胃がん発症リスクを減らすために
上部内視鏡検査とピロリ菌除菌
西大井内科
(品川区/西大井駅)
最終更新日:2022/01/31


- 保険診療
ピロリ菌は慢性胃炎などさまざまな疾患の原因になり得ることが知られており、特に胃がんの発生にはピロリ菌の感染が強く関連するといわれている。衛生環境が改善され、ピロリ菌の除菌治療が広まるとともに、日本人のピロリ菌保持率は劇的に低下してきているが、依然として胃がん患者が多いのが現状だ。「ピロリ菌の除菌や、除菌後の適切な経過観察により、胃がんの脅威はかなり抑えられると思います」と話すのは、「西大井内科」の石橋一慶院長。消化器外科手術の経験が豊富な石橋先生にピロリ菌と胃がんの関係や、ABC検診と内視鏡検査の重要性、検査の流れと利便性などについて詳しく聞いた。
(取材日2021年9月9日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- QABC検診(胃がんリスク検診)について教えてください。
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A
ABC検診は血液検査でピロリ菌感染の有無と、胃粘膜の萎縮度を評価し、どの程度胃がんになるリスクがあるかを判定します。A群と判定された方はピロリ菌の感染兆候がなく、胃粘膜の萎縮の可能性も少ないため、胃がんになる危険性が低く、内視鏡検査を急いで受ける必要はありません。一方、B・C・D群はピロリ菌に感染しているので、胃がんの有無を確認する内視鏡検査をし、除菌を検討します。ピロリ菌を除菌すると胃がんを発症するリスクの抑制を期待できますから、陽性者は全員内視鏡検査を受け、除菌を検討すべきです。上部内視鏡検査が苦手な方も、まずは採血で評価できるABC検診で自分の胃がんリスクを知ることが大切なのです。
- Q上部内視鏡検査はどのような人が受けるべきですか?
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A
胃がんの主な危険要因はピロリ菌の感染です。ピロリ菌に感染している方は早期での胃がん発見・治療のために一度は上部内視鏡検査を受ける必要があります。ABC検診や便検査でピロリ菌陽性と判定された方以外に、慢性胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がんの既往歴がある方、家族に胃がんの既往歴がある方もぜひ検査を。ピロリ菌除菌は錠剤を飲む容易な治療法で、胃がん予防には有用ですが、発症率をゼロにはできません。また除菌後に胃がんになるケースも見られるので、治療後も適切な間隔で内視鏡検査を受けましょう。もし除菌後に発がんしても内視鏡で早期に発見できれば、内視鏡的切除等、負担が少ない治療で済む可能性が高まります。
- Q上部内視鏡検査にはどのようなメリットがありますか?
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A
上部内視鏡検査は先端にカメラがついた細くやわらかい管を口や鼻から挿入し、モニターを見ながら胃・食道・十二指腸の内部を直接観察する検査です。胃カメラと呼ばれますが実際はカメラが通る食道・十二指腸も診ます。粘膜を直接見るので小さな病変を見つけやすく、がんの早期発見を望めるほか、ピロリ菌感染による胃粘膜の萎縮といった障害の判定もしやすいことが利点。胃カメラに恐怖心や嘔吐反応の強い方は、鎮静剤を使えばうとうとしているうちに終わります。当院では従来の口から管を挿入する経口検査、または嘔吐反射の少ない鼻から挿入する経鼻検査にするか選択でき、鎮静剤にも対応。検査後に仕事なら鎮静剤なしの経鼻検査がお勧めです。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診
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いつ頃から調子が悪いか、家族や親戚に胃がんの既往歴がある人はいるか、アレルギーはあるかといった丁寧な問診があり、上部内視鏡検査が本当に必要かを判断。場合によって血液検査なども受ける。内視鏡を受けるか迷うときは、先にABC検診で必要性を客観的に調べることも。内視鏡を受ける場合は胃がんの発症リスクと検査目的について医師から説明があり、経鼻・経口や鎮静剤の使用などを選択。不安があれば遠慮なく伝えよう。
- 2検査の準備
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検査前日は21時までに食事を済ませる。当日は朝食を取らずに検査の30分前にクリニックへ行き、喉の麻酔等の準備をする。準備の時間は、経鼻内視鏡では約20分、経口内視鏡は約10分ほど。同院では従来の内視鏡より細い管を使用しているため、経鼻はもちろん、異物感が強いとされる経口の場合でも検査を受けやすくなっているが、不安や嘔吐反射が強い人には注射による鎮静剤の使用も推奨している。
- 3内視鏡検査開始
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検査の所要時間は10分程度。ベッドに横向きに寝ると、口か鼻から管を挿入され、医師に慢性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃がんなどの病変の有無を診てもらう。希望すれば検査中にリアルタイムでモニターに映し出される画像を見ることも可能。経鼻の場合は医師との会話もできる。検査中はこまめに医師やスタッフが声かけをしながら様子を確認してくれる。鎮静剤を打った人は眠っている間に検査が終了。
- 4検査結果の説明
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検査が終わった後、すぐに結果を聞くことができる。鎮静剤を注射した人は、30分から1時間休憩を経てから医師と話す。説明は胃カメラで撮った画像を見ながら行われ、治療が必要な場合はその内容も併せて伝えられる。より専門的な検査や治療が必要と判断された場合は、同院が連携するクリニックや病院を紹介してもらえる。同院では希望者に検査結果を写真つきのプリントで渡しており、当日受け取るか、後日郵送も選択可能だ。
- 5ピロリ菌除菌治療がスタート
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ピロリ菌除菌を行う場合は、まずは一次除菌として抗生物質を2種類、胃酸分泌を抑えるための薬を1種類の計3錠を1週間服用する。この方法で除菌できなかったときは、抗生物質の種類を変更し二次除菌に移る。この治療によりほとんどのピロリ菌の除菌が期待できるが、胃がん発症の危険性を完全に排除することは難しいため、年に1回程度、内視鏡検査をして経過を観察することが推奨されている。特に除菌をして1年後の検査は重要。