
こちらの記事の監修医師
医療法人恵仁会 松島病院
宮島 伸宜 病院長
だいちょうがん大腸がん
最終更新日:2021/12/27
概要
大腸の粘膜から発生する悪性の腫瘍で、できる場所によって大まかに「結腸がん」と「直腸がん」に分けられる。大腸とひと口にいってもさまざまな部位があり、入り口から出口に向かって盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸S字部、上部直腸、下部直腸、肛門管で構成されている。そして結腸は盲腸からS状結腸まで、直腸は直腸S字部から肛門管までを指し、日本人の場合、大腸がんは特にS状結腸や直腸に発生することが多いといわれている。また男女ともに発症率が高く、患者数は40歳代から増加。その後、年齢が上がるにつれて罹患率は高くなる。
原因
大腸がんの発生には生活習慣、特に食生活との関わりが深いと考えられている。牛や豚、羊といった赤身の肉、ハムやソーセージなどの加工肉をよく食べる習慣や、低繊維・高脂肪の食事、過度な飲酒、喫煙は発症のリスクを高めるといわれる。さらに遺伝との関連性も指摘されており、家族に大腸がん、もしくは胃がん、子宮体がん、卵巣がんなどを患った人がいる場合は、がんになりやすい体質であることが疑われるので注意が必要。また、がん以外の疾患についても、家族性腺腫性ポリポーシスという、大腸に無数のポリープが発生する遺伝性の病気は、治療せず放置するとほぼ100%がんになるといわれている。なお大腸がんが発生する過程は、腺腫と呼ばれるポリープが悪性化するパターンと、最初から悪性腫瘍として発生するパターンの2通りがあると考えられている。
症状
初期の段階では自覚症状がまったくないというケースも多い。進行するにつれて、血便、下血、下痢や便秘を繰り返す、体重減少、継続的な血便や下血による貧血などさまざまな症状が現れる。がんが大きくなると、おなかにしこりを感じることもある。また腸閉塞を引き起こすこともあり、便が出なくなったり、腹痛や嘔吐に苦しんだりといった症状も見られる。これらの症状は、大腸の出口、つまり自分から見て左側に腫瘍があると早期から出始めることが多く、比較的気づきやすい。一方、大腸の入り口付近や中心辺りにある場合は腸が太いため症状が出にくく、腫瘍が大きくなってから発見されることも少なくない。
検査・診断
便潜血検査で便に血液が混じっていないかどうかを調べ、陽性であれば大腸内視鏡検査や注腸造影検査を行う。がんであった場合にはCT検査、MRI検査などによって腫瘍や大腸の状態を詳しく観察する。内視鏡検査では腫瘍の形や大きさ、色、広がり具合などを鮮明な映像で確認でき、注腸造影検査はがんの正確な位置や深さを調べるのに役立つ。そのほか、肛門から指を入れて直接しこりに触れる直腸指診、採血での腫瘍マーカー(がんによって増える血液中の物質)検査、腫瘍の一部を顕微鏡で観察する病理検査、放射性の薬剤を使ってがんの全身への転移を確かめるPET検査などを症例に応じて行い、転移の有無や進行度合いも含めて診断を確定する。
治療
治療は、がんの進行具合や患者の年齢、全身状態などを考慮しながら、適切な方法を選択する。比較的早期で転移の可能性が低い場合は、内視鏡を使って腫瘍を切除することが多い。具体的には、金属製の輪を腫瘍にかけて電流を流す方法や、粘膜を持ち上げて腫瘍を剥がし取る方法がある。一方、進行してがんの根が深くなり、リンパ節への転移が疑われる場合、周囲にある他の臓器にがんが広がっている場合などは内視鏡での手術は難しく、開腹手術か腹腔鏡手術となる。がんのある場所や転移の状態によって細かな方法は多少異なるが、基本的には腫瘍のある部分の腸管とリンパ節を取り、可能であれば他の臓器や組織の切除も検討する。腸管を切除したときは、残っている腸管とつなぎ合わせる。難しい場合は人工肛門をつくるがその頻度は減少している。また状態により、放射線治療や抗がん剤治療を併せて行う。
予防/治療後の注意
栄養バランスの取れた食生活、適正体重の維持、適度な運動、禁煙、節度のある飲酒を心がけることで、大腸がんの発症リスクを下げることができるといわれている。また、大腸がんは早期に発見できれば高い確率での治癒が期待でき、治療後の5年生存率も高い。そのため、定期的に大腸がん検診(大腸内視鏡検査・便潜血検査)を受け、小さな異常をできるだけ早く見つけることが大切。特に40歳を過ぎると発症率が高まるため、年に1回の検診が望ましい。

こちらの記事の監修医師
宮島 伸宜 病院長
1982年慶應義塾大学卒業。同大学病院や都内の総合病院などへの勤務を経て、2007年聖マリアンナ医科大学東横病院消化器外科へ入職。同病院長などを経て、2021年6月より現職。専門は消化器外科、一般外科、大腸・肛門疾患、腹腔鏡下手術など。日本外科学会外科専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、日本大腸肛門病学会大腸肛門病専門医。医学博士。
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