長引く鼻水や鼻詰まりは要注意
放置することで起き得るリスクとは
北澤耳鼻咽喉科医院
(江戸川区/小岩駅)
最終更新日:2025/03/14


- 保険診療
鼻水・鼻詰まりは老若男女誰にでも日常的に起き得る症状だ。アレルギー性鼻炎によるものであれば治療を受けている人もいるだろうが、そうでない場合、「鼻水・鼻詰まりだけでクリニックは受診しにくい」と考える人は多いはずだ。だが、「単なる鼻水・鼻詰まりと思っても、何かの病気によるものかもしれません。放置せずに医療機関を受診してほしいですね」と話すのは「北澤耳鼻咽喉科医院」の北澤吉悠院長。実際、鼻水や鼻詰まりの原因が副鼻腔炎だったというケースをこれまで数多く診てきたという。病名としてはなじみのある副鼻腔炎だが、実際にはどのような病気なのか。その症状や、鼻水・鼻詰まりを放置した場合のリスクについて、北澤院長に詳しく解説してもらった。
(取材日2025年2月28日)
目次
多くの人を悩ませる副鼻腔炎についてあらためて知る
- Q鼻水や鼻詰まりが長く続くのは病気のサインですか?
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A
▲耳鼻咽喉科の基本的な治療の一つであるネブライザー治療
鼻水が透明であれば、風邪の初期症状やアレルギー性鼻炎、花粉症などの可能性があります。風邪の場合は、ほかにも咳や発熱などの症状が伴っているケースが多いと思いますが、やがて鼻水はサラサラした状態から粘り気が出るようになります。長く続く鼻水が黄色や緑色でドロッとした粘り気がある場合、あるいは臭いがする場合などは、副鼻腔炎の可能性が考えられます。鼻水は日常的に喉に流れていますが、サラサラ状態のときには特に意識しないものです。それが濃くて臭いのある鼻水になると不快ですよね? こうした症状の場合、副鼻腔炎の恐れがあります。ともあれ、症状が長く続くようであれば、耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。
- Q副鼻腔炎とはどのような病気ですか?
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A
▲鼻水・鼻詰まりの症状は放置せず、耳鼻咽喉科を受診しよう
副鼻腔は鼻腔とつながった空洞です。左右に4つずつあり、副鼻腔の粘膜でウイルスや細菌をつかまえて排出したり、鼻水をつくって体内への異物の侵入を防いだり、空気の保湿・加湿を行ったりしています。副鼻腔に炎症が起き、鼻との通路がふさがることで、膿や鼻水などがたまる病気が副鼻腔炎です。俗に蓄膿症という言い方もします。症状としては、先にお話ししたような臭くて濃い黄色や緑の鼻水が出たり、頬や目の周りに重い感じがつきまとったり、痛みが生じたり、それに伴う倦怠感を覚えることもあります。そうした症状だけでなく、副鼻腔炎が長く続くと、鼻孔や副鼻腔に鼻茸と呼ばれる、ブヨブヨした鼻のポリープができることがあります。
- Q副鼻腔炎の治療法について教えてください。
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A
▲患者の状況や希望も踏まえ、適切な治療法を提案
症状が軽い場合は自然に治ることもありますが、基本は薬物療法で、抗生物質のお薬をしばらく服用いただきます。治療期間の目安は1ヵ月ぐらいの場合もありますし、3ヵ月から半年程度かかることもあります。一方、ウイルスや細菌感染ではない副鼻腔炎もあって、それが好酸球性副鼻腔炎というもの。好酸球という白血球の一種が増加して炎症を起こし、治療には鼻茸を切除する手術が伴うこともあります。そうやって鼻腔と副鼻腔の換気を良くして薬の有用性の向上を図るのですが、問題なのは、しばらくすると取り除いた鼻茸がまた新たに出てくることなんです。なぜ好酸球が増えるのか、その原因も全容もまだはっきりとはわかっていません。
- Qこちらのクリニックでは初診時から検査をするとお聞きしました。
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A
▲モニターを用いて鼻の中の状態を視覚化。理解を促すのに役立てる
はい、患者さんがお嫌でなければ基本的には必ずエックス線検査を行うようにしています。通常、副鼻腔はエックス線写真を撮ると、空洞部分が黒く写るのですが、副鼻腔炎の場合は、白く写ります。それと問診を照らし合わせて、診断します。また、肉眼で鼻茸が確認できるときや、患者さんから後鼻漏の訴えがあるようなときには、ファイバーで鼻の中から喉を撮影し、実際の鼻茸の様子や喉に流れていく濃い鼻水などを見ていただくこともあります。エックス線写真もそうですが、そうしたビジュアルを共有することで、鼻の中の状態を患者さんに認識してもらいたいという思いがあります。
- Q好酸球性副鼻腔炎や副鼻腔炎が悪化するとどうなるのですか?
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A
▲同院は鼻のエックス線検査に対応。より専門的な検査は連携先へ
好酸球性副鼻腔炎の場合は難治性なので、病気と長く付き合っていくことになります。また、一般的な蓄膿症や副鼻腔炎でも、重症化すると、目の近くにある蝶形骨洞という副鼻腔の一つに炎症がたまって、失明の原因となる視神経炎につながることがごくまれにあります。虫歯や歯周病など口腔内の炎症が原因となって鼻に悪影響を及ぼす歯性上顎洞炎ならば歯科治療がマストになりますし、カビが炎症を起こす副鼻腔真菌症はCTスキャンでなければ鑑別できませんから、東京慈恵会医科大学附属病院や東京都立墨東病院にご紹介します。鼻の不調は不快で、日常生活にも影響を及ぼします。たかが鼻水・鼻詰まりと軽視せず原因を調べることが重要なのです。