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日本医科大学付属病院 小川 令 先生

こちらの記事の監修医師
日本医科大学付属病院
小川 令 先生

けろいどケロイド

概要

ケロイドとは、皮膚に傷ができたり炎症が起こったりした後に、赤く盛り上がる傷痕の一種です。同じような傷痕に肥厚性瘢痕があり、ひとくくりに「ケロイド」と呼ばれることもあります。炎症が強く長く続き、治療が難しいものがケロイド、炎症が比較的弱いものが肥厚性瘢痕と考えると良いでしょう。ケロイドの大きな特徴は、「ケロイド体質」というケロイドができやすい体質が関与するということです。傷の範囲を超えて赤みと盛り上がりが広がり、なかなか治りにくい点も特徴です。しかし近年は、薬物治療、外科手術、放射線治療など、さまざまな治療法が開発されており、適切な治療を受けられれば、傷痕を気にせずに日常生活が送れる程度まで改善できるようになっています。

原因

皮膚のやや深いところ、真皮という部分が傷を受けたことをきっかけに、炎症が続き、線維や血管成分が過剰に増殖することで、赤い盛り上がりができていきます。まだ、詳しくは解明されていませんが、ケロイドは、「ケロイド体質」と呼ばれる素因のある人にできやすいことがわかっています。家族にもケロイドの病歴がある人が多いとされています。高血圧で悪化しやすくなりますし、女性ホルモンもケロイドのリスクになります。特に女性では、妊娠中は悪化しますので要注意です。原因となる傷や炎症では、ニキビがもっとも多く、熱傷(やけど)や手術による傷、ピアスや注射の痕など小さな傷や炎症がきっかけとなることもあります。傷に強い力がかかると、炎症が強くなるので、ケロイドの部分が引っ張られるような運動は避けねばなりません。例えば、胸のケロイドがあるのに、腕立て伏せをすれば悪化します。同様に、腹部手術後のケロイドがある人が腹筋をしても悪化します。

症状

皮膚の傷や炎症がある部分が、赤く、半球状に盛り上がります。ケロイド部分の色は、鮮やかな赤からだんだんと褐色に変化していきます。また、初めに外傷を受けた範囲を超えて大きくなり、上から押さえて痛みがなくても、横からつまむと痛むことがあります。強いかゆみ、引きつれ感といった症状が出る場合もあります。全身のどこにでもできる可能性がありますが、よくできる部位は、前胸部、肩甲部、上腕部、恥骨部や、ピアスの穴を開ける耳垂部などです。

ケロイド 症状 普通の傷痕、肥厚性瘢痕、ケロイドのちがい

普通の傷痕、肥厚性瘢痕、ケロイドのちがい

検査・診断

ケロイドの診断は、視診で傷痕の部位を観察し、問診で症状や受傷の様子、患者や家族の病歴(ケロイド体質かどうか)などを聞き取ることが中心ですが、もし皮膚腫瘍などとの鑑別が必要な場合は、皮膚組織を少し採取して病理診断を行うこともあります。ケロイドや肥厚性瘢痕を疑うような傷痕は、まず悪性(がん)でないことを確認した後、ケロイド的な性質が強いのか肥厚性瘢痕的な性質が強いものなのかを鑑別します。近年では、両者の傾向を比較的簡単に判定できるJSW Scar Scale(JSS)といった基準も作成されています。ケロイドは治りにくく、再発もしやすいため、一般の皮膚科クリニックなどから傷痕治療に詳しい専門施設を紹介される場合もあります。

治療

ケロイド・肥厚性瘢痕は基本的な治療方法は同じです。通常はまず、薬物療法と圧迫固定療法が実施されます。薬物療法では、ステロイドや非ステロイド性の抗炎症薬(貼り薬や塗り薬)、保湿剤などの外用薬を基本に、抗炎症効果の期待できる内服薬やステロイドの注射薬などを用いることもあります。同時にサポーターや包帯などで患部を固定・圧迫して安静を保ち、過剰な血流を抑えて炎症を鎮めます。これらの方法で軽快せず、瘢痕拘縮という引きつれで関節が動かない状態になったときや、目立つ部位で傷痕が残りそうな場合などは、外科手術の対象となります。以前は、ケロイドは再発しやすいため、安易に手術してはならないとされてきましたが、再発しにくい縫い方や、術後の放射線治療で再発を防ぐ方法も開発され、近年では手術も数多く行われるようになっています。ケロイド治療の多くは健康保険が使えますが、治療法や治療内容によっては自由診療となることもありますので、形成外科や皮膚科の医師とよく相談してください。

予防/治療後の注意

ケロイドは大きくなればなるほど治療が難しくなります。また、わずかな傷が原因となることもありますので、ケロイドができやすい部位のニキビ痕が赤く盛り上がってきたなどの症状が出たら、できるだけ早めに、形成外科や皮膚科を受診してください。また、今までにケロイドになったことがある人は、ピアッシング(ピアスの穴開け)を避け、皮膚を清潔にしてニキビなどを作らないようにするなど、日常生活に気を配りましょう。治療が1年以上に及ぶ場合も少なくないため、医師の注意を守って根気良く取り組んでください。

日本医科大学付属病院 小川 令 先生

こちらの記事の監修医師

日本医科大学付属病院

小川 令 先生

1999年日本医科大学卒業後、同大学形成外科学教室に入局。米国ハーバード大学留学を経て、2015年から現職。日本医科大学形成外科学教室主任教授。専門は熱傷・瘢痕・創傷治療。