
こちらの記事の監修医師
北里大学 泌尿器科学教室
岩村 正嗣 主任教授
ぼうこうがん膀胱がん
最終更新日:2022/01/04
概要
膀胱(ぼうこう)の粘膜より発生する悪性腫瘍。膀胱がんは、膀胱の筋肉には浸潤していない比較的早期のがんと、膀胱の筋肉にまで浸潤した筋層浸潤性がん、他臓器に転移した転移性がんに大きく分けられ、治療法がそれぞれ異なる。大部分の膀胱がんは粘膜内でとどまる表在性のもので、生命に関わることは少ないが、膀胱内に多発し再発を繰り返しやすいという特徴がある。筋層浸潤がんは進行が早く、リンパ節や肺、骨、肝臓などに転移する危険性が高い。膀胱がんは、全国で年間約2万人が診断されており、男性の発生率は女性の約3倍と言われているが、男性に多い理由は明確にわかっていない。また、60歳以上の高齢者に発症者が多く、喫煙者にも多い。染料や特殊な化学薬品を扱う職業に多く発症することも知られている。
原因
発症リスクとして最も大きな要因と考えられているのは喫煙だ。男性の50%以上、女性の約30%の膀胱がんは喫煙により発生するという試算がある。また、ゴム、皮革、織物、色素工場で使用するアニリン色素、ナフチラミン、ベンチジンといった化学物質への慢性的な接触も関係すると言われている。食べ物ではワラビやゼンマイもリスク因子とされる。
症状
他のがんと違って比較的早期から症状が出やすい。最も一般的な症状は、見た目でわかる赤色や茶色の血尿が出ることで、排尿の最後のほうに赤くなることが多く、血の塊が出ることもある。血尿が出ても一般的に痛みはなく、一時的なこともある。また、頻尿や排尿の際の痛み、残尿感といった膀胱炎のような症状が続く場合もある。膀胱炎と異なり、抗生剤を服用しても治らないと膀胱がんが疑われる。膀胱がんが進行し、尿管を閉塞して水腎症を発症すると、背中から腰にかけて鈍痛を感じることがある。尿路結石も同様の症状であることが多く、判別が非常に重要となる。
検査・診断
膀胱がんの診断に最も大切なのが、膀胱の内視鏡検査。尿道からファイバースコープを挿入して膀胱内を観察する検査で、肉眼で腫瘍の有無、がんの発生部位、大きさ、数、形状などを確認する。また、尿にがん細胞が出ているかどうかを顕微鏡で見る尿細胞診も膀胱がんの診断に有用。ただ、比較的悪性度の低いがんである場合は、尿細胞診で異常が出ない場合もある。このほか、尿をためて行う超音波検査でもがんが発見されることがある。筋肉にまで浸潤したがんの場合、全身に転移があるかどうかを確認するために、CT検査やMRI検査、骨への転移を調べる骨シンチグラフィーが行われる。経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)は、内視鏡で腫瘍を切除し、その組織を顕微鏡で調べて、確定診断をするために行う。表在性がんの場合は、このTURBTによってがんが切除できることが多く、治療を兼ねた検査にもなる。
治療
膀胱の中に腫瘍があると判明した場合、まず内視鏡による経尿道的膀胱腫瘍切除術を行って腫瘍を切除し、膀胱腫瘍の状態を顕微鏡で確認。結果が早期のがんの場合、再発を予防するために抗がん剤もしくはBCGを膀胱内に注入する。転移しやすいタイプのがんの場合は、膀胱全摘除術を行い、尿の出口を新たに作る尿路変更術を行う。転移がない場合でも腫瘍が大きいときは、抗がん剤による治療の後で膀胱全摘術を行うこともある。膀胱だけでなく、手術のリスクが高く、膀胱全摘除術ができない場合は、放射線と抗がん剤を用いて治療する。また、すでに他の臓器などに転移している場合は、抗がん剤を全身に投与する化学療法が行われることもある。
予防/治療後の注意
膀胱がんの最大のリスク因子は喫煙であるため、禁煙を心がける。コーヒーの摂取量も膀胱がんと関係があるといわれており、飲みすぎないほうがベター。染料や特殊な化学薬品を扱う職業では、マスクやゴーグルなどで防護することも大切だ。膀胱がんが見つかるきっかけとして多いのは血尿で、8割は無症候性の血尿。痛みのない血尿があった場合、一度泌尿器科にかかることが早期発見につながる。

こちらの記事の監修医師
北里大学 泌尿器科学教室
岩村 正嗣 主任教授
1983年北里大学医学部卒業後、北里大学病院泌尿器科で研修を受け、大学病院のほか神奈川県内を中心に総合病院で診療。米国ロチェスター大学留学。 1995年北里大学病院泌尿器科主任に就任。同科長、副院長を経て2018年7月から2021年6月まで病院長を務めた。現在は北里大学医学部泌尿器科学教室主任教授。 専門は副腎・腎・腹腔鏡・ロボット支援手術。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医。
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