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東邦大学医療センター 大森病院 瓜田 純久 病院長

こちらの記事の監修医師
東邦大学医療センター 大森病院
瓜田 純久 病院長

はいそくせんしょう・はいけっせんそくせんしょう(えこのみーくらすしょうこうぐん)肺塞栓症・肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)

概要

「肺塞栓症」とは、心臓から肺に血液を送り込むための肺動脈が、塞栓子(そくせんし)という物質により詰まってしまう病気。塞栓子になる物質はいろいろあるが、そのうちの大半が血栓によるもの。この、血栓が原因の肺塞栓症のことを「肺血栓塞栓症」と呼ぶ。肺血栓塞栓症の原因としては、足の静脈にできた血栓(深部静脈血栓)が肺に運ばれた結果、肺動脈を詰まらせることが多い。血栓ができる理由はいくつかあるが、特に、飛行機などの乗り物で長時間座るなど、同じ姿勢を取り続けることで血流が悪くなり血栓ができやすくなることがある。こうしたことから、急性肺血栓塞栓症を「エコノミークラス症候群」とも呼ぶ。寝たきりの高齢者も注意が必要である。

原因

「肺血栓塞栓症」の主な原因となる深部静脈血栓(足の静脈にできる血栓)は、静脈が傷ついている、静脈の血流が滞っている、血液が固まりやすい体質、という3つの理由によって生じる。1つ目の「静脈が傷つく状態」というのは、手術などがきっかけとなりやすい。2つ目の「静脈の血流の停滞」は、長時間同じ姿勢でいることで引き起こされやすい。例えば飛行機や電車、長距離バスなど乗り物に座り続けることによるもの。また、妊娠や婦人科疾患による腹部の静脈の圧迫や、寝たきりの状態も原因の一つとなる。3つ目の「血液が固まりやすい体質」は、生まれつきそうした体質(先天的凝固異常)を持つ場合と、後天的に何らかの原因でその体質(後天的凝固異常)になる場合とがある。またこの他、血栓以外の塞栓子によって引き起こされる「肺塞栓症」については、肺動脈を詰まらせる原因として、がんなどによる腫瘍、真菌、骨折した際に生じる脂肪組織などが挙げられる。

症状

症状は突然現れることが多く、主なものとしては、息切れや呼吸困難、冷や汗、息を吸う時の胸の痛みなど。呼吸困難については、何度も発作を繰り返す場合も見られる。肺動脈に詰まった血栓が大きかった場合は症状が重篤になりやすく、めまいや失神といった意識障害が出たり、心停止してしまったりすることもある。また、深部静脈血栓を起こしている場合は、足のむくみや腫れ、痛みを伴うことも。特に片方の足だけに症状が現れた場合は、深部静脈血栓症の可能性がある。詰まった血栓が小さかった場合は症状が軽かったり、ほとんど何も感じないことも少なくないので注意が必要。

検査・診断

問診から肺塞栓症や肺血栓塞栓症が疑われた段階で、まずは血液中の酸素量(酸素飽和度)や血圧を確認するとともに、動脈血ガス分析、胸部エックス線検査、心電図や心エコーの検査を行う。肺塞栓症や肺血栓塞栓症の可能性が高い場合は、速やかに胸部造影CT検査を行い、肺動脈の血栓を確認する。また造影CT検査で明らかではない時、肺血流シンチグラムなどの検査を行うこともある。また深部静脈血栓を調べるために、足の静脈血管エコーを行うこともある。造影CT検査をいかに早く行うかが重要であるが、腎障害の人、ビグアナイド系薬剤を服用している糖尿病患者、気管支喘息の人には適さない場合があり、注意が必要である。

治療

主に、抗凝固療法や血栓溶解療法といった薬物療法がとられる。抗凝固療法では、血液が固まるのを防ぐためや、血栓を大きくしないための薬として、ヘパリンやワルファリン、直接経口抗凝固薬などを点滴や服用で用いる。血栓溶解療法には、肺動脈に詰まった血栓を溶かすために、ウロキナーゼなどが投与される。なお場合によっては、血栓融解薬を用いることで症状が悪化するケースも見られるため、血栓溶解療法は患者の状態を十分考慮した上で行う。また症状が現れた当初に呼吸困難が見られる場合は、併せて酸素吸入も実施する。重症の場合には、手術やカテーテル治療で血栓を取り除く。この他、足に血栓が残っていて、今後も症状が繰り返される危険性が見込まれる場合は、予防的措置として下大静脈フィルターというフィルターを腹部の静脈に入れることがある。特に急性血栓塞栓症は突然発症し、症状が重篤になることも多いため、早急に治療を開始することが重要。

予防/治療後の注意

血栓ができないようにするために、座っている時間が長くなる際は、定期的に立ち上がったり、足のマッサージをしたりすることが予防につながる。また、弾性ストッキングを着用して、足に圧をかけることも有効。この他に、脱水状態も症状を引き起こす要因となるため、水分補給をこまめにすることも大切。なお、発症後にワルファリンなどの抗凝固薬を服用する場合、血液凝固作用があるビタミンKが含まれる食品(納豆など)は避けることが求められる。

東邦大学医療センター 大森病院 瓜田 純久 病院長

こちらの記事の監修医師

東邦大学医療センター 大森病院

瓜田 純久 病院長

1985年、東邦大学医学部卒業。関東労災病院消化器科を経て、地元青森県で瓜田医院を開業。東邦大学医療センター大森病院総合診療・救急医学講座教授、院長補佐、副院長などを経て2018年より現職。専攻は内科学、総合診療医学、機能性消化器疾患、内視鏡医学、超音波医学、栄養代謝など。