
こちらの記事の監修医師
昭和大学病院附属東病院
糖尿病・代謝・内分泌内科 診療科長 山岸 昌一 先生
くっしんぐしょうこうぐんクッシング症候群
最終更新日:2022/01/04
概要
内分泌腺の一つである副腎から、炭水化物や脂質、タンパク質の代謝をコントロールするコルチゾールというホルモンが慢性的に過剰分泌される疾患。指定難病の一つ。肥満、筋肉が衰え、皮膚が薄くなるなどの症状が特徴として現れる。コルチゾールは生命の維持に不可欠なホルモンで、通常は起きた時に多く分泌され、寝ている時には減るが、クッシング症候群にかかると常時大量のコルチゾールが分泌され、糖尿病や高血圧、うつ病などさまざまな病気を誘発してしまう。下垂体に異常がある場合、副腎が原因の場合などいくつかの病型に分けられる。年間で100件前後の症例が見られ、女性に多いとされている。
原因
原因としては、①下垂体からの刺激によって副腎でコルチゾールが過剰につくられるケースや、②副腎そのものに問題があるケースなどが代表的。下垂体が原因の場合(①)は、腺腫(下垂体にできる良性の腫瘍)ができて副腎皮質刺激ホルモンという物質が大量に分泌され、それに副腎が反応してコルチゾールが多量に分泌される。これは端的に「クッシング病」と呼ばれる。もう一つの場合(②)には、腺腫が副腎内にできて、下垂体からの刺激がなくても勝手にコルチゾールが過剰分泌される。これは「副腎性クッシング症候群」と呼ばれる。副腎腺腫が発生すること自体は珍しいことではないが、腺腫が機能性を保ち、ホルモンの過剰分泌が起きるのは稀だといわれている。そのほか、副腎がんの一つの症状としてクッシング症候群が出る場合や、治療薬の副作用として発症する場合もある。
症状
コルチゾールの影響により体幹に過剰な脂肪がつくため、肥満傾向が見られる。ムーンフェイスという丸く大きな満月様の顔になるのも特徴的な徴候。一方、手足は筋肉が衰え、体幹に比べると細くなる。これを「中心性肥満」と呼ぶ。また、皮膚は薄くなり、毛細血管が拡張することでピンク味を帯びたまだら模様になる。少しの打撲でも内出血を起こしやすくなり、傷痕は治りにくい。腹部やでん部に赤いスジ(線条)もできる。病気が進むと感染症にかかりやすくなり、敗血症が原因で亡くなることもある。精神面ではうつ傾向が見られる。他には合併症として糖尿病、脂質異常症、高血圧、骨粗しょう症などを発症するケースが多い。
検査・診断
中心性肥満やムーンフェイス、皮膚萎縮、皮下出血などの臨床兆候から罹患が疑われる。診断を確定するには、血液検査で血中のコルチゾール値の日内推移、他の副腎ホルモンの数値、副腎皮質刺激ホルモンの値などを測定。それと同時に、尿検査によって尿中コルチゾールやその代謝産物を測る。さらに、ホルモンの過剰分泌の原因を確かめるため、全身のCTやMRIなどの画像検査によって副腎腫瘍や下垂体腺腫の大きさ・位置を確認する。コルチゾール値が上昇している原因が下垂体にあるか否かを確かめるには、デキサメタゾン抑制試験が有効。下垂体から出ている静脈から血液採取を行うこともある。
治療
基本的には、外科的治療が選択される。下垂体腺腫が原因の場合は、開頭手術か経鼻内視鏡手術によって腫瘍を摘出し、放射線照射を行う。副腎皮質刺激ホルモンの数値などが正常に戻るには1年から2年くらいを要する。また下垂体腺腫は小さくて見つけづらく、腺腫が再発することもあり、その際は再手術が必要。手術での改善が見込めない場合には、内服薬や注射薬の使用も検討される。副腎の腫瘍が原因の場合は、腹部の切開、または内視鏡によって副腎の腫瘍のみを取り出すか、副腎そのものを摘出する。以前は発見が遅れ、合併症を引き起こしてから治療を開始することが多かったため、完治が困難な病気とされてきた。しかし近年では症状の発見時期が早くなってきたことから、適切な治療を受ければ回復が期待でき、特に副腎腫瘍を由来とするクッシング症候群の場合は、多くのケースで改善が見込まれる。
予防/治療後の注意
クッシング症候群は、きちんと治療をすれば2~3ヵ月で改善に向かい、現在では完治の可能性の高い疾患とされている。しかし、放置するとさまざまな合併症(高血圧や糖尿病、脂質異常症、骨粗しょう症など)が引き起こされるほか、命に関わるケースもあるため注意が必要となる。

こちらの記事の監修医師
糖尿病・代謝・内分泌内科 診療科長 山岸 昌一 先生
1989年金沢大学医学部卒業。1993年 金沢大学大学院医学研究科博士課程修了。久留米大学医学部糖尿病性血管合併症病態・治療学講座教授を経て2019年より現職。長年、糖尿病をはじめとする代謝内分泌疾患の管理、治療に携わる。
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