
こちらの記事の監修医師
横浜新都市脳神経外科
院長 森本 将史 先生
てんいせいのうしゅよう転移性脳腫瘍
最終更新日:2021/11/18
概要
転移性脳腫瘍は、脳以外の臓器にできたがんが脳に転移した状態のことをいう。がん患者のおよそ40%が脳に移転するといわれている。また、全脳腫瘍の中でも、転移性脳腫瘍の確率は高くなっている。原発巣(がんのもともとできた場所)として最も多い部位は肺で、続いて乳房、その他に消化器系(大腸、胃など)などといわれているが、体のどこにできたがんであっても脳転移の可能性はある。人口の高齢化に伴って、患者の人数は増加傾向にある。もともとのがんが無症状のまま脳に移転してから発症し、がんが発見されるというケースもある。
原因
転移性脳腫瘍は、肺や大腸、胃などでできてしまったがんが、血液の流れによって脳にまで運ばれ、脳の中で増殖してしまうのが主な原因だ。脳腫瘍のなかでも、最も頻度の高い腫瘍とされている。また、血液からの流れで転移するという転移性脳腫瘍の特性上、脳の中でも特定の場所ではなく、どの箇所にでも転移する可能性はある。がんが運ばれてくる元の場所では異常がなかったにもかかわらず、脳に転移してから症状が出てくるというケースもあるため、はじめは原因がわからないが、詳しく検査し原発巣を探していくと、実は肺がんが見つかったということもある。また、転移性脳腫瘍の周りには脳浮腫と呼ばれる脳の腫れを生じることが多い。この脳浮腫が原因で、症状を引き起こしているということもある。
症状
腫瘍の大きさの分だけ頭蓋骨の中の圧力が高くなり(頭蓋内圧亢進状態)、脳が圧迫されるため、頭痛や吐気・嘔吐、意識障害などが生じる。これは、転移性脳腫瘍が頭蓋内圧亢進状態であるのか、局所症状であるのか、腫瘍そのものの大きさや位置によって、症状の出方は大きく変わってくる。また、腫瘍によって脳組織が直接損傷されると、損傷部位に応じて、手足のまひ、失語症(言葉が出ない、理解できない)、けいれん発作、めまいなどのさまざまな症状が出現する。これらの症状は一般に進行が速いのが特徴。他にも、てんかん発作や高次機能障害、精神症状などを同時に発症することもある。
検査・診断
画像検査で、腫瘍の位置や形、大きさを調べる。ある程度大きな腫瘍であれば、頭部のさまざまな角度から放射線を当て、頭を輪切りにした断面図を検査するCT検査でも発見は可能である。しかしながら、小さな転移性脳腫瘍を見逃さないためにはMRI検査が必須だ。MRI検査は、磁気によって画像を映し出す検査方法のため、放射線を使用することはない。脳内の欠陥部分まで見ることができるので、よく利用されている。それでもよく見えない場合は造影剤を静脈に投与して精度をあげた検査を行う。また、全身の他の場所にがんが転移していないかを調べるPET検査(陽電子放射断層撮影)を行うこともある。
治療
がんの治療には、抗がん剤を用いた化学療法を行うことが多いが、転移性脳腫瘍の場合、化学療法が効かないケースも少なくない。そのため治療は、手術による腫瘍そのものの摘出や、放射線治療(全脳照射、定位放射線照射)、抗脳浮腫薬(脳の腫れを抑える薬)などを状況に応じて組み合わせて行う。加えて、保存的治療を行い、頭蓋内圧をコントロールする。てんかん発作のコントロールも治療においては重要である。これらを中心に、転移性脳腫瘍の治療は進められていく。単発の転移性脳腫瘍や、多発でもその中に大きな腫瘍がある場合には手術を行い、腫瘍を摘出。放射線治療は、腫瘍が大きかったり数が多かったりする場合には全脳照射を行うことが多いが、治療可能と判断されれば、脳の限られた範囲に放射線を照射する定位放射線照射を行うこともある。
予防/治療後の注意
がんの治療中に症状が出現する場合や、検査で脳腫瘍が見つかり、転移性脳腫瘍が疑われる場合が多いため、もしがんの治療中に上記のような症状が出現した場合は、まずは主治医に相談することが大切である。乳がんなどの場合、完治したと思われたものでも、数年後に、突然脳に転移していることが発見されるケースもある。こういった場合でもきちんと治療をすれば治ることが多いので、あきらめずに前向きに治療に取り組んでもらいたい。

こちらの記事の監修医師
院長 森本 将史 先生
1993年京都大学医学部卒業。2002年同大学院医学研究科修了。同医学部附属病院、国立循環器病研究センター、Center for Transgene Technology and Gene Therapyでの勤務を経て、2010年に横浜新都市脳神経外科病院の脳神経外科部長に就任。2011年から現職。専門分野は脳動脈瘤、バイパスなどの血行再建手術、血管内手術などの脳血管障害、脳腫瘍。
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