大澤 亮太 理事長の独自取材記事
田町三田こころみクリニック
(港区/田町駅)
最終更新日:2022/05/10

田町駅東口から芝浦方面へ歩くこと約3分。1階にコンビニエンスストアの入るビルの5階にあるのが「田町三田こころみクリニック」だ。外の光が降り注ぐ明るい、居心地の良さを感じさせる待合室が印象的な同院は、心療内科・精神科のクリニックとして、働く世代や学生などの心の病気や症状に対して診療を行い、サポートしていくことで社会に貢献することをめざす。同院の他、複数のクリニック運営を行う「医療法人社団こころみ」の大澤亮太理事長は、医師として患者に寄り添うだけでなく、複数のクリニック運営を通して安定した体制で医療を一人でも多くの患者に届けることにも注力。「こころみに来れば“人安心(ひとあんしん)”と言われるようになるのが目標」とやわらかな口調で話す大澤理事長に、同院のことや精神医療にかける思いなどを聞いた。
(取材日2022年3月2日)
自身が「家族や友達を紹介できる心の医療」をめざす
クリニックを紹介していただけますか?

当院は、2022年4月1日に開院予定の心療内科・精神科のクリニックです。誰もが安心して心のことを相談できる場所というのが基本的なコンセプトで、適応障害やうつ病、社交不安障害やパニック障害といった不安障害、強迫性障害や、アスペルガー症候群・ADHDといった発達障害、自律神経失調症や双極性障害といった心の病気や症状について全般的に診療します。診療では、薬物療法や心理療法などオーソドックスな治療が基本になりますが、当院の隣にある「東京横浜TMSクリニックみなと東京院」と連携していく予定です。患者さんの思いに寄り添いながら、さまざまな治療の選択肢の中から、一人ひとりに適した治療法をご案内していければと考えています。
なぜ、このエリアに開院したのですか?
当法人の理念として、「心身の健康から社会の生産性を高めていく」というものがあります。つまり、自分たちが医療を提供することで、社会のプラスになっていくことを大切に考えているのです。加えて、私はもともと働く人のメンタルヘルスにも関わってきましたので、働いている人たちにアプローチしていきたいという思いも強くあります。そう考えた時に三田、田町はオフィス街ですし、近くには大きな大学もありますので、この地域で働いている人や学生さんに、私たちが心の医療を提供していきたいと考えたのです。
院内の雰囲気など、こだわったところはありますか?

心療内科・精神科は、どうしても患者さんをお待たせしてしまうことになることがあります。と言うのも、患者さんの状態はタイミングによって調子が良い時もあれば悪い時もありますので、じっくりとお話を伺うべきときもあるのです。そのためには、待っていただいている患者さんに、リラックスして過ごしていただけるようにする環境は大切です。そこで、待合室は一人掛けのカウンターのような席に仕切りをして、それぞれの席にはスマートフォンの充電やパソコンが使えるようにコンセントを用意して、ウォーターサーバーも置くなど、居心地の良さを追求しています。また、受付や精算を自動で行えるようにするなど、診察以外のストレスはできるだけ少なくできるようにも工夫しています。院内のカラーは、私たちのイメージカラーである青や緑を使って気持ちが落ち着くような雰囲気にする中で、少し前向きになれるようにと黄色も使っています。
身内を紹介したくなるような精神医療を大切に
力を入れる予定のことを教えてください。

基本的に、心に関する病気や症状を幅広く診療していますが、その中でも働いている人や学生さんにも多い適応障害や社会不安障害、あがり症など社会生活のストレスからくる病気の診療に力を入れていきたいと考えています。適応障害は、環境とご本人の価値観の双方が要因となって起こることが多いもの。そこの折り合いがつかないと、誰にでもなる可能性はあるのです。適応障害は、現実的な悩みも重なるので正解はないのですが、治療のバランスをとりながら折り合いをみつけていきます。また、社会不安障害やパニック障害なども強い不安からくる病気としてカテゴライズされますが、これらを抱えながらも毎日の生活を頑張っている方は多くいらっしゃいます。そういう方々の生きづらさを解消できたらなと思っています。
クリニックを運営していくにあたり、大切にしていることはありますか?
精神医療というのは属人的というか、人がすごく大切な一方で、手術件数やその成功率などが出ませんので、良い医師がわかりにくいところがあります。当院がめざしているのは、身内を紹介したくなるような精神医療です。同僚の医師やスタッフから、この先生に診てもらいたいと思ってもらえるような診療ができれば、ある意味で心療内科・精神科の名医だと思うのです。そのために必要なのが、患者さんと信頼関係をきちんと築いていける力です。「うつ病だったらこうしましょう」という治療方法は教科書に載っていますが、そうではなくて環境調整の指示や、今の状態にどのようにアプローチをしていくのか、そして薬物の使い方など、総合的に考えてその患者さんにとって最適と思える治療を見出すことができる。そういうスタイルの診療をしていきたいですし、それができる医師を集めていきたいと考えています。
院長の松本浩毅先生は、どのような方ですか?

私と松本先生が出会ったのは、10年くらい前のことです。当時、私はどのような状態の患者さんでも受け入れる、といった方針の精神科のクリニックに入り、武者修行みたいにたくさんの診療を通して経験値を積み重ねていったんです。そこに松本先生もいらっしゃって、本当にいろいろなことを松本先生から教えてもらったんです。つまり、私の師匠みたいな存在ですね。私の個人的な知り合いにも、何かあったら松本先生を紹介したいと思える、そんな信頼感がありました。先ほど話した自分の身内を紹介できる医師というのが、私にとってはまさに松本先生で、その先生に今回、当院の院長を務めてもらうことになって、私自身も非常に心強く思っています。
心の問題で困っているのなら、とりあえず来てほしい
先生は、なぜ精神医療を専門に選んだのですか?

私は、もともと文系出身なんです。文系だと、なんとなく精神科って合いそうですよね(笑)。そんなこともあって最初から興味はあったのですが、研修医の時には1回、糖尿病に興味を持ったこともあって内科に行こうと考えたこともあります。糖尿病の治療は、どうやって生活習慣を変えていくかなど行動変容を促す必要があって、それが精神医療と少し似ているところも楽しく感じたんだと思います。研修医の時に、プログラムの一環で大学で保健室の先生をしていたこともあるのですが、そこには心の問題に悩む学生も結構来たんです。そんなこともあって、高齢者を対象にした医療も大切ですが、学生や働き盛り世代など若い世代にアプローチするのも大切だなと考え、まずは働く人のメンタルケアを学んでから、その後にもっと精神医療の経験を積むためにクリニックや病院に勤務していったのです。
今後の展望を教えてください。
等身大と言いますか、大きな野望は抱いていません。当院は、法人の東京の拠点としての位置づけになりますので、患者さんが少しずつ増えると同時に、想いをともにする医師も少しずつ増やしていき、精神医療を提供していく場として充実させていきたいです。また、名の知れた病院なら、例えばがんならがんセンターに行けば良い、とかありますよね。「こころみであれば人安心(ひとあんしん)」という言葉も掲げていますが、いずれは、心療内科・精神科のことであれば、こころみクリニックに行けば大丈夫と言ってもらえるようになるのが、めざす医療だと思っています。
患者へのメッセージをお願いします。

心療内科・精神科は、どんな医師にかかるかで運命が決まってしまうとも言われるくらい、医療機関選びが大切とされていますが、患者さんはどのクリニックに行けば良いのか迷ってしまうと思います。当院ではできるだけ、当たり前のことがしっかりできる、安心できるクリニックをめざしていますが、そうは言っても一人の医師が10人の患者さんの全員と相性が良いかは、正直言ってわかりません。そういう意味で、当院には複数の医師がいますので、初診のときに何か合わないとかあれば、遠慮なく言っていただきたいですし、そういうことも言えるクリニックです。そして、心の問題でどこに行けば良いのかわからない、行こうか迷っているなどであれば、構えずにご相談していただけたらと思っています。