甲状腺の病気について解説
何科にいけばいいのかという疑問を解消
たしろ代謝内科クリニック
(福岡市城南区/七隈駅)
最終更新日:2021/11/17


- 保険診療
甲状腺や甲状腺ホルモンという言葉は耳にしたことがあるが、その病気についてはよくわからないという人が少なくないかもしれない。甲状腺から分泌されるホルモンは、全身の代謝をコントロールし、体内のさまざまな器官の働きを支える重要な役割を持つ。その分泌量が適切でないと、だるさや疲れをはじめ、多種多様な症状が現れる。こうした甲状腺の異常は、意外にも身近に起こり、甲状腺の病気で悩む人は珍しくない。「たしろ代謝内科クリニック」の田代尚崇院長と田代未知副院長は、ともに代謝内科を専門とし、そんな多くの患者の健康を守るために尽力している。尚崇先生と未知先生に甲状腺疾患の特徴や治療などについて詳しく聞いた。
(取材日2021年2月19日)
目次
専門性を生かして、甲状腺疾患の早期発見・早期治療に力を尽くす
- Q甲状腺疾患には、どのような特徴があるのでしょうか?
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A
▲さまざまな症状が全身で起こる甲状腺疾患
【尚崇先生】甲状腺は、喉のあたりにあり、甲状腺ホルモンを分泌する臓器です。このホルモンの分泌量が多かったり、少なかったりすると、さまざまな症状が全身で起こります。代表的なのが、甲状腺ホルモンが増加する「バセドウ病」と不足する「橋本病」。甲状腺腫瘍も決して見逃してはいけません。また、甲状腺疾患は女性に多いとされ、年齢は関係ありません。10代でも80代でも発病する可能性があるので、注意が必要です。
- Qどういった症状があったら受診すべきですか?
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A
▲日常的に起こり得る些細な変化も、体からのサイン
【尚崇先生】甲状腺疾患は、症状がとても多彩であることが特徴です。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると「動悸」「手足の震え」「暑がりになる」「体重低下」「イライラする」などの症状が現れます。逆に甲状腺ホルモンが足りないと「便秘」「顔や体のむくみ」「寒がりになる」「無気力」「体重が増える」「皮膚の乾燥」といった異常を感じます。どちらにも共通して起こるのが「首元の腫れ」「体の疲れやだるさ」「月経不順」といった症状。こうした変化は日常的に起こり得るので、単なる体調不良と考えがちですが、甲状腺疾患の治療は早期発見・早期治療が重要です。そこで少しでも気になることがあれば内分泌代謝内科への受診をお勧めします。
- Qどんな検査をするのでしょうか?
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A
▲検査の流れについて解説。2人の専門医師がいることもメリット
【未知先生】血液検査と頸部のエコー検査が基本となります。血液検査では、血液中の甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの分泌量のほか、自己抗体値などが正常かどうかを確認。さらに視診や触診を行い、状況に応じてエコー検査で甲状腺の大きさや炎症の有無、内部の状態や血流を確認します。異常がある場合は、甲状腺の中がざらついて見えたり、血流が亢進していたりします。大半の甲状腺疾患は、こうした検査で診断がつきますが、中枢性甲状腺機能低下症やTSH産生下垂体腫瘍といったまれな病気が隠れているケースもあります。そうした疑いがある時は高次医療機関と連携して、MRIなどの精密検査が受けられるよう適切に対応しています。
- Q妊娠の際にも甲状腺に注意が必要だと伺いました。
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A
▲自覚症状がなくても事前に医療機関へ受診することを勧める
【未知先生】まず甲状腺の機能が正常でないと、不妊を招く可能性があります。そこで特に妊活をお考えの方には、自覚症状がなくても事前に医療機関へ受診することをお勧めします。また、妊娠初期の場合、おなかの中の赤ちゃんは甲状腺を持っていないので、お母さんの甲状腺に頼るしかありません。そのため、甲状腺ホルモンが足りないときちんと成長できず、過剰に出過ぎていると流産につながる可能性もあります。しかし、妊娠中に甲状腺の病気があったとしても悲観的になる必要はありません。適切な治療を受け、甲状腺のホルモンバランスをきちんとコントロールすることで対処できるケースがほとんどです。
- Q甲状腺疾患が見つかった後、どれくらいの治療期間が必要ですか?
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A
▲少しでも「おかしい」と感じたら、気軽に受診をと語る先生たち
【尚崇先生】甲状腺機能の異常があれば、投薬治療でホルモンの分泌をコントロールします。服薬を始めて、約1~2ヵ月で分泌量の安定をめざせることが多いです。その後、個人差はありますが2年未満ほど、薬を飲み続けます。こうした治療で、それ以降の薬の処方の必要がなくなる方が約半数。つまり、生涯にわたって薬を飲み続けないといけない方も多数いらっしゃるというわけです。バセドウ病の場合は、手術や放射線治療で過剰に働く甲状腺の機能を取り除いて、改善を図る場合もあります。