産後に増える女性の尿失禁
さまざまなアプローチで改善をめざす
こまい腎・泌尿器科クリニック
(大阪市天王寺区/谷町六丁目駅)
最終更新日:2021/10/12
- 保険診療
くしゃみや咳をしたとき、あるいは立ち上がる瞬間などに、自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうことをいう尿失禁。尿漏れともいわれる尿失禁は、40歳を過ぎた女性に多く見られる症状だが、恥ずかしさから誰にも言えずに悩んでいる人も少なくない。また、出産時は子宮や膀胱を支えている骨盤底筋に負担がかかるため、年齢に関わらず出産後に発症することも多いそうだ。女性泌尿器科を標榜している「こまい腎・泌尿器科クリニック」では、薬を使った治療に骨盤底筋トレーニングといった運動指導を取り入れることで、尿失禁の症状を改善することをめざしている。院長の駒井資弘先生に、受診のタイミングや治療方法について話を聞いた。
(取材日2020年7月8日)
目次
誰にでも起こり得る尿のトラブル。一人で悩まず、まずは専門の医師に相談を
- Q尿失禁とはどのようなものですか?
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A
自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうことを尿失禁といいます。大きく分けると、咳やくしゃみをしたときや、おなかに力を入れたときなどに漏れてしまう腹圧性尿失禁と、突然の尿意をコントロールできず、尿が漏れてしまう切迫性尿失禁の2種類が挙げられます。さらに、「尿を出したいのに出せない、少しずつ漏れてしまう」といった溢流性尿失禁もあります。このように、尿失禁にはさまざまな種類があり、どれに当てはまるかで治療方法は異なります。薬を使った治療がいいのか、それとも手術のほうが結果が見込めるのかは原因によって変わってくるため、原因を見極めた上で治療を始めることが非常に大切です。
- Qどのような人がなりやすいのでしょうか?
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A
尿失禁は年齢を重ねるにつれて発症しやすく、一般的には40代・50代の中高年の女性に増えるといわれていますが、出産を経験していると、年齢に関わらず一時的に症状が出ることがあります。出産後に尿失禁になる理由としては、赤ちゃんが産道を通って生まれてくるとき、子宮や膀胱を支えている骨盤底筋と呼ばれる筋肉に大きな負担がかかります。もともと筋肉量が多くても、少なからずダメージを受けて骨盤底筋が緩んでしまうため、出産後は尿失禁の症状が出る場合があるのです。時間がたつと症状は治まりますが、年齢とともに再発することがほとんどです。
- Q受診のタイミングを教えてください。
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A
骨盤底筋が尿道を支え切れなくなると、思わぬ瞬間に尿が漏れてしまいます。ですから、咳やくしゃみでおなかに力を入れたときや、立ち上がる瞬間などに、「尿が漏れてしまった……」という経験があれば、泌尿器科を受診していただきたいですね。尿の問題はとてもデリケートで、誰にも相談できないために我慢されている人も多くいらっしゃいますが、治療を通して症状の改善がめざせることもあります。また、出産後の尿失禁が改善しても、2人目以降を出産する際に再び症状が現れる場合もあるので、まずは専門の医師に相談していただければと思います。
- Qどのように対処するのでしょうか?
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A
まずはすぐに取り組める「骨盤底筋トレーニング」をお勧めするようにしています。金銭面での負担がかかりませんし、薬と違って副作用を引き起こす心配もありませんから、自宅で簡単にできるトレーニング内容をまとめたパンフレットを診察時にお渡ししています。膣をきゅっと締めたり緩めたりを繰り返す運動などをしてみて変化がなければ、治療に入ります。尿失禁の種類にもよりますが、症状の改善が期待できる薬を処方します。患者さんの希望があれば、保険適用内で受けられる手術を提示する場合もあります。体への負担が少ない方法を選びたいなどのご相談にも対応していますので、メスを入れることに抵抗がある方は気軽にお声がけください。
- Q日常において注意すべきことはありますか?
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A
日頃から骨盤底筋トレーニングに取り組んでいただくと、尿失禁の改善だけでなく、子宮などの臓器がだんだんと下がってきて体外に出てしまう骨盤臓器脱の予防にもつながる可能性があります。診察を受けたその日のうちから自宅で簡単にできるので、ぜひご家族と一緒にチャレンジしてみていただければと思います。また、尿失禁の治療をしている方に関しては、尿意を感じたらすぐにトイレに行くほか、体を冷やさない、水分をきちんと取るなど、日常において気をつけられるポイントはたくさんあります。薬を飲んでいる場合は医師の指示を守っていただき、ご自身で判断して中断しないように気をつけていただければと思います。