地域で連携して取り組む
訪問診療のこれから
田中医院
(練馬区/石神井公園駅)
最終更新日:2016/01/24


高齢化が進む現在、患者の中には病院に通うのが困難になる人や、自宅で最期を迎えたいという希望を持つ人も少なくない。そんな時に頼りになるのが、訪問診療をしてくれる医師の存在。「田中医院」の田中康之副院長は、高齢者が住み慣れた家や地域で安心して生活が送れるよう、地域の看護師やケアマネージャーらと連携を取りながらの訪問診療を積極的に行っている。今後ますますニーズが高まると思われる訪問診療についてお話を伺った。(取材日2013年6月20日)
目次
訪問診療の地域ネットワークを築き上げることを目標に
- Q訪問診療と往診は何が違うのですか?
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A
▲40年もの長きにわたり、患者を見守り続けている診療室
訪問診療では、患者さんが病院や診療所にいらっしゃることが困難な場合に医師が代わりに定期的にご自宅を訪れ、診療を行います。往診は急な病状の悪化などが生じた際に、ご本人やご家族から依頼があってお伺いするもので、そこが大きな違いです。訪問診療の対象になる方はご高齢の方が多く、生活習慣病から生じた病気や歩行困難な方や認知症のためひとりで出歩くのが難しい方、また癌の末期状態の方もおられます。患者さんのお住まいにはそれぞれの生活があり、皆さん様々なご事情をお持ちですから、その生活環境をお伺いすることで患者さんが「どう暮らしていけばもっと快適になれるのか」という部分にまでアプローチしていけることが、外来診療のみの場合とは異なります。
- Q実際の現場では、どんな部分に問題・課題があると感じますか?
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A
▲大学病院で培った確かな知識と技術を訪問診療にも活かして
日本は高度成長期以降、社会では効率化が優先され、家族のあり方もずいぶん変わりました。昭和40年代半ば頃まではお家でお亡くなりになる方も多かったですし、地域の見守る力も高かった。現在では核家族化・個人主義が進み、ご家族もご自身の生活に手いっぱいで余裕がなく、また何とかしてあげたいけど具体的にどうすれば良いかわからないといったことが多くなっています。そういった理由から高齢者の方が施設に入るケースは非常に多いので、私はそこが最も大きな問題だと思っています。しかしこれは一朝一夕に解決できる問題ではありませんし、医師や家族だけでなく、行政や国、みんなで考えていかなければならない、日本の大きな課題のひとつだと思います。
- Q訪問診療を受ける患者や家族側には、どのような意識が必要でしょうか。
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A
▲いつも優しい笑顔で、患者や家族に寄り添う田中副院長
ご家庭にはそれぞれのご事情がありますので、それぞれのご家庭にあわせて最適なご説明をするように心がけています。医療サービスは、ご本人・ご家族と我々サービス提供者が力を合わせて作るものだと思います。在宅医療は歴史の浅い分野です。未開発でこれから開発すべき事も多く、またすべてを我々にお任せいただきご家族は何もしないでもよいといったサービスではありません。ご家族の負担が多いのも事実です。しかし高齢者が幸せに暮らすためには、まずご家族が幸せでなければいけません。少しでも負担を減らせるように我々地域の医師や福祉サービスがありますし、これからももっとお役に立てる環境づくりを続けていきますので、一緒に頑張る、見守る仲間がいることを忘れないでください。
- Q今後考えている取り組みについて具体的に教えてください。
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A
▲志を同じくする仲間と連携を深め、地域に根ざした活動をめざす
現在拝見している患者さんは、近隣のご年配の方がほとんどです。今後もご高齢の方が訪問診療の主な対象になると考えています。現在は近隣の看護師さんや保健師さん、ヘルパーさんたちにご協力いただき、また近隣病院や都心の基幹病院と連携しながら診療にあたっています。今後、都市部の高齢化はますます進んでいきますが、皆さんにできるだけ住み慣れた土地で生活を続けていただきたいと思っています。しかしそれには医療面はもちろん、介護まで含めたトータルなサポートの仕組み作りが必須です。私ひとりでではなく、私の考えに共鳴してくれる、同じ目標や理念を持った仲間とグループを作って取り組んだ方が患者さんにも良い地域医療を提供できるのではと考え、現在ははその下準備に注力しています。将来的には「余計なおせっかい」と取られるくらいの地域ネットワークが作れたら嬉しいですね。