こちらの記事の監修医師
日本医科大学付属病院
副院長/消化器外科部長 吉田 寛先生
いちょうえん胃腸炎
最終更新日:2022/01/04
概要
胃・小腸・大腸に生じた炎症のこと。大きく分けて、ウイルス性胃腸炎と細菌性胃腸炎がある。ウイルス性は、胃腸に侵入したウイルスが胃腸の働きを悪化させることで、急な嘔吐や下痢などの症状が現れるため、嘔吐下痢症と呼ばれることも。主な原因ウイルスはノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど。特に、ロタウイルスとアデノウイルスによる胃腸炎は乳幼児に多く見られる。いずれも、秋から冬にかけて流行することが多い。一方、細菌性は、サルモネラ菌(卵、鶏肉など)やカンピロバクター(豚肉、鶏肉)などの細菌感染によるもので、夏季に発生しやすい。ほかには、寄生虫による感染、薬の摂取、殺虫剤など毒性を含む化学物質が原因で起こる胃腸炎もある。
原因
ウイルス性胃腸炎はノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどのウイルスが胃腸に侵入し、胃腸の働きを悪化させることで発生する。感染経路は主に「人から人への感染」と「汚染された水や食品からの感染」が考えられる。人から人へ感染する場合は、感染者の嘔吐物・便を触った手を介しての感染が多いが、乾燥した嘔吐物から飛散したウイルスを吸い込んで感染してしまうケースもある。食品からの感染は貝類によることが多く、しばしば汚染された二枚貝を十分に加熱せず食べることで発生。ノロウイルスは少量でも感染力が非常に強いという特徴があり、例年冬になると発生のピークを迎える。一方、細菌性胃腸炎は、カンピロバクターの感染が最も多い。生の肉を触った手で調理をしたり、十分に火を通さない肉を食べたりすることで発生する。
症状
ウイルス性胃腸炎は突然の嘔吐で始まることが多い。24~48時間くらいで、吐き気、嘔吐、下痢、発熱、腹痛などの症状が現れる。1日に何度も嘔吐を繰り返すケースが多いが、1日1~2回の嘔吐が数日間続くケースもある。嘔吐に続いて、下痢の症状が見られることが多い。症状の程度には個人差があり、3日~1週間ほど継続するが、乳幼児の場合は下痢の症状が長引くこともある。ロタウイルスに感染したウイルス性胃腸炎の場合、白っぽい下痢が見られ、次第に水のような下痢へと変化する。ただし、症状が回復した後も1週間程度は便に混じってウイルスが排泄される可能性があるため、2次感染に注意が必要。
検査・診断
どんな症状があるのか、症状が出る数日前にさかのぼって何を食べたかなど、発生状況を詳しく問診。ウイルス性胃腸炎が疑われる場合、家庭や職場、学校における流行状況も踏まえて、病源体の検出による検査や、迅速診断キットによる抗原検査による検査診断を実施する。血液検査では、炎症反応を示すCRP値の上昇や、白血球数の増加が見られると、細菌性胃腸炎と診断できることがある。ウイルス性胃腸炎なら学校や会社などの施設で集団感染を引き起こす可能性があり、特にノロウイルスは少量でも感染力が非常に強い。年齢層にかかわらず感染が拡大しやすいため、診断がついたら家族や周囲の人への感染を予防する対処も必要。
治療
基本的には特別な治療方法はない。こまめな水分補給による脱水症状の防止、安静、整腸剤の内服といった対症療法が中心となる。特に乳幼児や高齢者は下痢による脱水症状を起こしやすく、水分が取れなくなった場合は点滴治療が必要となるため、早めに医療機関を受診すること。嘔吐した場合は1~2時間程度は食べ物や水分の摂取を控え、胃腸を休めると良い。その後、水分摂取を始める際には一気に飲まず、5~10cc程度の少量を少しずつ摂取する「少量頻回方式」で水分を取ることが望ましい。脱水傾向にある場合は、経口補水液の摂取を推奨する。経口補水液は体内で失われた水分・塩分を効率良く速やかに補給できるよう調整されている。症状がある間は浴槽に入らず、シャワーのみにする、もしくは最後に浴槽に入るなど、家族への感染予防にも留意したい。
予防/治療後の注意
ウイルス性胃腸炎の基本的な予防方法は手洗いである。感染者の嘔吐物・排泄物を処理する際には使い捨ての手袋やエプロンなどを着用し、さらに処理後は石けんと流水でしっかりと手を洗う。ただし、ロタウイルスにはアルコール消毒が効かず、ノロウイルスも85℃以上の熱湯か、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が必要。症状が落ち着いてからも1~2週間程度は便に混ざってウイルスが排出されている可能性が高いため、引き続き手洗いは徹底する。トイレに窓がある場合は、窓を開けて換気するのが望ましい。なおロタウイルスは、接種期間が限定されているが任意で受けられる予防接種が存在する。生ものは十分に加熱してから食べること。
こちらの記事の監修医師
副院長/消化器外科部長 吉田 寛先生
1986年日本医科大学卒業。1992年同大学大学院修了。同大学多摩永山病院外科部長、病院長を経て、2018年に同大学消化器外科主任教授、同大学付属病院副院長に就任。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本肝臓学会肝臓専門医。
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