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昭和大学横浜市北部病院 女性骨盤底センター センター長  嘉村 康邦 先生

こちらの記事の監修医師
昭和大学横浜市北部病院
女性骨盤底センター センター長 嘉村 康邦 先生

かかつどうぼうこう 過活動膀胱

概要

過活動膀胱は、排尿トラブルの1つで、尿が十分たまっていなくても、膀胱が自分の意思とは関係なく勝手に収縮するという病気です。その結果、「トイレが近い」(頻尿)、「急に我慢できないような尿意が起こる」(尿意切迫感)といった症状が表れます。過活動膀胱の患者は日本で800万人といわれ、40歳代で増え始めて高齢になるほど増加し、80歳以上では4割以上が罹患しているとされます。男女とも罹患率はほぼ同じと推定されています。過活動膀胱は生命に関わるような病気ではありませんが、トイレの不安があると外出を控えてしまうなど、自信がなくなって生活の質が下がってしまいます。

原因

膀胱は尿を一時的にためておく臓器で、尿がたまると神経から脳へ信号が伝わり、脳から神経に指令が出て、尿の出口である尿道の周囲にある筋肉を緩め,かつ膀胱の筋肉を縮めることで尿を排出します。過活動膀胱を発症する原因は、脳と膀胱を結ぶ神経のトラブルと、それ以外の原因が考えられます。詳しいメカニズムはよくわかっていませんが、加齢や精神的ストレスによって、神経が膀胱の尿量を感知して脳に伝え、脳から尿道や膀胱の筋肉に「緩めろ」「閉めろ」という命令を伝えるやりとりが、うまくできなくなるからではないかと考えられています。また、それ以外の原因としては、特に女性の場合は加齢や出産によって膀胱、尿道、子宮を支えている骨盤底の筋肉が弱くなって、脳からの命令をうまく実行できないこともあるようです。こうした原因が複合して起こる場合もあると考えられます。 

症状

1日に8回以上、夜間なら1回以上トイレに行く「頻尿」、急に尿意を催し、我慢できそうにない「尿意切迫感」、トイレまで行けずに漏らしてしまう「切迫性尿失禁」などの症状があることが、この病気の特徴です。患者調査では過活動膀胱の患者800万人のうち、約半数は切迫性尿失禁があることが明らかになりました。強い尿意を催すにもかかわらず、1回の排尿量が少なく、何回もトイレに行くことも特徴です。「恥ずかしい」、「年だから仕方がない」と諦めてしまわずに、かかりつけの医師や泌尿器科の医師に相談してみましょう。

検査・診断

医療機関では、まず、簡単な問診票を用いて症状を把握しています。「朝起きてから寝るまでの排尿回数」、「夜寝てから起きるまでの排尿回数」、「急に排尿したくなり、我慢が難しい(尿意切迫感)と感じる頻度」、「我慢できずに尿を漏らした頻度」をそれぞれ点数化し、一定以上の点数なら過活動膀胱の可能性ありと判定されます。頻尿の症状が出る病気は他にもありますから、超音波による膀胱に残った尿量の検査(残尿検査)、尿検査、必要に応じて尿の流量や尿漏れの量の測定、膀胱の圧力、尿道鏡による検査なども加え、他の病気もチェックした上で、過活動膀胱かどうか診断します。

治療

過活動膀胱は、まず薬による治療と、生活上のちょっとしたアドバイスを行うことが一般的です。また、症状や生活状況をより詳しく把握するため、毎日、トイレに行った時間や尿量を記録する「排尿日誌」をつけてもらうこともあります。過活動膀胱に対し、一般的に処方されている薬は抗コリン薬という種類の薬で、これは排尿に関係する筋肉をコントロールする自律神経に作用し、膀胱の過剰な収縮を抑える薬です。また、最近ではβ3受容体作動薬という新しい種類の薬も出てきました。こちらは膀胱の筋肉を緩める薬です。また、尿意を我慢する時間を少しずつ伸ばす膀胱訓練、排尿と関連する骨盤底筋を鍛えるトレーニングを併用することもあります。加齢による要因が大きいため、完全に回復することは難しいのですが、こうした治療や訓練で生活への支障を減らすことは可能です。

予防/治療後の注意

過活動膀胱に限らず、頻尿の人にありがちなのは、水分の摂取量が多過ぎることです。喉が渇いたときに水分を取ることが基本となります。ただ、病気によっては水分を多く摂取するほうが良い場合もありますので、医師に相談してください。また、高血圧など他の病気の薬が頻尿の原因となっている場合もあります。他の医療機関から別の病気の薬を処方されている人は、お薬手帳を提示して相談してみてください。そして、尿漏れがあるときは、恥ずかしがらずに尿漏れパッドや大人用おむつを使うことをお勧めします。今よりも外出が苦にならなくなるでしょう。

昭和大学横浜市北部病院 女性骨盤底センター センター長  嘉村 康邦 先生

こちらの記事の監修医師

昭和大学横浜市北部病院

女性骨盤底センター センター長 嘉村 康邦 先生

1985年福島県立医科大学卒業後、同大学附属病院泌尿器科へ入局。1999年に米国スタンフォード大学へ1年半留学。東京大学泌尿器科非常勤講師などを務めた後、2019年4月より昭和大学医学部泌尿器科学講座教授。専門は女性泌尿器科、排尿障害。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医。