
こちらの記事の監修医師
公益財団法人日産厚生会 玉川病院
膠原病・リウマチ科医長 楠田 岳 先生
ぜんしんせいきょうひしょう全身性強皮症
最終更新日:2022/01/06
概要
皮膚やさまざまな臓器が硬くなってしまうこと。難病に指定されている末梢循環障害も伴う膠原病の一つ。発症する人のほとんどは、30~50代の女性。ごくまれに、子どもや70歳以降の高齢者が発症することもある。人によって症状の種類や重症度などは異なり、発症から5~6年以内は進行を続ける「びまん皮膚硬化型全身性強皮症」と、進行がほとんど見られない軽症型の「限局皮膚硬化型全身性強皮症」に分けられる。「びまん皮膚硬化型全身性強皮症」の場合、発症から5~6年が経つと自然と皮膚の硬さは戻ってくるが、内臓病変はもとに戻らないという特徴を持つ。なお、皮膚だけが硬くなってしまう「限局性強皮症」もあるが、これは「限局皮膚硬化型全身性強皮症」とは異なる病気。
原因
現時点において、明確な原因はわかっていない。自ら抗体をつくり出し、自分の組織を攻撃してしまう「免疫異常」と、細胞と細胞をつなぐ結合組織である線維芽細胞が活性化してしまう「線維化」や「血管障害」などが関連しているとされる。しかし、これらが発生する原因やメカニズムなどは、まだ明らかになっていないため、決定的な原因の特定はできない。なお、遺伝はしないが、病気にかかりやすいかどうかを決定する遺伝子との関連性は疑われており、ほかにも環境的な要因も関係すると考えられている。
症状
初期の症状として最も多いのは、レイノー症状。これは冷たいものに触れたり、緊張やストレスを感じたりすると、手足の指先が蒼白したり、紫色や赤色に変わったりしていく症状のことをいう。また、「びまん皮膚硬化型全身性強皮症」の場合、レイノー症状と並行して、皮膚の硬化も進んでいく。具体的には、手指の腫れぼったさやこわばりを感じることから始まり、症状が重症化すると、体の中心である体幹に向かって皮膚の硬化が進んでしまうことに。さらに、それに伴い、心臓や肺、腎臓、消化管など、内臓にも病変が生じてしまう。しかし、発症から5~6年が経つと自然と皮膚の硬さは戻ってくるが、内臓病変は元に戻らないという特徴も。その一方、「限局皮膚硬化型全身性強皮症」の場合、レイノー症状が数年~数十年続いた後に、皮膚の硬化が現れてくる。そのほか、手指が曲がったままになる屈曲拘縮、不整脈、関節痛、便秘、下痢などの症状が出てくることもある。
検査・診断
全身性強皮症は、多臓器疾患である膠原病の一つ。そのため、さまざまな検査を通して診断をしていかなければいけない。例えば、問診・視診では、レイノー症状の有無や皮膚の硬化、手足のこわばりなどをチェック。加えて、ほかのさまざまな内臓に病変がないかを調べていくために、血液検査や尿検査、皮膚生検、エックス線検査などを行い、全身の状態を確認する。また、毛細血管の異常がないかを把握するために、爪郭部毛細血管ビデオ顕微鏡を用いた検査を行うこともある。
治療
まだ解明されていない部分が大きい病気であることから、根本的な治療法はわかっていない。そのため、病気の進行を防ぐための対処療法として、基本的には薬物療法を行っていくことになる。具体的には、主にステロイドや免疫抑制剤などを処方。そのほか、レイノー症状や皮膚潰瘍には血管拡張薬、関節痛には鎮痛薬、肺高血圧症には肺血管拡張薬、逆流性食道炎には制酸剤(胃腸薬)、腎クリーゼにはACE阻害薬などを処方していく。
予防/治療後の注意
治療内容によっては、体の抵抗力を弱めてしまうことがあるため、手洗いやうがいなどの感染対策を心がけていくことが大切になる。また、血行を悪化させてしまうため、喫煙は行わないこと。ほかにも、定期的に胸部エックス線検査やCT検査、肺機能検査などを行い、病状を確認していくことも重要になる。

こちらの記事の監修医師
膠原病・リウマチ科医長 楠田 岳 先生
2008年三重大学医学部卒業。日本リウマチ学会リウマチ専門医、日本内科学会総合内科専門医。専門分野は膠原病一般、関節リウマチ。
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