定期メンテナンスと医科歯科連携で
骨粗しょう症の予防につなげる
いかわデンタルクリニック豊田
(日野市/豊田駅)
最終更新日:2025/02/14


- 保険診療
予防歯科の重要性が説かれ「歯科医院は歯が痛くなる前に」との認識は広まりつつある。さらに一歩進めて「整形外科は骨が折れる前に」というのも夢物語ではないと思わせるのが、大学病院の歯科口腔外科医の時に整形外科医との連携経験が豊富な「いかわデンタルクリニック豊田」の井川浩海先生の取り組みだ。メンテナンスの一貫で実施するパノラマエックス線撮影でわかるのは、虫歯や歯周病の状態だけではない。同院が導入した先進のAI解析ツールを利用することで、女性に多い骨粗しょう症へのリスクにも関連することが考えられる、顎の骨の脆弱度の評価が可能だという。「何よりも大事なのは整形外科との連携です」と力を込める井川院長。医科歯科連携により地域の健康を守りたいと真摯に願う井川院長に詳しく話を聞いた。
(取材日2025年1月31日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q歯のメンテナンスがなぜ骨粗しょう症の予防につながるのですか?
-
A
歯科でのメンテナンスでは定期的にパノラマエックス線撮影を行っています。虫歯(う蝕)や歯周病について詳しく調べるのが目的ですが、同時に下顎骨の厚さもわかります。それらのデータをAIが画像解析して顎骨の脆弱度を数値化するソフトウェアが昨年、医療機器として承認されました。顎骨の脆弱度と骨粗しょう症の関連性を指摘する論文もあり、関西では医科歯科連携に関心の高い歯科医院での導入が進んでいます。東京で導入している歯科医院はまだ少ないですが、整形外科と連携して、骨粗しょう症の早期発見に役立て、地域の健康を口腔内から守っていけたらと思っています。
- Q整形外科と歯科との連携について詳しく教えてください。
-
A
骨折をして整形外科にかかり骨粗しょう症がわかる人も少なくありません。しかし、骨折部位によっては寝たきりにもなりかねず、生命予後に大きく関わります。だからこそ、歯科のメンテナンスにも通える元気なうちに、骨粗しょう症の疑いがある患者さんを整形外科につなげたいと考えています。また、骨粗しょう症の患者さんの歯科治療には注意が必要です。万が一の抜歯後の顎骨壊死(がっこつえし)を防ぐためにも、整形外科との連携は欠かせません。整形外科で処方される骨吸収抑制剤の長期投与はインプラント治療が困難となり、また顎骨壊死リスクと関連しているので、治療開始前の歯周病チェックなどにも取り組みたいです。
- Q骨粗しょう症のほかにも歯科から予防できる疾患はありますか?
-
A
例えば、糖尿病と歯周病は相関関係があるといわれています。歯周病ケアが糖尿病をはじめとした全身疾患に関する検査値に影響を与えているというデータもありますね。当院でも、健康診断で血糖値に異常があっても放置したままの患者さんがいらっしゃった場合は、メンテナンスの際に歯茎の炎症や傷が治りにくいなど糖尿病特有の症状がすでに出ていることを説明。そうすることで、できるだけ早い糖尿病の治療開始につなげたいと考えています。歯科特有のメンテナンスという習慣から医科につなげて、骨粗しょう症などの全身疾患を予防するゲートキーパーになれたらと思っています。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1カウンセリング
-
予防歯科において毎日のセルフケアが正しくできているかどうかは非常に重要である。このため、カウンセリングではまず毎日のブラッシングがきちんとできているか確認していく。また、ダラダラと間食をしている、甘いドリンクをよく飲むなど、虫歯になりやすい間違った生活習慣に陥っていないかなどもヒアリングしていく。
- 2検査
-
染め出し液、口腔内スキャナー、レーザー光を使用した虫歯診断機などを使用した検査を行う。これはレントゲンを撮れない「妊婦」にも有用だ。そして患者の都合、口腔内の健康状態などによって各検査を都度使い分ける。また、年に1回はパノラマエックス線撮影も実施して、虫歯・歯周病をさらに詳しく見ていく。この時に下顎骨のデータも取得し、解析につなげる。
- 3クリーニング
-
スケーラーなどを用いたクリーニングを行う。どれだけ正しく丁寧にセルフケアしても細菌のかたまりであるバイオフィルムなどは落としきれない。そういった汚れを定期的にプロに除去してもらうことは、自宅でのブラッシングの効率を上げることにもつながる。エアフローと呼ばれる歯面清掃機によるクリーニングも実施し、より良い口腔環境を心がける。
- 4説明
-
まずは虫歯、歯周病に関する評価の説明を受ける。口腔内スキャナーで撮影した3D画像などを見せてもらいながら、口腔内のどこにどのような問題があるのか詳しく聞く。同時に、AIの画像解析をもとに顎骨を評価したレポートも受け取る。患者が整形外科での検査を希望する場合は紹介状を発行。かかりつけの整形外科を選択することもできる。
- 5定期通院
-
予防歯科は継続することが重要。同院では基本的には3ヵ月に1度、糖尿病など歯周炎リスクが高い人は2ヵ月に1度のペースでの通院を推奨している。「きちんとブラッシングできているか不安なので1ヵ月に1度はチェックしてほしい」といった要望を伝えてもいい。定期検診の結果をスマホで確認できるので、磨き残しができやすい部分などを自覚しつつセルフケアを続けていく。