石川 雅 院長の独自取材記事
いしかわ内科クリニック
(横浜市旭区/二俣川駅)
最終更新日:2021/10/12
二俣川駅北口から徒歩3分。ココ第一薬局の2階にある「いしかわ内科クリニック」は2008年に石川雅院長が開業した内科、糖尿病内科を標榜するクリニック。石川院長は長年にわたり大学病院で糖尿病の研究と治療に取り組んできた糖尿病治療のプロフェッショナル。満を持して開業し、大学病院時代には難しかった患者とのコミュニケーションを大切に、一人ひとりと向き合った丁寧な診療を行っている。医師歴27年というベテランならではの落ち着いた雰囲気と穏やかな語り口が患者に大きな信頼感を抱かせる。スタッフ全員が糖尿病の療養指導のエキスパートである「糖尿病療養指導士」の資格を有し、互いに連携し合って患者を手厚くサポートしている。食事療法の指導にも力を入れ、定期的に開催している「糖尿病料理教室」が好評だ。「病気に向き合うための動機付けとしてクリニックを活用してほしい」という石川院長に、糖尿病の話題を中心に開業に至った経緯や医師を志したきっかけなどをじっくりと語っていただいた。
(取材日2011年1月20日)
目次
大学病院で培った糖尿病専門医としての経験を地域で生かしていく
始めに先生が医師を志したきっかけを教えてください。
母方の祖父が内科医で個人病院の院長をしていたので、子どもの頃から医師という職業が大変やりがいのある仕事だと感じていました。大学は聖マリアンナ医科大学医学部に進学し、卒業後は聖マリアンナ医科大学病院の第三内科に入局して研修医として臨床経験を積みました。当時の内科は、どんな病気でも診療することが当たり前でした。呼吸器疾患、がん疾患、血液疾患である白血病や内視鏡検査なども行っており、あらゆる内科疾患の診療を行いましたね。1987年に聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院(以下、西部病院と略す)が開院して、同病院の代謝内分泌内科に勤務して以来、2008年にクリニックを開業するまでの21年間、西部病院に勤務して糖尿病を専門に診療を行ってきました。大学在学中から糖尿病の研究を行っていましたが、研修医時代の指導医が糖尿病の専門だったこと、当時は糖尿病治療の選択肢が少ない時代で学んでいくうちに興味が深まったことが糖尿病を専門とした理由です。
長年の大学病院での勤務から開業に至った経緯を聞かせてください。
20年以上前から参加している糖尿病研究会で知り合った先生が糖尿病専門のクリニックを開業していて、2005年から週に1度、診療のお手伝いをしています。そちらでは医師と看護師、管理栄養士が連携した診療システムがしっかり機能していて、アットホームな雰囲気で患者とのコミュニケーションもうまく取れていました。それを見ているうちに、「医療としてはこちらのほうがいいのではないか」と感じるようになったんです。大学病院では患者数が多すぎて、一人の患者さんに対してごくわずかしか診療時間を割けませんし、予約が取れず3ヶ月に一度の診療しかできないのが現実です。これでは治療になっていないのではないかと疑問を感じていました。そんな時にその診療システムを見て、「これを参考にしたら、自分自身でもっと良い糖尿病治療ができるのではないか」と考え始め、思い切って開業に踏み切りました。研究会に参加しているほかの先生も糖尿病専門医として早くから開業していましたから、いろいろと参考にさせてもらい助かりましたね。
こちらでは糖尿病を専門に診療しているそうですね。
来院される75パーセントが糖尿病患者の方です。半分以上がこの近くのエリアにお住まいの方ですね。西部病院に勤務し始めた頃から診療している方では、もう25年来のお付き合いになります。その方の人生と共に過ごしているようなものですね。二俣川は診療所間の医療連携がさかんで、近くの診療所で血糖値が高いと診断されて紹介で来られる患者さんも多くいらっしゃいます。西部病院時代の医師仲間が近くで開業しているので、連絡すればすぐに対応してもらえますし、より高度な診療が必要な場合には西部病院に診療を依頼することも可能です。医療を行ううえで非常に恵まれた環境でありがたいですね。ネットワークを生かした診療を当院の強みとして、今後も継続して行きたいと考えています。
そもそも糖尿病とはどのような病気なのでしょうか。
糖尿病は血液中のブドウ糖の高い状態が続く病気で、日本人の6人に1人が糖尿病患者か、その予備軍であり、40歳以上の男性では2人に1人と言われるほど患者数の多い生活習慣病のひとつです。糖尿病の最大の問題は合併症を引き起こすことで、代表的な例が網膜症、腎症、神経障害で、糖尿病性三大合併症と呼んでいます。また、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患の発症も増加しており問題となっています。腎症は人工透析、網膜症は失明に至る危険がありますから、これらの動脈硬化性疾患を含めた合併症をいかに防ぐかが糖尿病治療の目標です。そのために食事療法や運動療法、薬物療法などをバランス良く組み合わせて血糖値をコントロールすることが必要なのです。
スタッフ全員が糖尿病療養指導のエキスパート。自然に生まれたチーム医療が治療に好影響
クリニックの特徴を教えてください。
当院ではスタッフ全員が糖尿病の療養指導のエキスパートである「糖尿病療養指導士」の資格を持っており、専門的な知識を生かして患者さんのケアに取り組んでいます。糖尿病治療では医師、看護師、管理栄養士などのスタッフが連携して、情報を共有し合いながら各立場からアプローチしていくチーム医療が有効ですが、この小さな診療所のなかでは自然とチーム医療ができあがっているのが良いところです。隣の部屋でスタッフが患者さんにお話している声が聞こえてくるので、情報共有しなくても、患者さんが今どんな指導を受けているのかすぐにわかるんですよ。そんな風通しの良さが治療にも大いに役立っています。例えば患者さんが病気のことで看護師に指導されていた時には、こちらではその内容に付いて患者さんの話をさらにじっくりと聞いて差し上げる。このような柔軟な対応ができるのも小規模なクリニックならではの良さですね。
糖尿病料理教室も定期的に開いているそうですね。
糖尿病治療でもっとも大切なのは食事療法です。食事療法をしっかり行わなければ、どんなにお薬を飲んでいても血糖値が下がらず、効果が上がりません。この食事療法の指導の一環として、通院されている患者さんを対象に、年に5回ほど院内で糖尿病料理教室を開いています。管理栄養士が中心となって患者さんに実際に調理をしていただいて、スタッフが準備した食事を召し上がっていただきます。食事の後は看護師による糖尿病についてのお話と健康運動指導士による運動指導も行っています。患者さんに糖尿病食を召し上がっていただき、「こういうものなんだな」と体験してもらうことがこの料理教室のねらいです。教室ではご自宅で使用しているお茶碗を持ってきていただいてご飯の量をはかりで計ってもらうんですよ。そうすると、「普段はこれくらい食べていいんだな」ということがよくわかりますからね。時間は約2時間程度、毎回10人前後の方に参加していただいています。リピーターも多いんですよ。どのような食生活を送っていけばよいのか理解を深める場として活用していただきたいですね。
診療におけるモットーはありますか。
患者さん自身がよく納得した上で治療法を選択し、自ら積極的な形で治療していただくことを大切にしています。糖尿病は生活習慣に関わる病気ですから、患者さんが主体的に治療に取り組むことが欠かせません。それから患者さんに対し一方的に指導しないことも大切です。糖尿病の治療では食事の量をコントロールしなければなりませんから、食べ過ぎてはいけないことはみなさんよくわかっています。食べたいという欲求は本能ですから、それを制限するのはとても難しいことです。ですから一方的に指導するのではなく、少しでも治療へ向かう動機付けをしてあげることが大切だと考えています。生活習慣を改善していただくことは容易ではありませんが、どれだけ治療に対して積極的に向かい合わせてあげられるかを日々考えながら診療に臨んでいます。
通院は病気に向き合うための動機付けの第一歩。時間をかけて理解を深めてほしい
患者さんに接する際にはどのようなことを心がけていますか。
患者さんのお話によく耳を傾けることです。患者さんのなかには自覚症状がないために糖尿病という病気をなかなか受け入れられず、治療に前向きでない方もいらっしゃいます。そんな時は時間をかけて糖尿病について理解を深め、病気であるという自覚を持っていただくことが必要です。こちらではそのような患者さんに対してスタッフがしっかりとサポートしています。大学病院とは異なり、何度でも足を運んでいただけますし、栄養相談などのスケジュールの調整も容易です。そんな小回りの良さが患者さんにも喜ばれているようで、みなさんきちんと診療に来てくださいます。通院するようになったということは病気に向き合おうという気持ちの表れですから、最初の動機付けができたということにもつながります。「糖尿病治療とは動機付けをすることだ」とよく言われていますが、病気に向きあう動機付けとしてクリニックを活用していただけたらうれしいですね。
糖尿病を始めとする生活習慣病を防ぐために注意すべき点はありますか。
食事に気をつけること、特に炭水化物と脂質の取り過ぎに注意することと体を動かすことです。昔に比べて脂質の摂取量が増加したことで、メタボリックシンドロームや肥満など体にさまざまな悪影響を及ぼしています。また自動車社会による運動量の低下、ストレスの増加、飽食などの要因が影響して、糖尿病患者は増加する一方です。高脂肪食、高炭水化物食、運動不足が糖尿病の一番の要因ですから、病気を防ぐためにはこれらと逆の生活を行えばよいのですが、行動に移すのは難しいもの。無理をせず、できることから実践していただくことが大切ですね。
休日はどのようにお過ごしでしょうか。
家内と一緒に買い物に行くなど外出していることが多いですね。それ以外は普段が忙しい分、自宅でのんびりと過ごしています。運動などはあまりしていないんですよ。患者さんには「運動をしてください」とお話ししているのに、自分では何もやっていなくていけませんね(笑)。仕事帰りにフィットネスにでも通いたいところですが、研究会の会合などで忙しくてなかなか実現できずにいます。健康のために体を動かすことを心がけたいですね。
今後の展望を聞かせてください。
4年目を迎え、多くの患者さんに通っていただくようになりました。今後はさらに充実した診療を心がけていきたいと考えています。またスタッフの業務量も増えて負荷が大きくなってきたため、今後はスタッフを増員して診療体制を強化していきます。糖尿病は現代の医学では完治することが困難な病気ですが、良い状態を保って正常な状態に近づけていくことはできます。そのためにはまず、きちんと病院に通っていただくことが大切です。患者さんとのコミュニケーションを大切に、糖尿病ケアを通じて患者様の生活をより良いものとするお手伝いができるよう、スタッフ一同頑張ってまいりたいと思います。