
こちらの記事の監修医師
国立大学法人 大阪大学医学部附属病院
泌尿器科科長 野々村 祝夫 先生
りんびょう(りんきんかんせんしょう)淋病(淋菌感染症)
最終更新日:2022/04/22
概要
淋菌の感染による性感染症の一つです。淋菌はとても弱く、粘膜から離れると乾燥や温度の変化、消毒などによって簡単に死滅します。そのため、性行為や性行為類似行為以外で感染することはほとんどありません。また、2002年をピークに日本での患者数は減少傾向にあり、最も多く発症するのは20代前半の男女です。さらに、性行為の相手が淋菌を保有している場合、コンドームを使わずに性行為をしたときの感染率は30~50%とされています。淋病を放置してしまうと、女性は淋菌性子宮頸管炎、男性は淋菌性尿道炎や精巣上体炎などを引き起こす原因となり、男女ともに不妊症につながることもあります。感染の疑いがある場合、早めに治療を受けることが大切です。
原因
淋菌は粘膜以外では生存できないことから、性行為によって粘膜と粘膜が接触することが原因です。性行為の相手が淋菌を保有していた場合、粘膜を介して、男性は尿道、女性は子宮頸管、喉の粘膜などが淋菌に感染します。そのため、コンドームを使用することである程度の感染防止が可能です。なお、唾液による感染は報告されておらず、キスなどの接触だけでは感染リスクは高くありません。また、性行為の他に、出産による母子感染もあります。新生児が淋病にかかると失明や命の危険があるため、妊娠中に淋病が判明した場合、直ちに治療を行う必要があります。その他、目の粘膜から淋菌に感染するケースもあるため、タオルの共有なども注意しなければいけません。なお、女性は無症状であるケースも多いため、感染拡大につながっているともいわれています。
症状
女性よりも、男性に症状が現れやすい病気です。男性の場合は性行為後2~9日たつと、尿道炎を発症するケースがほとんどです。尿道から黄白色の粘り気がある大量の膿が出たり、排尿時に痛みを感じたりします。症状が悪化すると、淋菌が尿道から精管に逆流し精巣上体炎を引き起こすこともあります。強い痛みや高熱を発して男性不妊症につながる恐れがあります。一方、近年は無症状のケースも少なくありません。また、女性の場合は子宮頸管が炎症を起こし、おりものの増加や不正出血、外陰部の腫れやかゆみなどが見られます。しかし、明らかな症状がなく、感染していることに気がつかないことも非常に多いのが特徴です。放置しておくと卵管炎や卵巣炎を発症し、不妊症につながります。なお、男女ともに咽喉へ感染に感染した場合は、喉の痛みや腫れ、発熱などの症状が出現します。直腸に感染すると肛門のかゆみや不快感、激しい腹痛や下痢などの症状、目に感染するとまぶたの腫れや膿、白目がゼリー状に盛り上がるなどの症状が現れ、重症化しやすいため注意が必要です。
検査・診断
男性は初尿(1時間以上トイレを我慢してから最初に出る尿)や膿の検査、女性は子宮頸管の分泌物や膿の検査を実施します。咽喉に症状がある場合は、うがいをしたり喉を綿棒でぬぐったりした上で検査します。しかし、喉の痛みを風邪だと思い、抗生剤などを服用している場合、正確な診断ができなくなります。また、女性は生理中は検査を行うことはできません。
治療
患者の症状などを考慮の上、抗生物質の点滴をはじめ、筋肉注射、経口による抗生剤の服用などで対応します。症状や合併症の有無によって治療期間はさまざまです。1回の点滴で完結する場合もあれば、注射や抗生剤の服用を続ける場合もあります。途中で抗生剤の服用を中断すると、淋菌が耐性を持つケースも多いことから、処方されたものはすべて服用するようにしましょう。
予防/治療後の注意
淋病は再感染のリスクが高い病気です。パートナーが感染していることが判明した場合、同じタイミングで治療を行う必要があります。また、性行為の際にはコンドームを使用すること、不特定多数の相手と性行為を行わないことなど、日頃から「感染しない」「感染させない」を心がけていくことが大切でしょう。

こちらの記事の監修医師
泌尿器科科長 野々村 祝夫 先生
1986年大阪大学医学部卒業。1990年同大学大学院医学系研究科博士課程修了。その後は東大阪市立中央病院(現・市立東大阪医療センター)泌尿器科勤務や、米国国立衛生研究所留学を経て、1994年に大阪大学医学部泌尿器科の助手に。2010年より教授を務める。2018年4月に大阪大学医学部附属病院の副病院長に就任した。同年8月からは大阪大学総長補佐も兼任している。
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