでしょうか。
-
A
指などの刺激で乳頭が出てくる場合は、乳頭補正器などの装具を使って乳頭を吸引することをめざす保存的治療が行われます。保存的治療によって症状の改善が見込めることもありますし、出産後の授乳で赤ちゃんに吸ってもらっているうちに、乳頭が露出してくることもあります。保存的治療を行っても乳頭が出ない場合や、真性の陥没乳頭の場合は手術が行われます。また、今後授乳の可能性があり、授乳が困難と診断された場合の手術治療には健康保険が適用されます。おおむね18歳以降から授乳の可能性のある43歳頃までが手術の対象になると考えています。
- Q手術について教えてください。
-
A
陥没乳頭にはさまざまな手術方法がありますが標準化されたものはなく、各医療機関の方針に基づいて選択されます。当院では、陥没した乳頭を縦割りに切開して、短くなった乳管を皮膚から引き離すことで乳頭の陥没の修正を図る方法を行っています。私自身の執刀経験や国内外の論文などから、手術で引き上げた乳頭の再陥没が比較的少ない方法だと考えているからです。手術は局所麻酔で、日帰りで実施している施設がほとんどだと思います。また、手術には再発や副作用、合併症のリスクが伴います。手術のデメリットや術後のフォローについてもきちんと説明してくれる医療機関で手術を受けることをお勧めします。
- Q貴院の手術の特徴を教えてください。
-
A
術後の再発を極力抑えるために、術後の管理に重点を置いており、当院では術後1週間はフィルムを用いて患部を保護し、その後、スポンジパッドや固定具を用いて4~6ヵ月程度、乳頭を保護していただくようお願いしています。長期間、固定具を装着し続けるのは煩わしいことだと思いますが、術後の管理の重要性を理解していただければと思います。術後の通院頻度は患者さんごとに異なりますが、1~6ヵ月後には乳頭の状態を、9ヵ月後には再発がないかどうかをそれぞれ確認するなど、最後まで責任を持って治療します。他院での再発例にも対応していますので、どうぞご相談ください。