岩屋 美奈子 院長、岩屋 悠生 先生の独自取材記事
いわや小児科クリニック
(福岡市西区/姪浜駅)
最終更新日:2026/05/28
子どもの成長を見守る、温かいまなざしが印象的な「いわや小児科クリニック」の岩屋美奈子院長。自身の子育て経験から、「悩みや不安を抱える保護者に、小児科医そして先輩ママとして寄り添いたい」と、地域に根づいたぬくもりある診療を心がけているという。2025年からは長男の岩屋悠生(ゆうき)先生が、子どもの発達相談の外来をスタート。日本小児科学会小児科専門医の資格取得後に九州大学精神科神経科へ入局し、現在は九州大学病院「子どものこころの診療部」に所属する悠生先生が、6歳以上を対象に、発達に関する相談や学校での困り事、不登校の悩みなどに応じている。「1人で悩まず、気軽に相談してほしい」と口をそろえる2人に、同院の診療方針や新設した発達相談の外来について詳しく聞いた。
(取材日2024年2月20日/再取材日2026年4月25日)
子育て経験を踏まえ、親子の笑顔を守る温かい診療を
院長はなぜ、小児科医をめざされたのですか?

【岩屋院長】小学生の頃、立派な科学者であり、一人の妻、そして母でもあったキュリー夫人に憧れていました。家庭を持ち、子育てをしながらも社会の役に立つ研究に取り組む懸命な姿に心を打たれたのです。近代日本における最初の女性医師といわれる荻野吟子の小説に出合ったことも、大きなきっかけとなりました。小児科を専攻したのは、「女性医師に担当してもらえて良かった」と言ってもらえる科を専門にしたいと思ったからです。九州大学医学部を卒業後は、福岡市立こども病院をはじめ数多くの基幹病院で幅広い診療にあたり、障害児を中心に療育サポートを行う療育施設の園長を務めた経験もあります。そして1997年、地域の第一線に立ち、もっと近くで親子の笑顔を守りたいという思いで開業しました。
ご自身の子育て経験を踏まえて、親御さんへのサポートも大事にされているそうですね。
【岩屋院長】私自身、2人の子どもを生後4ヵ月から保育園に預けて勤務医として働いてきましたので、仕事を終えてから病気の子どもを抱え、閉院寸前の病院に駆け込んだ日々は忘れられません。小児科医である私が実際に子育てをしながら感じたのは、子どもの成長・発達や病気は、まったく教科書どおりにいかないということ。高熱の子どもをあやしながら感じる不安、ぐずる子どもに薬を飲ませる苦労、思い描いていた子育てができない自分への不満……。そうしたものが募りつつも、わが子の笑顔や寝顔から無限大の幸福を与えてもらっていました。私もいろいろな経験や失敗をしてきたからこそ、今、子育て真っ最中の親御さんの不安や負担を解消できるような助言やサポートができればと思っています。
予防接種についても相談に乗っていただけるのですか?

【岩屋院長】もちろんです。母子手帳には予防接種のプラン表がついていますが、ワクチンを受けるべき年齢、同時接種できるワクチン、ワクチンとワクチンの間隔などとてもややこしいので、気軽に相談してください。副作用のない絶対安全な予防接種はないかもしれませんが、その病気にかかった時の重篤さ、合併症や後遺症の問題、ほかの人にうつしてしまう危険性を考え、行政や日本小児科学会が勧めています。生後2ヵ月目からワクチンデビューして、しばらくは4週間ごとのワクチン通院になります。その際はミニ健診のつもりで、心配事は何でも医師に尋ねてください。今インターネットには情報があふれており、間違った情報に親御さんが惑わされることのないよう、エビデンスに基づいた育児のサポートをしていきたいと考えています。
「子どもの発達相談」専門の外来を開始
子どもの発達に関する相談を専門に受ける外来をスタートされたそうですね。
【悠生先生】毎週土曜日の診療時間内に、今のところ30分だけですが、発達相談専門の外来を開始しました。対象は原則6歳以上です。就学前にはっきり診断を受けたり、専門支援機関にフォローされたりしていないけれど、小学校に入ってから「授業についていけない」「友達とのトラブルが非常に多い」など、お子さんご本人やその周囲に困る機会が現れるようになって、ちょっと心配だなという方は、どうぞ軽い気持ちで大丈夫ですから一度ご相談ください。私は小児科専門医資格を取得した後、現在は児童精神科の研鑽を積むため、平日は九州大学病院の「子どものこころの診療部」などで診療にあたっています。最近は、子どもの発達相談を受ける児童精神科の受診は数ヵ月待ちという病院やクリニックが多く、私も勉強中の身ではありますが、その受け皿として少しでもお役に立てればと思っています。
具体的にはどのような診療を行うのでしょうか?

【悠生先生】専門的な検査ができるわけではありませんが、お子さんご本人や親御さんのお話を伺って、発達の特性について見極めたり、周囲の環境や関わり方を助言したり、やはり児童精神科を受診したほうが良いのか、見守りで良いのか判断したりと、最初のステップとなる診療に取り組んでいます。お子さんの年齢によりますが、小学校低学年であれば「何年何組なの?」「好きなことある?」など一般的な日常会話を交わします。こうした診察室での様子は、発達障害、今は「神経発達症」ともいいますが、その診断の手がかりになります。私が心がけているのは、診察がお子さんにとってストレスにならないようにすること。無理やりいろいろ聞かれたとか、言いたくないことを聞き出そうとされたなどと感じることがないように、お子さんには「言える範囲で大丈夫だよ」「来てくれただけでありがとう」と伝えたいです。
相談のタイミングについて教えてください。

【悠生先生】理想は「小学校入学前に相談」です。ご本人や親御さんへの支援は早ければ早いほうが良いですし、保健所や療育センターなど受け皿がたくさんありますから。しかし就学前は問題が顕在化しなかったお子さんが、小学校に入ってつまずく、高学年になるに従って周囲についていけなくなる、というケースはよくあります。一番避けたいのは、環境との不適応によってお子さんが自信を失ってしまうことです。学校でうまくやれていないようだ、とわかった時点で早めに相談していただければ、私も一緒に考えていくことができます。
重要なのは診断ではなく、環境調整につなげること
不登校の相談も受けているとか。

【悠生先生】小中学生の不登校はとても増えていて、私もよく相談を受けますが、はっきりとした原因はよくわからないことも多いです。発達の特性が関わっていることもありますが、一概にはいえません。不登校になっているご本人はもちろんですが、学校に行かせたい親御さんが焦って追い詰められているケースもあるので、親御さんへの支援も重視しています。親子関係がギクシャクして、どうお子さんに接していいかわからないという場合も、私が間に入ってクッション材になれたら。親にも友達にも言えないことでも、この先生なら話せると思ってもらえるような、身近な相談相手になれたらうれしいです。
学校側と連携する場合もありますか?
【悠生先生】ケースバイケースですが、学校から問い合わせが入ることもありますし、当院としても発達の特性を診る上で学校での様子を知ることは必要なので、親御さんを通して学校へお手紙を渡していただくこともします。重要なのは、注意欠如多動症、自閉スペクトラム症、学習障害など「神経発達症」の診断がつくかどうかではなく、その子の特性を周囲が理解することで支援体制につながり、環境調整しやすくなることだと思います。環境がお子さんにとって保護的なものに変われば、それまでご本人や周囲の困り事の原因になっていた特性が目立たなくなることも期待できます。
最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

【岩屋院長】子どもは痛みや不安をうまく表現できません。でも、常日頃から診ているかかりつけのお子さんであれば、熱は高くても元気はあるから心配ないとか、逆にいつもと違う、何かおかしいと気づくことができます。「かかりつけ医」としての大きな役割は、まれな病気の診断をすることではなく、お子さんを診たときに、第一印象で重篤な疾患か否かを見抜き、必要最低限の検査で早めの対応をすることだと思っています。日頃からお子さんのことをよく知っておいてもらえるかかりつけ医を、ぜひつくってください。
【悠生先生】今後も児童精神科の研鑽を積み、将来的には当院は「子どもの心と体の両面を、専門的に診ることができるクリニック」として成長していきたいと思っています。地域の皆さん、お子さんのことで心配事があれば何でもご相談ください。

