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松永 慎史 院長の独自取材記事

相生山ほのぼのメモリークリニック

(名古屋市緑区/相生山駅)

最終更新日:2023/12/12

松永慎史院長 相生山ほのぼのメモリークリニック main

相生山駅から徒歩5分の場所にある「相生山ほのぼのメモリークリニック」。2020年5月に開院した内科、老年内科、老年精神科、心療内科を標榜する、認知症・体・心の悩みを総合的に相談できるクリニックだ。「体が病むと心も悪くなるように、体と心はつながっています。その両方を診られる使い勝手の良いクリニックをめざして開業しました」と話すのは、院長の松永慎史先生。藤田医科大学病院の内科・精神科での診療経験と認知症の研究を生かし、診療を行う。終始穏やかで、きっと高齢者にも優しいのだろうという印象の松永先生に、理想とする医療や開院への思いについて聞いた。

(取材日2023年09月27日)

内科と精神科の二足のわらじで経験を積む

内科と精神科の両方を診る医師というのは珍しいですね。

松永慎史院長 相生山ほのぼのメモリークリニック1

私の両親は医師で共働きだったため、私は祖母に育てられたおばあちゃんっ子でした。医師をめざすにあたっては、高齢化が進む時代だからこそ高齢者をしっかり診ることができる医師が必要だと考えていました。目標は、高齢社会に対応した医師になること。しかし、いざ大学に入るといろいろな診療科があり、選択に悩みました。その中で気になったのは、体も心も同時に診ることができる医師がほとんどいないという現状です。体が病むと心も不調を来しますし、心を病むと体も不調を来しますが、体は内科、心は精神科など症状が現れた部分に応じた医師が診るというのでは、患者さんも大変ですよね。学生時代には、体も心も両方を診ることができる医師になろうという目標ができました。

体も心も診る医師になるために、どこでどんな経験をされたのですか?

同じ理想を持つ先輩から「これからは高齢化が進み認知症が増えるのに、認知症を診る医師が不足している」ということを教えてもらいました。診療科を選ぶにあたって、認知症について、体にいて、心について、何から学ぼうかと考えていたときに、たまたま出身大学である藤田医科大学の精神科に認知症を診る部門があり、まずは精神科の医師となることを決めました。しかし、私の目標は体も心も診ることだったので、内科の経験を積むためにアルバイトもしました。内科の外来や往診、週に1度は「中部国際空港診療所」に勤務し、救急医療も含め、さまざまな経験を積みました。また研究者としては、認知症に関する研究を中心に行いました。医学博士となった後は、藤田医科大学の精神科で、認知症や精神疾患を専門に5年講師を務めました。その後、藤田医科大学の認知症・高齢診療科で認知症専門の医師として、高齢者を診る老年内科の医師として2年講師を務めました。

内科、精神科の両方で経験を積んだ後に、クリニックを開業されたのですね。

松永慎史院長 相生山ほのぼのメモリークリニック2

日々の診療から見えてきたことは、医師一人だけでは患者さんやその家族を救えないということでした。医師の知識や技術だけではなく、看護やケア、心理療法、社会福祉制度などの専門家と力を併せて医療を行うことが大切です。特に認知症の方やそのご家族をサポートするには、精神保健福祉士、看護師、心理士などの多職種が密に連携することが重要になってきます。しかしながら、総合病院ではその組織の複雑さから、患者さんや家族のサポートを多職種で密にすることは難しいと、実感していました。理想の医療をするためには、多職種連携のできるフットワークの軽いクリニックを開業したいと思いました。

患者の治療だけでなく、家族も相談ができるクリニック

先生がめざす医療についてお聞かせください。

松永慎史院長 相生山ほのぼのメモリークリニック3

医師だけでなく、看護師、心理士、精神保健福祉士などの多職種が連携しながら患者さんとその家族をサポートできる医療をめざしています。当院には、心理士と精神保健福祉士が常勤していますので、心理療法や心理検査も可能ですし、さまざまな制度の相談が可能です。地域包括支援センターで長年勤めていたベテランの精神保健福祉士さんは、私よりも地域のことに詳しいので、頼もしいスタッフです。看護師さんも、内科でも精神科でも経験がある方で、患者さんの病状に応じて、優しく手際良く対応してくれています。クリニックとしては、患者さんのかかりつけ医や総合病院、ケアマネジャー、地域包括支援センター、訪問介護ステーションなど、患者さんと家族を取り巻く関連機関とも連携を図り、より包括的なサポートに取り組んでいます。理想は、「ここに来ればなんとかなる」というクリニックにしたいと思っています。

開院から変わったことは?

スタッフが経験を積んで臨機応変に対応できるようになったことと、認知症診療では地域に認識してもらえるようになったことでしょうか。近隣のクリニックや病院、介護関係の事業所やケアマネジャー、地域包括支援センターなどから認知症で困っている方を紹介していただくことも増え、「皆さんと一緒にサポートする」という理想が現実になってきました。内科に関しても健診やワクチン、風邪、糖尿病、高血圧といった慢性疾患など、かかりつけ医として機能できるようになりました。精神科では、うつ病、適応障害、パニック障害、不眠症などさまざまなご病気の方を、地域のメンタルクリニックとしてサポートしています。

認知症の本も出版されたそうですね。

松永慎史院長 相生山ほのぼのメモリークリニック4

出版社が当院の活動に興味を持ってくれて、本の執筆のお話をいただきました。私も、患者さんやご家族が、1冊で認知症の正しい知識が学べる本があったら助かるなと思っていたので、渡りに船でした。認知症について、治療、予防、制度、病院や施設の選び方など、これ1冊あれば、すべてわかるように執筆しました。クリニックでも好評で、読んでくださった患者さんやご家族から、「もっと早く読みたかった」と言われることもあります。認知症を予防したいとか、何となく心配になってとか、そういったタイミングで読んでいただけるといいかなと思います。

9月から認知症カフェを始められたそうですね。

認知症カフェは、認知症の方とその家族、専門職が集まってお茶をしながら、お話をする場です。当院でも心理士、精神保健福祉士、私も参加して、ご本人やご家族の悩みを聞いたりしています。何よりも、参加者同士が悩みを共有したり、情報交換できるのがすごく役に立ったり、心のよりどころになったりすると思います。隔月第2水曜日の14時から16時、クリニックにて開催しています。予約不要ですので、気楽にご参加いただければと思います。

できるだけ早い段階で認知機能を把握してほしい

どんな患者さんがいらっしゃっていますか?

松永慎史院長 相生山ほのぼのメモリークリニック5

やはり、認知症の方が多く受診され、特に物忘れが気になって受診される方が多いです。インターネットで当院を調べて、他県から来られる方もいますね。若年性認知症の方も通院されています。また、名古屋市では65歳以上になると「もの忘れ検診」を無料で受けられ、かかりつけ医で検診を受けて、精密検査のために当院へ紹介される方も増えています。うつ、適応障害、パニック障害、強迫性障害といった精神疾患で受診される方も多いです。内科の患者さんも増えていて、高血圧や糖尿病、風邪症状、健診やワクチンで受診される方も増えています。

今後の展望を教えてください。

アルツハイマー病の新薬がこれから使えるようになると思います。専門の医師としては、そういった新薬が必要な方に、安全に使用できるように心がけたいと思います。研究者としては、認知症に関する研究も考えていて、論文を発表できたらと思っています。また、地域での認知症に関する啓発活動や、認知症カフェ、院内勉強会なども開催し、患者さんやご家族と交流する時間を増やして、みんなが「ほのぼの」できる取り組みを続けていきたいです。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

松永慎史院長 相生山ほのぼのメモリークリニック6

認知症は本人だけの問題ではなく、患者さんを支える家族、そして家庭としての問題です。家族の人生設計にも関わってくるので、早い段階で受診することが理想です。1、2年たつとこういう状態になるという見立てがあれば、家族はそれに合わせていろいろと準備もできますよね。認知症や精神疾患の場合、本人だけでなく家族が不安定になることも多く、家族の精神状態には特に注意するようにしています。患者さんのために一生懸命に頑張るご家族も多いので、患者さんよりも家族へのお話のほうが長くなる場合も多々あります。患者さんの治療だけではなく、家族が共倒れにならないよう、家族全体が健康になることを常に考えながら診療していますので、ぜひ気軽に相談に来てください。

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