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東邦大学医療センター 大森病院 瓜田 純久 病院長

こちらの記事の監修医師
東邦大学医療センター 大森病院
瓜田 純久 病院長

きゅうせいいちょうえん急性胃腸炎

概要

感染性胃腸炎は細菌やウイルスなどの病原体が胃腸に感染して起こる疾患の総称である。急性胃腸炎の原因の多くがこの感染性胃腸炎だ。感染性胃腸炎のうち、ノロウイルスやロタウイルスなどウイルスによるものを「ウイルス性胃腸炎」と呼び、冬から春先にかけて患者が増える傾向がある。一方、病原性大腸菌やサルモネラ菌、カンピロバクター菌など細菌によるものを「細菌性胃腸炎」と呼び、一般的には夏場にかかる人が多いと言われている。多くの場合、患者はウイルスや菌に汚染された食品を食べたり、水を飲んだりすることで感染するが、ペットや人に付着した病原体に手指で触れることによる接触感染もある。

原因

病原体となる細菌やウイルスが胃腸内に感染することで発症する。例えば冬に患者が増えるウイルス性胃腸炎の中でも特に主要な病原体であるノロウイルスは、ノロウイルスが付着したカキなどの二枚貝を生や十分に加熱していない状態で食べることで感染する。また、厨房で調理する料理人や学校・家庭内に感染した人がいる場合ウイルスが付着した料理を食べたり、手指についたウイルスが口に触れることで感染する。夏場に感染者が増える細菌性胃腸炎の原因となるカンピロバクター菌は鳥類や犬・猫などのペットの腸に存在し、鶏肉や鶏肉の加工食品、レバーなどをしっかり過熱していなかったり、料理の際にまな板や手に細菌が付着していたりすることによって感染する。同じく、細菌性胃腸炎の原因となる病原体大腸菌は牛や豚などの家畜の腸内に生息しており、細菌が付着した水や食品を摂取することで感染する。また細菌が付着して手指が口に触れることでも感染する。

症状

下痢や腹痛、嘔吐や発熱という症状が出ることが多い。特に下痢はほとんどの患者でみられるが、そのほかの症状は原因となる病原体により少し異なる。血便は、細菌性胃腸炎の場合が多く、中でも病原性大腸菌やカンピロバクター菌の場合、血便となる頻度が高い。サルモネラ菌やカンピロバクター菌、ロタウイルスに感染すると高熱とともに激しい水のような下痢の症状が出る患者が多い一方、ノロウイルスが原因の場合は嘔吐と下痢を訴える患者が多いが、発熱を訴える患者は少ない。同じく病原性大腸菌の場合も発熱がない場合もあるが、激しい腹痛に襲われることがある。またロタウイルスに感染する患者は乳幼児が多く、発熱や下痢、嘔吐とともに、白っぽい米のとぎ汁のような白色便が出る場合が多い。

検査・診断

症状や患者の周りに感染性胃腸炎に感染した患者がいないかどうか等の環境、季節や食べた食品などから病原体となるウイルスや細菌を予測して治療を行うことが多い。より正確な診断を下す場合には、細菌性胃腸炎においては患者の便や腸液を取って培養し、原因となる細菌を検出する。診断結果が分かるまでは2~3日の時間が必要である。また、ウイルス性胃腸炎の場合は患者の便や吐しゃ物の中にウイルス特有の物質がないか迅速便中抗原検査で診断を下す。

治療

感染性胃腸炎は一般的には個々の症状に応じて対応する対処療法で対応し、治癒をめざす。ほとんどの患者がなる下痢と下痢による脱水症状には点滴で対応することが多い。下痢止めは腸内にある病原体を体内に押しとどめてしまい、その分身体が毒素を吸収してしまう可能性があるため基本的には使用せず、整腸剤や乳酸菌製剤などの内服薬を腸内環境を回復させるために処方することもある。細菌が原因の細菌性胃腸炎では抗菌薬を用いる場合もあり、例えば赤痢やコレラ・チフス菌などの場合は使用される。ただし病原性大腸菌やサルモネラ菌、カンピロバクター菌においては患者の症状によって抗菌薬を使用するかどうかは異なる。下痢と嘔吐により病原体が体外に出ていくことで症状も快方に向かうことが多いが、乳幼児や高齢者は下痢や嘔吐による脱水症状が命に関わる場合もあるため、水分補給をしっかり行うことが重要である。

予防/治療後の注意

日常生活における予防方法の基本は手洗いである。料理をする前や食事の前には手洗いを徹底して、せっけんと水で十分に手を洗い流すことが大切。また大量の細菌やウイルスが含まれている患者の便や吐しゃ物を片付ける際には感染を防ぐために、使い捨て手袋や使い捨てマスク、エプロンを使用し、ノロウイルスに効果がある塩素系漂白剤による消毒が効果的だ。またカキなどの二枚貝や鶏肉、焼肉などを食べる際にはしっかり加熱してから食べるという対策も大切だ。焼肉やすき焼きなどを食べるときは、自分の箸で生肉を触らないことが重要。

東邦大学医療センター 大森病院 瓜田 純久 病院長

こちらの記事の監修医師

東邦大学医療センター 大森病院

瓜田 純久 病院長

1985年、東邦大学医学部卒業。関東労災病院消化器科を経て、地元青森県で瓜田医院を開業。東邦大学医療センター大森病院総合診療・救急医学講座教授、院長補佐、副院長などを経て2018年より現職。専攻は内科学、総合診療医学、機能性消化器疾患、内視鏡医学、超音波医学、栄養代謝など。