石部 敦士 院長の独自取材記事
横浜わたなべ消化器内科・内視鏡クリニック 鶴見院
(横浜市鶴見区/鶴見駅)
最終更新日:2024/06/11

鶴見駅から徒歩1分の場所にあるのが、「横浜わたなべ消化器内科・内視鏡クリニック 鶴見院」。2024年6月開院の同院は、レイアウトの工夫が印象的。大腸検査に際し下剤服用に備えた6個の個室や、検査後にリラックスしてもらうための院内カフェスペースなどを配備。院長を務める石部敦士先生は、20年以上もの長きにわたり横浜市立大学附属病院を中心に研鑽を積む。大腸がん診療のスペシャリストであると同時に、ロボット支援手術の普及にも貢献。40歳を過ぎたら、胃カメラ検査、大腸カメラ検査を一度は受診してほしいという。大腸がんは、内視鏡検査を受診し、手術に至る手前で予防、早期発見、早期切除をめざすことが重要であるとも話す。今回は石部院長に消化器がんを専門とする医師としての想い、今後の展望などについて詳しく聞いた。
(取材日2024年5月24日)
目標は、消化器がんで苦しむ地域住民をゼロにすること
鶴見に開院する理由や、院内のこだわりについてお聞きします。

鶴見区は横浜市の中で港北区、青葉区に次いで3番目に人口が多い区ではありますが、その人口に対して内視鏡クリニックの数が少なく、地元で内視鏡検査を受診したくてもなかなか医療機関を見つけられないという課題が顕在化していました。こうした地域の課題解決に貢献したいと思い、開業を決意。地域住民の皆さまには、定期的な内視鏡検査の受診を促進したいですね。一度当院を利用いただいた患者さんが、「来院して良かった、次回も受診したい」と思っていただけるようレイアウトにもこだわっています。大腸の内視鏡検査に際し、院内で下剤を服用するための個室が6つ。内視鏡検査後にリラックスしていただくためのスペースもご用意しております。
どのようなコンセプトを掲げているのでしょうか。
当院のコンセプトは、大腸がんや胃がんで苦しむ地域住民の数を、限りなくゼロに近づけること。内視鏡検査に抵抗感を示す方は少なくなく、検査を回避する代表的な理由は、忙しい、痛そう、面倒くさいなど。そうした方であっても、「気軽に足を運んでいただける内視鏡クリニック」となれるようスタッフ一同精進してまいります。不安をもって来院される患者さんが、安心して検査を受診できるよう院内環境や医療チームを整備しております。消化器外科医として、20年以上にわたり難症例を含めた数多くの経験を積んでまいりました。患者さんの不安に寄り添った「最善の医療提供」をミッションに掲げ、日々の診療を行っていきます。
こちらのクリニックの特徴はどのようなことでしょうか。

内視鏡検査と聞いて、嫌悪感を抱く人は少なくありません。胃の内視鏡検査は痛い、大腸内視鏡検査の下剤服用が煩わしいという情報を耳にすることで、検査を避ける傾向に。勤務医時代、「あと1年早く発見できていれば」という患者さんと、数多く接してきました。その状況下にいたからこそ、「早期発見」に尽力したいという思いが。そして外科医師としての方向を、「消化器がんの予防医療」に転換することを決意しました。受診率をアップするために、検査時に鎮静剤使用を推奨したり、早朝の大腸内視鏡検査受診を可能にしたり、胃と大腸の内視鏡検査を同日受診できるよう、スタッフ体制を整備したりとさまざまな工夫を施しています。また女性医師による内視鏡検査日を設けていることも、特徴の一つとして挙げられます。
神奈川県内のロボット支援手術の普及に大きく貢献
大学卒業から現在に至るまでの経緯についてお伺いします。

私は大学卒業後、横浜市立大学附属病院で初期研修を行いました。その後、同病院の消化器・腫瘍外科学(旧・第二外科)に入局。本院の渡邉一輝院長は2年先輩で、同じ大腸グループに属し多くを学ばせていただきました。2023年春頃、渡邉院長より鶴見の分院院長の打診を頂戴することに。私が10年ほど大腸の診療に携わった実績、そして私の人柄などを評価してくださったようです。大学病院で行う治療の多くは、手術を要する段階の患者さんの対応です。大腸がんの場合、内視鏡検査を受診することで手術に至る手前で予防、早期発見、早期切除がめざせます。今後はこれまでの経験を生かして、「手術回避」に向けた取り組みに注力したいと思っています。
これまでの経験の中で、現在につながっていることはありますか?
大腸がんのスペシャリストとなるために、藤沢市民病院の現副院長、山岸茂先生の下で腹腔鏡手術を学ばせていただくことに。その後大学に戻り、大腸がんのロボット支援手術を執刀。この術式を啓発するために、さまざまな医療機関に出向き、指導を行いました。私にとって山岸先生は、技術面だけでなく医師としての在り方についても教示くださる恩師と呼べる存在。「自分の置かれた状況が理不尽に思える時期があるかもしれない。それに腐ることなく粛々とやるべきことを実践していれば、必ず誰かがその姿を見ている」という師の言葉は、今でも脳裏に焼きついています。私自身のキャリアにおいて、師の存在はとても大きなものです。
先生が診察を行う際に、心がけていることはどのようなことでしょうか。

言葉で表現すると陳腐に感じられますが、「患者さんの目を見て、お話しすること」を心がけています。患者さんのお気持ちをくみ取り、患者さんが望むことは何か、その希望に従い、治療の選択肢を提示します。患者さんの中には、「先生が最適だと思う方法を選択します」という方がいらっしゃる一方、ご自身で事前調査を行い「特定の治療法」に執着されるケースも。後者の場合、患者さんの意向が適切であるか否かを判断させていただきます。患者さんにとって不利益が大きいと感じた際は、時間をかけて根気強く話し合いを重ねることに力を注ぎます。患者さんは「ここで治療を受けたい」というお気持ちがあるからこそ、何度も通院して最善策を探られるのだと思います。そのお気持ちに応じることが、医師の役目であると考えます。
地域住民の健やかな日常をサポートするクリニック
地域医療に関する、院長の思いをお聞かせください。

当院がめざす姿は、親しみやすく、通院しやすい内視鏡クリニックです。この地域の特徴の一つは、働き盛り世代の人口が多いこと。一家の大黒柱が健全で、ご家族が健やかな日常を送れるよう当院は「消化器がんの予防」に尽力してまいります。当院は一般内科ではなく、「内視鏡に特化した医療機関」として認知されたいですね。「切れ痔」を持っている患者さんが一般内科に出向き血便の相談をした際、痔治療薬の処方という対応にとどまる場合があります。実際のところその血便が痔によるものではなく、大腸がんのサインである可能性があります。今後は地域の一般内科クリニックとの連携を図り、当院で血便を伴う患者さんのフォローをお引き受けできるよう体制を強化する方向で検討を進めております。
患者さんに知っておいてほしいことはありますか?
内視鏡検査の目的は、やはり消化器がんの予防と早期発見。胃の痛みや違和感を覚えたり、便潜血の所見を受け取ったりした方であっても、内視鏡クリニックへ行き「がん宣告」を受けることに恐怖感を覚えるため、受診を遠ざける場合も。胃の内視鏡検査によって、胃の違和感がピロリ菌によるものと判断できれば、その除菌を行い胃がんの発生リスクの低減を図ります。同じく、内視鏡検査によってポリープが発見された場合はそれを除去することもがんの予防につながります。40歳以上の方のうち、いずれの内視鏡検査も未受診である方は少なくありません。一度でも結構ですので、まず現状を把握してみようという感覚で受診してほしいと思っています。検査を受診して気になる所見がなければ、それだけで安心できるもの。ぜひ、気軽に当院のドアをノックしていただければと思います。
最後に、今後の展望をお願いします。

私の習慣の一つは、先進の情報を入手してそれを患者さんに還元すること。今後もオンライン講習会などに積極的に参加し、少しでも地域医療に貢献したいと思っています。医学界で見逃せないのが、医療機器の目覚ましい進歩です。先進の検査機器によって、鮮明な画像で確認できるようになりました。それだけでなく描写しにくい部位の深部が映されるものもあります。大学病院では、機器の違いが医療の質を格段に変化させ得ることを実感しました。当院では、先進の内視鏡検査機器を導入し、ベテランの専門の医師が、精度の高い医療を提供することをめざします。この地域でがんに罹患する方をゼロにすることを目標に、日々の診療に邁進していきます。