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東京医科大学八王子医療センター 副院長/心臓血管外科科長/教授 進藤 俊哉 先生

こちらの記事の監修医師
東京医科大学八王子医療センター
副院長/心臓血管外科科長/教授 進藤 俊哉 先生

へいそくせいどうみゃくこうかしょう閉塞性動脈硬化症

概要

主に手足、特に下肢の血管が動脈硬化によって硬く細くなって狭くなったり詰まったりすることで、血液の流れが悪くなり血行障害が起こり、手先や足先へ栄養や酸素が十分に届かなくなる病気。初期では、手足がしびれたり青白くなって冷たくなったりする程度だが、病気が進行すると少し歩いただけで足、特にふくらはぎが痛むようになる。やがて安静にしていても足が痛むようになり、深爪なども治りにくくなってくる。さらに症状がひどくなると、ちょっとした傷が原因で足先やくるぶしに潰瘍ができ、壊死することも多い。60歳以上、特に70歳以上の男性に発症しやすく、喫煙が大きなリスクとされている。糖尿病や高血圧なども発症の危険因子となる。

原因

心臓から血液が全身の隅々に送られるための通り道である動脈は、基本的に内膜、中膜、外膜の3つから成り立っている。そのうち血液に接している内膜は、血液から必要な成分を取り出すフィルターの役割を果たし、血液が固まらないようにする役割も担っている内皮細胞に覆われているが、この内皮細胞が生活習慣病などの影響によって傷つくと、内膜の中に悪玉コレステロールといわれる脂肪やカルシウムがこびりつきやすくなり、血管が狭く硬くなってしまう。これが動脈硬化で、閉塞性動脈硬化症はこの動脈硬化が主に手足の血管に起こり、手先や足先まで酸素やエネルギー源が十分に届かなくなることが原因となって起こる。加齢に加えて、喫煙、運動不足、脂質異常症・慢性肝臓病・肥満・高尿酸血症・高血圧症などの生活習慣病が、発症に深く関わっている。

症状

大きく4つの段階に分けられる。初期では、手足がしびれて、青白く冷たいような感じになる。次の段階では、少し歩いただけで、ふくらはぎやおしり・太ももが締めつけられるように痛むようになる。このとき、10分ほど休むと痛みが改善しまた歩けるようになるのが特徴である。さらに病気が進行すると、安静にしていても足が痛むようになり、夜、布団の中に入っても刺すような痛みが続くこともあり、深爪や小さな傷も治りにくくなる。病気がひどくなると、指先にまで酸素やエネルギー源が十分に届かなくなり、つま先やかかとなどに、ちょっとした小さな傷をきっかけにして治りにくい潰瘍などが生じてしまい、壊死に至ることもある。

検査・診断

少し歩くと足に痛みが現れるが、しばらく休むとまた歩けるようになる「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」があるかないかなどを患者からヒアリングした上で、両足と両腕の血圧を同時に測り、その比率から下肢の動脈が狭まっている度合いを判定するABI(足関節上腕血圧比)検査、超音波機器を用いて足の血流の状態をチェックする超音波ドップラー検査が行われることが多い。それらの検査で異常があれば、さらに造影CT検査、MRA検査、下肢動脈エコー検査などで血流を詳しく調べてから治療方法を決定する。より詳しい情報を得るために、入院した上で、下肢動脈造影検査(カテーテル検査)を行う場合もある。

治療

症状の程度に合わせて治療法が異なってくる。手足の冷たさやしびれを感じる程度の初期段階であれば、病気の進行を遅らせるために、タバコを吸う習慣があるなら禁煙をすることを前提として、経過観察を行う。主に「歩く」ことを中心とした運動療法も並行して行われることが多い。間欠性跛行が見られる場合は、同じく禁煙をした上で、血液をサラサラにするための薬などを用いた薬物療法や運動療法、生活習慣の改善が行われる。それでも改善しない場合は、動脈硬化が起こっている場所などに応じて、局所麻酔をしてカテーテルによって狭くなった動脈を広げる血管内治療や、全身麻酔をした上で硬くなった血管の内膜を取り除く内膜摘除術、人工血管や静脈を用いたバイパス手術といった血行再建術を行うこともある。潰瘍や壊死があれば外科的治療が必要になるが、切断せざるを得ない場合もある。

予防/治療後の注意

タバコには血管を収縮させる作用のあるニコチンが含まれているため、禁煙をすることは大原則になる。また、足が冷えると血液の流れが悪くなるため、靴下などを必ず履き、入浴を習慣づけることで常に温まっている状態を維持する。小さな傷や低温やけどが治りにくくなり、壊死につながることがあるため、爪を切るときには十分注意をして、夏でも素足は避けるようにする。冬はカイロなどが直接皮膚に当たらないように注意する。靴ずれなどを起こしにくい靴を選ぶことも大切である。また、水虫などの皮膚病にかからないよう、いつも清潔にしておくことも重要。また、痛みが現れる直前で休憩を取りながら、繰り返し歩くようにするのも効果的である。

東京医科大学八王子医療センター 副院長/心臓血管外科科長/教授 進藤 俊哉 先生

こちらの記事の監修医師

東京医科大学八王子医療センター

副院長/心臓血管外科科長/教授 進藤 俊哉 先生

1980年東京大学医学部卒業後、同大学第二外科学教室に入局。2年間の米国留学を経て、山梨医科大学(現・山梨大学医学部)や一般病院に勤務。2009年より現職。日本外科学会外科専門医、日本心臓血管外科学会心臓血管外科専門医。