
こちらの記事の監修医師
横浜新都市脳神経外科
院長 森本 将史 先生
かすいたいせんしゅ下垂体腺腫
最終更新日:2022/01/04
概要
下垂体は頭蓋骨の中にある内分泌器官で、さまざまなホルモンを分泌し、人間の体をコントロールしている。下垂体腺腫は、その下垂体にできる良性腫瘍の一つで、ホルモンを過剰に分泌する「機能性下垂体腺腫」とホルモンを分泌しない「非機能性腺腫」に大きく分けられる。機能性下垂体腺腫は、過剰分泌されるホルモンの種類により、現れる症状が異なる。下垂体腺腫の患者のうち「非機能性腺腫」が約40%、機能性下垂体腺腫の「プロラクチン産生腺腫」が約30%、「成長ホルモン産生腺腫」が約20%、「副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫」が約5%、「甲状腺刺激ホルモン産生腺腫」が約1%、その他が約4%である。
原因
下垂体腺腫は下垂体の一部の細胞が腫瘍化したもので、そのほとんどは良性である。原因は不明だが、食事などの日常の身近な習慣、行動などが影響していることはなく、また遺伝的要素はないと考えられている。また、原因とはいえないまでも、体内の内分泌学的な環境の変化が多少の影響を与えている可能性があると考えられる。体内の内分泌学的な環境の変化とは、例えば妊娠、出産、またはホルモン療法などである。
症状
腫瘍が視神経を圧迫して視力・視野障害が生じたり、脳脊髄液の流れの障害となって水頭症を来したりする。非機能性線種ではホルモンの減少により下垂体機能低下症が生じ、女性では月経不順、無月経など、男性では性欲低下や勃起不全などの症状が現れる。また腫瘍内に出血が起こり、突然の頭痛、視力・視野障害などが生じることもある。機能性下垂体腺腫では、過剰に分泌されるホルモンの種類により現れる症状が異なる。プロラクチン産生腺腫では、女性には月経不順や無月経、男性には性欲低下や勃起不全といった症状が、成長ホルモン産生腺腫では、巨人症、先端巨大症の症状が現れる。副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫では高血圧症や糖尿病のほか、顔が丸くなり手足に比べて胸や腹部が太る中心性肥満などが見られ「クッシング病」ともいう。
検査・診断
頭部レントゲン撮影、CTやMRIなどの画像検査を行い、腫瘍の大きさ、広がりなどの特徴をつかみ、周辺の動脈や視神経などとの位置関係などを把握する。また機能性下垂体腺腫が疑われる場合には、血液検査や尿検査を行い、血中や尿に含まれているホルモンの値などを調べる。ホルモンを分泌刺激する物質を投与し、一定時間ごとに採血を行う内分泌学的検査では、それぞれのホルモンを調べ、その変化をみる。また、視力、視野、眼底の精密検査も必要となる。経鼻手術を予定している場合には、鼻やその奥の副鼻腔に炎症や異常がないかどうかも確認する。
治療
一般的には経鼻手術が行われるが、腫瘍の位置、大きさ、広がり方などにより、開頭手術となる場合もある。視力・視野障害は手術直後から回復がみられる。また、さまざまな状況により手術で取りきれない腫瘍があった場合には、腫瘍の種類により、薬物治療や放射線治療が行われる。プロラクチン産生腺腫、成長ホルモン産生腺腫や甲状腺刺激ホルモン産生腺腫などでは、薬物治療が選択されることもある。薬物治療は腫瘍の増殖を抑える治療であり、腫瘍を消滅させるものではないため、長期にわたる通院が必要である。手術を行った場合も、退院後定期的にホルモン検査を行うとともに年1回程度のMRI検査、あるいはCT検査が必要である。定期検査の結果に応じてホルモンを補う薬物治療を行う。健康な社会生活、家庭生活を継続していくためには、根気よく検査、治療を続けることが必要とされる。
予防/治療後の注意
下垂体腺腫は良性腫瘍のため、治療後の経過は良好である。退院後は定期的に通院して検査を受け、ホルモンが低下している場合にはホルモンを補う薬物治療が必要になる。また、再発率が高いため年に1回程度は経過観察のためにMR検査かCT検査を行い、腫瘍の増大や再発の有無を確認することが必要である。

こちらの記事の監修医師
院長 森本 将史 先生
1993年京都大学医学部卒業。2002年同大学院医学研究科修了。同医学部附属病院、国立循環器病研究センター、Center for Transgene Technology and Gene Therapyでの勤務を経て、2010年に横浜新都市脳神経外科病院の脳神経外科部長に就任。2011年から現職。専門分野は脳動脈瘤、バイパスなどの血行再建手術、血管内手術などの脳血管障害、脳腫瘍。
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