
こちらの記事の監修医師
習志野第一病院
三橋 繁 院長
だいたいこつけいぶこっせつ大腿骨頸部骨折
最終更新日:2021/12/27
概要
大腿骨は脚の付け根から膝までの太ももの骨で、付け根の部分は股関節を形作っている。股関節部分から膝に向かって骨頭、頚部、転子部、転子下と部位が分かれている。大腿骨頚部骨折は大腿骨頚部で起こる骨折であり、股関節を包む膜(関節包)の中で生じている。骨頭は軟骨に覆われ表面からの血流がないため、大腿骨頸部に骨折を生じると骨頭部分に血流の障害が生じていることも多い。股関節付近で生じる骨折には大腿骨頚部骨折の他に大腿骨転子部で生じる大腿骨転子部骨折があり、合わせて大腿骨近位部骨折と呼ぶ。
原因
大腿骨は体の中で最も大きな骨で、体を支えて移動する目的で頑丈にできている。しかし、大腿骨頚部は湾曲しており、構造的に外からの力が加わりやすい弱点がある。年をとって骨粗鬆症などにより骨がもろくなると、軽く転んだだけ、ひねっただけといった些細なけがで骨折してしまう。大腿骨頚部骨折は骨の弱い方、特に高齢の女性に多く生じる。
症状
大腿骨頚部骨折が生じると、脚の付け根に痛みを感じ、立ったり歩いたりができなくなることが多い。仰向けの状態からの膝立てや足を持ち上げる動作ができないことが多い。不全骨折で痛みを伴うもののある程度動ける状態が起こることがあるが、多くは進行して完全骨折となる。十分な体動、座位や寝返りができなくなることも多く、肺炎や褥瘡、下肢静脈血栓症などを生じて生命の危険を生じたり、認知症を発症・悪化したりすることがある。残念ながら合併症による死亡率は高く、米国では受傷後1年で30%、本邦では11%の方が合併症などで亡くなっている。
検査・診断
高齢者が転倒して歩行不能の症状を訴えた場合、大腿骨頚部骨折などを疑って検査を行う。骨の形状を確認するためにエックス線検査を行ったり、不全骨折の有無を確認するためにMRI検査を行ったりすることもある。骨の形状のより細かい評価をCTを用いて行うこともある。
治療
症状で述べたように骨折後治療が遅れると合併症が生じ全身状態が悪化するため、なるべく早期に治療することが推奨されている。大腿骨近位部骨折治療のガイドラインに示されているが、治療は不全骨折を含めて観血的治療(手術)が推奨されている。手術は骨同士を金具で固定する骨接合術や、大腿骨頭を取り替えてしまう人工骨頭や人工関節手術が行われる。骨折の原因となった骨粗鬆症を治療してさらなる骨折を生じないようにする、脆弱性骨折の二次予防という治療も行われる。これは、食事・薬剤・運動・転倒予防を含む、年余にわたる予防治療である。
予防/治療後の注意
治療後は歩行や移動の問題が生じないように早期より積極的にリハビリをすることが必要である。1日寝ているだけでも筋力は3%低下するといわれており、治療後早期に運動することが生活の質を悪化させないため、合併症を予防するために極めて重要。

こちらの記事の監修医師
三橋 繁 院長
1992年千葉大学医学部卒業後、同大学の整形外科に入局。2001年から米国Anderson Orthopedic Institute に研究員として留学し、人工関節手術の研鑽を積む。2016年から現職。東邦大学医学部の客員講師として難症例の治療にも携わる。日本整形外科学会整形外科専門医。
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