
こちらの記事の監修医師
国立大学法人 大阪大学医学部附属病院
泌尿器科科長 野々村 祝夫 先生
にょうどうえん尿道炎
最終更新日:2022/04/22
概要
膀胱から尿が体外に排出されるまでの経路を尿道と呼びます。尿道炎は、尿道口から侵入した病原菌が、尿道の粘膜に感染して起こる病気です。性行為の機会に感染することが多く、代表的な性感染症の一つとされていますが、他の原因もあります。性感染症の尿道炎は、排尿器と性器が同一である男性が発症することがほとんどで、尿道炎といえば「通常は男性の病気」という認識が一般的です。尿道炎は抗菌薬などで適切に治療すれば治癒が見込めますが、放置していると尿道が狭くなったり、周囲に膿がたまったりして、重い病気につながる可能性があります。症状に気づいたら早めに医療機関を受診してください。また、性感染症であることが判明したら、パートナーも検査を受けることが大切です。
原因
性感染症としての尿道炎の原因菌は、主に淋菌とクラミジア・トラコマチス(以下クラミジア)という病原体です。淋菌およびクラミジアによる尿道炎は主に男性に見られ、女性では尿道に感染するケースは少なく、膣、子宮頸部、子宮体部、卵管卵巣などへの感染が多く発生します。クラミジアの性器感染は日本でも男女比はほぼ半々です。淋菌とクラミジアでは、潜伏期間や症状の出方が異なります。淋菌とクラミジアが同時に感染している場合もあります。また、淋菌とクラミジア以外に、頻度は少ないものの単純ヘルペスウイルス、大腸菌、寄生虫の一種であるトリコモナスなども尿道炎の原因になります。女性は尿道が短いため、大腸菌が尿道から膀胱、腎臓などに達して膀胱炎や腎盂腎炎などを起こすこともよくありますが、尿道だけに症状が出ることはまれです。
症状
尿道炎の主な症状は、排尿時の痛みと尿道口から膿が出ることです。淋菌を原因とする尿道炎では、性行為の後、2~7日の潜伏期間を経て、尿道の軽い不快感から数時間後には尿道口から黄色い濃い膿が大量に分泌されます。排尿時に強い痛みを感じます。頻繁な尿意、陰茎先端が赤く腫れるなどの症状が出ることもあります。クラミジアに感染した場合は、性行為後、1~3週間後に尿道口からやや水っぽい薄い膿が少量分泌されます。比較的軽い排尿痛が出ることが特徴です。淋菌感染と同様に、頻繁な尿意、陰茎先端が赤く腫れるなどの症状が出ることもあります。淋菌やクラミジアが女性の尿道に感染することはまれですが、感染した場合は排尿痛や頻尿が主症状です。
検査・診断
症状の問診や泌尿器の視診を行った後、尿検査を行います。問診では性行為に関する質問もありますが、病気の診断に必須ですのでためらわずに回答しましょう。泌尿器科の医師や性感染症の診療に慣れている医師なら、症状からおおよその診断が可能ですが、原因菌を特定するためには検査が必要です。尿道口から膿が出ている場合は、綿棒で分泌物を採取し、顕微鏡で調べる検査も実施します。淋菌は顕微鏡検査でも遺伝子検査でも確認できます。クラミジアは普通の顕微鏡では確認できませんが、遺伝子検査によって確認可能です。両方に感染しているケースもあるため、分泌物や尿の遺伝子検査で両方を同時に調べることが多く行われています。
治療
尿道炎の治療では、抗菌薬による薬物治療が実施されます。淋菌とクラミジアでは使用する抗菌薬の種類が異なります。淋菌感染症には通常、セフトリアキソンという抗菌薬を1回静脈注射し、必要に応じて他の抗菌薬も用いて治療します。クラミジア感染症に対しては、マクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系などの抗菌薬から適切に選んで薬物治療を行います。通常、7日程度の服用が必要となりますが、1回だけの内服で済む薬を使用する場合もあります。ただ、淋菌、クラミジア以外の微生物によって尿道炎が起こったり、薬が効きにくいタイプの菌(耐性菌)だったりすることもあるため、薬の効果があまり見られない場合は、原因菌に応じて治療薬を見直します。また、治療によって症状がなくなったとしても、菌が残っていると再発する可能性が高くなります。検査によって菌が消失したことを確認できれば、治療は終了となります。
予防/治療後の注意
性感染症としての尿道炎は粘膜同士の接触が原因です。従って、コンドームを正しく使用すること、性風俗店の利用や不特定多数との性交渉はできるだけ避けることが予防につながります。また、パートナーの感染がわかったら、症状がなくても必ず医療機関を受診して検査を受けましょう。特に女性ではクラミジアが性器や咽頭に感染した場合は無症状であることも多いので、注意が必要です。性感染症は泌尿器科、性感染症内科だけでなく、婦人科のある医療機関でも診療しています。

こちらの記事の監修医師
泌尿器科科長 野々村 祝夫 先生
1986年大阪大学医学部卒業。1990年同大学大学院医学系研究科博士課程修了。その後は東大阪市立中央病院(現・市立東大阪医療センター)泌尿器科勤務や、米国国立衛生研究所留学を経て、1994年に大阪大学医学部泌尿器科の助手に。2010年より教授を務める。2018年4月に大阪大学医学部附属病院の副病院長に就任した。同年8月からは大阪大学総長補佐も兼任している。
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