
こちらの記事の監修医師
国立循環器病研究センター
病院長 飯原 弘二 先生
しょうのうこうそく 小脳梗塞
最終更新日:2022/01/13
概要
脳の血管が詰まり、脳の細胞が死んでしまう病気が脳梗塞です。それが後頭部にある小脳で起きた場合が小脳梗塞で、脳の他の部分の梗塞とは少し違った症状が現れます。小脳は手足や眼球、口などの複数の筋肉を協調させて動かしたり、体のバランスを保ったりする機能を担っているため、小脳梗塞ではこれらの動きが円滑にいかなくなります。また、小脳の隣には生命維持に直結する脳幹があります。脳幹にも梗塞が広がったり、小脳が腫れて脳幹を圧迫したりすれば、死に至る危険もあります。
原因
小脳梗塞では主に4種類の原因が考えられます。1つ目は脳の細い血管が詰まる「ラクナ梗塞」です。このタイプは主に高血圧が原因です。2つ目は、脳の太い血管が動脈硬化を起こし、血管に血栓ができて詰まる「アテローム血栓性脳梗塞」です。これは高脂血症をはじめ、高血圧や糖尿病などの生活習慣病が主な原因です。3つ目が、脳の太い血管が詰まるのは同じですが、心臓でできた血栓が脳まで運ばれて詰まる「心原性脳梗塞」です。心臓病を持った人に起こりますが、特に高齢者に多い心房細動という不整脈の一種が原因となることが多いです。4つ目は、「椎骨動脈解離」を原因とする、小脳や脳幹梗塞で特徴的な脳梗塞です。多くのケースでは特に誘因なく、時に首を回す動作や過度のマッサージなどの外力が原因となって、小脳や脳幹を栄養する椎骨動脈の壁が裂けて細くなったり詰まったりすることで起こります。他のタイプよりも若い人に多いのも特徴です。脳梗塞を起こした直後の治療はどのタイプでもほとんど同じですが、発症や再発を予防する治療は原因に応じて変わってきます。
症状
小脳梗塞では、立ったり座ったりするときにバランスが取れない、歩くときにふらつく、転ぶ、手足がうまく動かせない、めまい、吐き気・嘔吐、ろれつが回らない、耳鳴り・難聴、ぼんやりする、などが代表的な症状になります。椎骨動脈解離の場合は頭痛を伴うことが多いです。脳梗塞の症状として、片側の手足に力が入らない、麻痺するといったものが多いですが、小脳だけに梗塞が起きている場合には麻痺はなく、力は入るのですが、スムーズに動かせないことが特徴です。また、めまいが高い割合で起こります。ただ、小脳だけではなく、同時に脳幹や大脳にも梗塞が起きていることも多いため、体の片側の麻痺や顔のゆがみ、しゃべりにくさなどにも注意し、こうした症状に気づいたら直ちに脳神経外科・脳神経内科のある病院や、脳卒中(脳梗塞と脳出血)の救急患者を受け入れている病院を受診しましょう。
検査・診断
小脳梗塞を含め、脳卒中を疑うときは、病歴と症状の聴取、重症度判定の後、血液検査と心電図、頭部画像(CTかMRI)を行います。頭部画像で出血なのか、梗塞なのか、それがどこに起きているのかを確認します。さらに必要に応じて、造影剤とカテーテルを使用した血管造影検査や超音波による心臓を含む血管系の検査なども追加して、脳梗塞の原因を詳しく調べます。脳梗塞を治療しないでいると、時間とともにどんどん広がっていくことが多いこと、時間がたつと行えなくなる治療もあることから、検査・診断のいずれも迅速に行います。
治療
小脳梗塞に限りませんが、急性期の脳梗塞治療は、救命と後遺症をできるだけ抑えることが目的です。発症後4~5時間以内の場合は、脳の血栓を溶かす薬を使用した治療が行われることが一般的です。最近特に進歩しているのが血管内治療で、脳の太い動脈が詰まっている場合に、足の付け根の血管から脳血管まで専用のカテーテルを挿入し、血栓を回収することも行われています。また、小脳梗塞で小脳が腫れると隣にある脳幹を圧迫しやすく、その場合は生命の危険があるため、脳の腫れを防ぐ薬物治療や、開頭して頭蓋骨を外す手術を行うこともあります。急性期治療が終わるとリハビリテーションが行われます。退院した後は、高血圧、高脂血症、糖尿病、心房細動など、原因となった病気に応じて、再発予防のための薬物治療や生活習慣改善を行います。
予防/治療後の注意
脳梗塞の要因となる高血圧、高脂血症、糖尿病といった病気にならないように、適度な食事と運動を心がけることが大前提です。高血圧、高脂血症、糖尿病になってしまった場合も、医師の治療を受けてしっかりとコントロールすることが発症防止につながります。再発を防ぐのも同様で、それらの基礎疾患の治療と血栓を予防する治療を同時に行います。心原性脳梗塞の原因となる心房細動に対しても血栓予防の薬が用いられますが、最近では心筋のカテーテルアブレーションという治療法も出てきました。生活習慣病を放置せずに、医療機関を受診することが予防の第一歩です。

こちらの記事の監修医師
病院長 飯原 弘二 先生
1987年京都大学医学部卒業後、脳神経外科医師として研鑽を積む。1994年より国立循環器病センター脳血管外科にて勤務、1997年にはトロント大学医学部等へ留学。2000年に帰国後は国立循環器病センター脳血管外科で脳血管障害の臨床研究に従事し、2010年には同脳血管部門長。2013年九州大学大学院医学研究院脳神経外科教授、2018年九州大学病院病院長補佐を経て2020年4月より現職。
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