こちらの記事の監修医師
国立大学法人 高知大学医学部附属病院
呼吸器・アレルギー内科 教授 横山 彰仁 先生
せきぜんそく咳喘息
最終更新日:2022/02/24
概要
咳喘息は、慢性的に咳だけが続く気管や気管支の病気で、小児にも成人にもある気管支喘息の一つのタイプです。典型的な気管支喘息は、「ゼーゼ―」、「ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)という呼吸音や息苦しさの症状がありますが、咳喘息はそうした症状を伴わず咳だけが唯一の症状です。ただ、咳喘息の約30%はやがて喘鳴症状を発症し、気管支喘息に移行するといわれています。悪化させないためには、早い段階から気管支喘息と同様に治療することが重要です。
原因
喘息は気管支付近の気道がさまざまな刺激に対して敏感になり、刺激を受けて慢性的な炎症を起こし、発作的な気道の狭窄を繰り返す病気です。その原因となるのは、ダニやハウスダスト、ペットの毛やフケ、カビなど吸い込むとアレルギー反応を引き起こすアレルゲン、タバコの煙、冷たい・温かい空気、会話、運動、飲酒、過労やストレスなどがあります。風邪や薬の服用をきっかけに喘息の発作が起きる場合もあります。咳喘息は「ゼーゼ―」、「ヒューヒュー」という呼吸音を発するほどには気道が狭まっていないと考えられますが、気管支喘息と同様にこれらの刺激によって発症、悪化すると考えられています。
症状
咳喘息の症状は長引く咳です。風邪をひき発熱や鼻水などの症状は治まったものの咳だけがいつまでも続く、あるいは原因不明な咳が3~8週間以上続いている、咳が出たり治まったりといった状態を繰り返しているときは、咳喘息が疑われます。咳喘息の咳は痰を伴わない「コンコン」という空咳であることが多く、軽い咳から始まってだんだんと悪化する人もいれば、突然激しい咳が出る人もいます。夜間や早朝に悪化しやすく、人によっては特定の季節に多く出現することも。いずれにしても「いつもの風邪ではないな」と感じたら、医療機関を受診してください。
検査・診断
呼吸器の病気は一般的に問診と胸部の聴診で症状や呼吸音を確認し、胸部エックス線検査を実施します。胸部エックス線検査で異常が認められた場合は他の病気ですので、それらの異常に対する検査を行うことになります。次に痰を伴うかどうかを確認。痰が出ずに咳だけであれば、問診で咳が出る季節や時間帯、アレルギー疾患の病歴や家族歴、胸焼けや痛みの有無を聞き取るとともに、アレルギー反応を示す血液検査の結果に基づき、咳喘息であるかどうかを診断します。スパイロメーターという機器を用いて呼吸機能検査を実施する場合もあります。また、咳喘息は気管支拡張薬が症状改善に有用とされるため、気管支拡張薬の効きにより咳喘息がどうかがわかるのです。
治療
咳喘息に対する治療は、典型的な気管支喘息の治療と同様に、吸入ステロイド薬を中心とした薬物治療が行われます。軽症の場合は吸入ステロイド薬を、症状が毎日出るなど中等症以上の場合は吸入ステロイド薬に長時間作用性の気管支拡張薬、抗アレルギー薬などを加えて、気道の炎症を抑え、気管支を広げる治療を行います。また、激しい咳の発作がある場合は、短時間作用性のステロイド薬、気管支拡張薬を発作時に用いて症状を鎮めます。しかし、治療をやめると再び症状が出る場合も多く、継続して経過観察をしていくことが大切です。特定の季節だけに症状が出る患者には、症状の出る時期だけ治療する方法もあります。
予防/治療後の注意
咳喘息の発症にはアレルギーが関与することが多く、ダニやハウスダスト、ペットの毛やフケ、カビなど、アレルギーの原因物質をできるだけ避けることが一つの予防法です。部屋をしっかり掃除し、必要に応じてマスクを着用しましょう。また、風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などの予防に努め、禁煙と受動喫煙防止、節酒、規則正しい生活を送ることも、ストレスを減らして咳喘息の悪化を防ぐことにつながると考えられます。
こちらの記事の監修医師
呼吸器・アレルギー内科 教授 横山 彰仁 先生
1983年富山医科薬科大学医学部卒業後、同大学第一内科入局。シカゴ大学、愛媛大学第二内科、広島大学第二内科(分子内科学)を経て、2007年より現職。2014年から4年間附属病院病院長。2020年より日本呼吸器学会理事長。専門は呼吸器内科学。
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