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東京慈恵会医科大学森田療法センター 名誉センター長 中村 敬 先生

こちらの記事の監修医師
東京慈恵会医科大学森田療法センター
名誉センター長 中村 敬 先生

きょうはくしょう(きょうはくせいしょうがい)強迫症(強迫性障害)

概要

強迫観念と強迫行為を特徴とする。「細菌が気になってずっと手を洗ってしまう」「ドアに鍵をかけ忘れた気がして何度も家に戻る」など、強迫観念に基づいた行動を繰り返し、日常生活に支障を来す。明らかに度を越した不安やこだわりがあるのが特徴だが、病気だと気がつかず日常に不便を抱えたまま過ごしている人も多い。生活上の機能障害をもたらす10大疾患の一つで、50人から100人に1人がかかる病気と言われている。適切な治療を受ければ改善が見込める。うつ病をはじめとする他の精神障害を併発していることも。併発する精神障害は、強迫症により生じる精神的葛藤や疲労などと関連して出現すると考えられている。

原因

脳内の神経伝達物質であるセロトニンの働きに異変が生じることが関係しており、安全や汚染に関する認識に不具合が出ることが原因ともいわれているが、明確な原因は明らかにされていない。脳の前頭葉などの血流に異常が生じていることが影響しているという指摘もある。傾向としては責任感が強く、まじめな性格の人、完璧主義の人がなりやすく、生活や仕事上の変化があった際に物事がうまくいかなくなったのをきっかけに、強迫観念や強迫行為が進んでいくことがある。人間関係のトラブルなどが原因となる例も多く、親しい人の死などが契機となって発症することも。最初は軽症であっても、症状を何度も繰り返すうちに悪化することもよくあり、元をたどれば10代から20代の頃に発症しており、精神科を受診して病気が判明するまでに7、8年かかったというケースも少なくない。

症状

ある考えやイメージに過剰にとらわれ、不合理だとわかっていても頭から離れない「強迫観念」、強迫観念を打ち消すための行動を繰り返す「強迫行為」、それらの症状が出る状況を避ける「回避行動」が特徴的。これらの組み合わせのほか、特定の症状のみ出現する場合もある。具体的には、鍵の閉め忘れを繰り返し確認する、何度も手を洗う、誰かに危害を与えたかもしれないと不安になり、警察などに確認する、物の配置に強くこだわるなどの行動が見られる。自宅外に感じる汚染や施錠、加害の心配などから外出もままならず、病院への受診自体が難しいケースもある。

検査・診断

診察による所見と診断基準との照らし合わせや、補助的な心理検査から診断される。具体的な質問の例は、「どのようなものを汚いと思うか」「自分の行動をおかしいと思うか」「ひとつの考えが頭から離れず困ってはいないか」「繰り返し行ってしまう行為はないか」など。さまざまな質問を問いかけることで患者の置かれている状況や治療方針を考えていく。診察では主訴や現在の病気の経過、患者の性格や環境、精神疾患の既往歴や服薬歴、家族の精神疾患の既往歴などについての問診も行われる。脳炎やてんかんなどの疾患が影響している場合もあるため、疑わしいときには頭部CT検査やMRI検査などが合わせて実施される。

治療

薬物療法と森田療法、認知行動療法などの精神療法が一般的で、症状の特性や重症度、患者がどこまで治りたいと思っているかなどを考慮し、患者ごとに検討される。森田療法では、強迫観念やそれにまつわる不安を無理に打ち消そうとせずあるがままにして、建設的な行動や生活に注力するよう促していく。認知行動療法では曝露反応妨害法(ばくろはんのうぼうがいほう)という、不安に立ち向かい、強迫行為を我慢する行動療法などを行う。不潔恐怖を例にすれば、患者が汚いと思うものをランク付けして、段階的に触っても手を洗わない訓練を重ねる。薬物療法では、主にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を用いる。少量の服薬から始めて徐々に量を増やしていくため、基本的には長期間にわたって服用し続けることが必要となる。また強迫症は治療を途中で断念する患者も少なくないため、患者自身の治療意欲を高めるための医師とのコミュニケーションも重要である。

予防/治療後の注意

気が済むまで確かめたりせず、手早く行動するよう心がける。治療にあたっては長期的に治療に臨む姿勢を持つこと。近年は強迫症の認知度も上がり、精神科への受診率が徐々に上がってきてはいるものの、治療を途中でやめてしまう患者も少なくない。自己判断で治療や服薬を中断せず、医師らと相談しながら根気強く続けていくことが大切だ。患者の家族や友人が病気を理解し、責めることなく気長にサポートすることも大きな支えとなる。

東京慈恵会医科大学森田療法センター 名誉センター長 中村 敬 先生

こちらの記事の監修医師

東京慈恵会医科大学森田療法センター

名誉センター長 中村 敬 先生

人間心理に関心を持ち、大学は哲学科へ進んだが、より実践的な学問を求めて東京慈恵会医科大学へ入学。1982年に卒業し、同精神医学講座へ入局。同大学院修了。 第三病院院長兼同精神神経科診療医長を経て、現在は東京慈恵会医科大学森田療法センター名誉センター長と学校法人慈恵大学参与を務めている。