整形外科と内科の双方が関わる
関節リウマチ診療のメリットとは
たていし整形外科リウマチクリニック
(宝塚市/宝塚南口駅)
最終更新日:2025/05/15


- 保険診療
関節が腫れて痛み、進行すると関節が変形してしまうこともある関節リウマチ。30代から50代の女性で起こりやすいが、最近では高齢でも新たに発症するケースや、男性の患者、また関節リウマチによく似た病気で痛みに悩む人も増えているという。そのため「痛みがあっても関節リウマチと診断されず、適切な治療を受けられていない患者さんも少なくないと思います」と、「たていし整形外科リウマチクリニック」の立石耕司院長は危惧する。自身もリウマチ診療の専門家である立石院長だが、「早く診断をつけ、的確な治療をするためには内科と整形外科、両方の専門性が重要です」と話し、同院では整形外科、内科双方の医師が関節リウマチの診療に関わっている。このような診療を行うメリットや、同院での診療の流れを、具体的に解説してもらった。
(取材日2025年5月1日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q関節リウマチとはどのような病気ですか。
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A
本来は外敵から自分を守る「抗体」が自分の体を攻撃してしまう、自己免疫性疾患の一つです。関節周囲の滑膜で炎症が起きて腫れや痛みが生じ、悪化すると増殖した滑膜が骨や軟骨を破壊し、関節が変形してしまうことも。初期には、女性では手の節々の関節が腫れ、こわばったり痛みを感じたりすることが多いです。診察では「朝起きて手を握れますか」とまずお聞きします。男性では、肩や膝など大きな関節に痛みや腫れが現れることが多いですね。親族に関節リウマチの方がいる場合も、注意が必要です。採血検査でリウマチ特有の抗体や炎症反応の変化を調べたり、エックス線や超音波などの画像検査で滑膜や骨の状態を確認したりして、診断をつけます。
- Q早期発見と早期治療が大切だそうですね。
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A
関節の破壊や変形が進んでしまうとなかなか元には戻りにくいので、関節リウマチの治療では今の関節の状態を温存することが大切です。幸いにも関節リウマチの治療薬はこの20年ほどで大きく進歩し、今は生物学的製剤など高い有用性を見込めるさまざまなお薬があります。医師としては、診断をつけて治療薬で関節破壊の進行の予防を図れるところまで来れば、「まずはひと段落」と思えるのです。ただ発症のごく初期には、痛みやこわばりなどはあるのに血液検査や画像検査では明らかな変化が出ていないことも。また、関節が痛くなる病気は非常に多いこともあり、早い段階から関節リウマチを疑うことは、専門家でないとなかなか難しいかもしれません。
- Qこちらでは整形外科と内科がともに関わる診療をされているとか。
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A
整形外科の医師は関節病変に強く、内科の医師は内臓疾患の専門家です。関節リウマチでは間質性肺炎を合併しやすく、聴診や胸部画像の読み取りには内科の専門性が求められます。また採血検査の検査値は関節リウマチ以外の病気でも変化しますし、処方薬を選ぶ際には合併症や代謝を考える必要があり、内科の知識が役に立ちます。一方で関節リウマチと他の関節疾患との鑑別や、痛みの改善をめざすリハビリテーションでは、整形外科の専門性が欠かせません。関節リウマチの診療は、整形外科と内科のいずれかだけでは穴が生じやすいと考えていますので、当院では私と関節リウマチを専門とする内科の医師が、常に相談しながら診療にあたっています。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診で関節症状や全身の状態を詳しくチェック
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事前に記入した問診票をもとに医師が問診を行う。関節の痛みや腫れ、こわばりの程度や、症状の変化などを詳しく話そう。手や指の形、爪、さらに必要があれば靴を脱ぎ足も視診・触診により確認。また関節リウマチには合併しやすい内科疾患が複数あるので、口や目の乾き、紫外線による皮膚の赤み、冷えた際の指先の色の変化など、全身の症状についても問診を受ける。無関係に思えても気がかりな症状があれば、ここで伝えておきたい。
- 2エックス線検査と血液検査、超音波検査を実施
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エックス線検査では関節リウマチ特有の骨びらんや関節の変形などを、また血液検査ではリウマトイド因子や抗体の変化、さらに薬剤選択の際に必要な機能なども調べる。エックス線画像で疑わしい変化が見られれば、超音波検査で滑膜炎の有無を確認。女性では手首や指を、また男性患者では肩や膝などを調べることもあるという。エコー検査自体は診察室内で行われ、数分程度で終了。必要があれば紹介先でMRI検査も行う。
- 3痛みがあれば、理学療法士による運動療法をスタート
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同院では、患者が痛みを訴えていればなるべく初診時からリハビリテーションを開始するそう。関節付近の痛みであれば、その周りの筋肉を鍛えることで、関節リウマチであっても痛みの軽減がめざせるという。関節リウマチに詳しい理学療法士が中心となり、筋力を高めるための運動療法を実施。ある程度筋力がつくことが見込めるまでには6~8週間ほどかかるので、その間はリハビリを行うために短い間隔で通院する患者が多いという。
- 4関節リウマチの診断がついたら薬物治療を開始
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数日後に出る血液検査の結果も踏まえて、最終的な診断が確定。画像検査や血液検査のデータは内科と整形外科の医師がチェックし、合併症の有無なども確認しながら、使用する薬剤の選択や投与量を相談して決めていくという。免疫調整剤や免疫抑制剤からスタートし、効果不十分であれば生物学的製剤やJAK阻害薬に切り換え、症状の軽減と骨破壊の抑制をめざす。同院では患者の利便性を考慮し、内服薬を選択することが多いそうだ。
- 5定期的に受診し、治療の進捗や薬の副作用を確認
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薬物治療の有用性の発揮が望めるまでに4週間はかかることが多いので、初診から約1ヵ月後に受診して問診や検査を行う。痛みや腫れの鎮静化に向かい、リウマチの活動性の低下につながるまでは月1回程度、その後は1~3ヵ月間隔で通院を続ける。関節リウマチでは薬物治療が長期にわたることも多い。定期通院時には治療の進捗とともに薬の副作用や薬物アレルギーなども確認し、必要に応じて処方薬や投与量の変更などが検討される。