
こちらの記事の監修医師
国立大学法人 高知大学医学部附属病院
呼吸器・アレルギー内科 教授 横山 彰仁 先生
かんしつせいはいえん間質性肺炎
最終更新日:2022/02/24
概要
気道の空気の流れは肺の中で枝分かれを繰り返し、肺胞という直径0.1mm程度の風船のような器官に行き着きます。この風船は肺の中に数億個存在しますが、ブドウの実がぎっしり詰まった房がいくつも重なったような構造です。一つ一つのブドウの実の中は空気が、皮の部位分に毛細血管があり、ガス交換をしています。この肺胞と肺胞の間を仕切る薄い壁のような組織を間質といいますが、肺胞の壁に炎症や損傷が起こり、厚く硬く変化して、うまく機能しなくなる病気が間質性肺炎です。間質性肺炎は病気の原因によりいくつかに分類され、原因を特定できないものを特発性間質性肺炎といいます。特発性間質性肺炎も病気の状態によりいくつかに分かれますが、その中で最も多いのは特発性肺線維症です。
原因
間質性肺炎は、原因によっていくつかに分類されます。関節リウマチや皮膚筋炎・多発性筋炎などの膠原病を原因とする膠原病性間質性肺炎、職業や生活環境により、粉じんやカビ、ペットや家畜の毛などを吸引することで起きるじん肺や慢性過敏性肺炎、さらに薬やサプリメントを原因とする薬剤性間質性肺炎などに分けられますが、こうした特定の原因がわからないものは特発性間質性肺炎と呼びます。特発性間質性肺炎の原因や発症メカニズムはわかっていませんが、複数の原因遺伝子や環境因子が候補として考えられ、研究が重ねられています。最初に特発性間質性肺炎と診断され、のちのち膠原病などが原因と判明することも。特発性間質性肺炎は完治が難しい病気で、国の難病指定を受けています。それ以外の間質性肺炎は治癒、改善が見込める場合が多いので、呼吸器内科でどのタイプなのかの診断を受けることをお勧めします。
症状
間質性肺炎の初期の多くは無症状です。少し進行してくると、体を動かしたときに軽い息切れを感じたり、空咳(痰を伴わない咳)が長く続いたりすることから、体の異変に気づくようになります。病気が進行すると安静にしていても息切れがしたり、咳がなかなか止まらないようになったりします。気管支の病気がある人やヘビースモーカーは痰が伴う場合も。間質性肺炎は多くの場合、少しずつ症状が悪化していくのが特徴ですから、自覚症状がある人は早めに受診してください。病気が進行して酸素が十分に取り込めなくなった場合は、在宅酸素療法が必要になります。
検査・診断
まず、問診や聴診、視診などにより、自覚症状と呼吸の状態、間質性肺炎の原因になるような病気や生活習慣がないかなどを詳しく調べます。続いて、胸部エックス線、胸部CTによる画像診断、呼吸機能検査、血液検査、6分間の歩行検査などを実施し、総合的に診断。胸腔鏡や全身麻酔下手術で肺組織の一部を採取して行う肺生検を行えば診断の精度は高まりますが、体にかかる負担も大きいため、患者の状態によって施行するかどうかを判断します。また、肺胞を洗浄した液を回収し、そこに含まれる細胞や成分を調べる気管支肺胞洗浄検査を行うこともあります。
治療
間質性肺炎の原因が特定されている場合は、原因に応じた治療を行います。薬剤性間質性肺炎は、抗がん剤、抗リウマチ薬、漢方薬、解熱鎮痛薬、市販の風邪薬などで起きることが報告されていますので、原因薬を突き止めて中止、変更することで多くは改善が期待できます。粉じんや動物の毛などを原因とする場合も、できるだけ職場や家庭の環境を変え、原因物質を吸引しないような対策を行うことが基本となるのです。膠原病性間質性肺炎では原因疾患であるリウマチや膠原病を抗リウマチ薬などで治療するとともに、ステロイドや免疫抑制剤で肺の炎症を抑え、症状を改善させる治療を行います。特発性肺線維症や一部の間質性肺炎で進行性の場合には対して、近年では抗線維化薬という薬が出てきました。完治させることはまだ難しいのですが、病気の進行抑制に有用であるとされています。
予防/治療後の注意
間質性肺炎は喫煙が発症に関与している可能性が指摘されています。間質性肺炎の中でも治療が難しい特発性肺線維症の患者の多くが喫煙者とも。まず、禁煙することが予防の第一歩です。また、風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症は肺の病気を悪化させる原因となります。手洗い、マスク着用、うがいなど予防対策を徹底して行いましょう。肺疾患の患者は動くと息切れするために運動不足になり、筋力が弱ってますます呼吸が苦しくなる悪循環に陥りがちです。医師の指導のもと、適度な運動を心がけましょう。

こちらの記事の監修医師
呼吸器・アレルギー内科 教授 横山 彰仁 先生
1983年富山医科薬科大学医学部卒業後、同大学第一内科入局。シカゴ大学、愛媛大学第二内科、広島大学第二内科(分子内科学)を経て、2007年より現職。2014年から4年間附属病院病院長。2020年より日本呼吸器学会理事長。専門は呼吸器内科学。
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