こちらの記事の監修医師
横浜市立市民病院
石原 淳 病院長
やにょうしょう夜尿症
最終更新日:2022/01/05
概要
睡眠中に無意識で排尿してしまうこと。夜尿症とおねしょはほぼ同じような意味で使われているが、5歳を過ぎて1ヵ月に1回以上の夜尿が3ヵ月以上続く場合は、夜尿症として定義される。7歳児の場合は10%程度が当てはまる。その割合は加齢とともに減少していくが、0.5〜数%程度は成人になっても改善されないといわれる。生活指導をはじめとする治療を行うことで、治療しなかった場合に比べて治癒率を2~3倍高めることが可能で、症状が出なくなるまでの期間も短縮できるといわれている。
原因
原因としては、夜間の尿量が多い、夜間の膀胱容量(膀胱にためられる尿の量)が少ない、睡眠障害または覚醒障害があるという3つが挙げられる。眠っている間に作られる尿の量が膀胱にためられる量を超えても目を覚ますことができないと、夜尿が起こる。通常、夜間の睡眠中は尿の量を減らす抗利尿ホルモンの分泌が増加し、尿量が昼閒の60%程度に減少する。また自律神経の作用で、夜間は膀胱容量が昼間の1.5〜2倍に増える。しかし、この2つの機能が未発達だと、睡眠中の尿量が膀胱容量を超えて尿意が発生する。そして子どもは生理的に睡眠が深いため目を覚ますことができず、夜尿が起こる。なお原因ごとの割合は、夜間の尿量が多い「多尿型」、夜間の膀胱容量が小さい「膀胱型」、その両方が合わさった「混合型」がそれぞれ3分の1ずつとなっている。両親が夜尿症だった場合にその子どもが夜尿症になる頻度が高いともいわれるが、明らかな原因遺伝子は見つかっていない。
症状
夜間、睡眠中に無意識で排尿してしまう。その頻度はさまざまで、毎日のように起こる場合もあれば、1週間に1回以下の場合もある。排尿後も目が覚めないことが多いが、排尿直後に目が覚める場合は、治る時期が近いと考えられている。夜尿と並行して、昼閒も排尿が間に合わずに漏らしてしまう子どももいるが、これは昼間尿失禁または昼間遺尿(ちゅうかんいにょう)といって、ある程度以上に尿がたまると膀胱が急に収縮して強い尿意が発生するために、トイレに間に合わなくなってしまう。昼間尿失禁と夜尿症の両方がある場合は、先に昼間尿失禁の治療をしてから夜尿症の治療を行う。
検査・診断
日常的な水分の摂取量や排尿・排便の状況、持病の有無を問診で確認するほか、尿の量を計測して夜尿の原因を調べる。おむつをして就寝し、夜尿があればおむつの重さの変化から尿量を算出する。それに起床直後の尿量を足したものが「夜間尿量」で、6〜9歳で200ml、10歳以上で250mlを超える場合は多尿型の夜尿症が疑われる。また、昼閒の1回分の最大尿量(ぎりぎりまで我慢したときの尿量)を体重で割った数値が5(ml/kg)以下の場合は、膀胱の機能が未発達なために夜尿や昼間尿失禁を起こしている可能性がある。そのほか、尿検査を行なって尿タンパク・尿糖・尿沈査(尿中の赤血球や白血球など)を調べ、尿浸透圧・尿比重から尿の濃さを確かめる。必要があれば膀胱や腎臓の超音波(エコー)検査などを行うこともある。
治療
治療としてはまず生活指導と行動療法が行われる。その効果が乏しい場合は、夜尿アラーム(おねしょアラーム)を使った治療や内服治療が行われる。夜尿アラームは下着に装着する小さなセンサーがついた機械で、センサーが尿で濡れるとアラームが鳴って子どもを起こす仕組みになっている。アラームで起きることを繰り返すうちに、膀胱にためられる尿の量が増えていき、夜尿が改善されるといわれている。内服治療としては、抗利尿ホルモン薬、抗コリン薬、三環系抗うつ薬などが処方される。抗利尿ホルモン薬は、寝る前に内服薬として摂取することで、作られる尿の量を減少させる。抗コリン薬は、膀胱の収縮を抑制することで、ためられる尿の量を増やす効果がある。三環系抗うつ薬は、本来うつ病に使われる薬だが、抗コリン薬との組み合わせで夜尿症の治療に用いられることが多い。昼間尿失禁がある場合は、時間を決めて排尿させることで膀胱容量を増やす治療が行われる。
予防/治療後の注意
日常生活においては、利尿作用のあるカフェインを含んだ飲み物(コーヒー、お茶、コーラなど)は避ける、昼間は規則正しくトイレに行く、就寝までの2〜3時間は水分の摂取を控える、就寝前に必ずトイレに行くといった習慣をつけることも予防につながる。また、便秘は膀胱容量を小さくする場合があるので、繊維質の多い食事を取るなど便秘の予防も推奨されている。夜尿症の多くは年齢が上がるにつれて自然に治癒する。しかし小学生に入っても毎晩続く、本人が気にし始めるようになったという場合は、医療機関への受診を検討する。
こちらの記事の監修医師
石原 淳 病院長
島根県出身。1979年慶應義塾大学医学部卒業。同大学病院や関連病院で小児循環器科の診療に携わり、1998年に市民病院に入職。 小児科部長、副病院長などを経て2013年より現職。研修医の指導や育成、看護師の教育に力を入れる。
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