将来の健康を決める幼小児生活習慣病
周囲の気づきと支援が大切
青木内科循環器科小児科クリニック
(福岡市西区/姪浜駅)
最終更新日:2023/09/21
- 保険診療
一生の健康はいつ決まるのか? 成人の糖尿病、心筋梗塞、高血圧などのスタートは胎児期にあるともいわれる。特に低出生体重児や幼児肥満の子は高リスクとされ、リスクを知って健康に育つための工夫が大切。だが幼児肥満が継続したり、小学4~6年生で急激に肥満する子が増加中だそうだ。その主因は、食習慣の偏りや感染症流行下の生活リズムの乱れ、ゲーム中心の室内遊び、そして心の問題にあるという。「幼小児肥満は生活習慣病の予備軍。すでに健康障害が起きている場合もあります」と注意を促すのは、自身も子育て経験のある「青木内科循環器科小児科クリニック」の青木真智子副院長。「最重要なのは痩せることではなく、健康な体や生活をめざそうとする勇気」と述べる副院長に、幼小児肥満・やせの基礎知識や同院の取り組みについて聞いた。
(取材日2023年1月26日)
目次
子どもの肥満ややせで重要なことは、健康な体や生活をめざそうとする勇気と、周囲の理解と支援
- Q子どもの肥満ややせなどが増えていると伺いました。
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A
小児肥満は小児生活習慣病の予備軍でもあり、すでに脂肪肝、高脂血症、高血糖、高血圧などの健康障害が起きている場合もあります。動脈硬化に由来する病気である心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすリスクが複数ある「小児メタボリックシンドローム」の診断基準を満たすお子さんもいます。肥満はその入り口にすぎません。思春期やせも同様です。背後にあるのは生活習慣など、子どもを取り巻く成育環境の問題ですので、医師は環境因子に心を砕く必要があると思っています。肥満は日々の積み重ねによってなっていき、やせは気づかないところで生じます。その点を親子で認識し、できることから始め時間をかけて改善を図っていく必要があると考えています。
- Q放置してしまうと将来的にどうなるのでしょうか?
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A
肥満は、糖尿病、高血圧、腎臓病などの病気につながります。社会問題化している重症肥満、メタボリックシンドロームも大人になって突然なるものではなく、幼小児期に端を発していることもあります。血管が傷んだ時間の長さが問題ですし、家系的な要素が関連する場合もあります。動脈硬化の怖いところは気づきにくい点で、無症状で進み進行するとさまざまな病気が発症します。大人になって生活習慣を改めるのは容易ではないため、早期に改善に取り組んで家族全員の健康につなげていただきたいです。またやせのうちで、神経性やせ症は死亡率の高い病気です。早期発見が一番の治療となりますが、まだ世の中の認識が遅れています。
- Q受診するタイミングなど、アドバイスをお願いします。
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A
乳幼児の場合、成長曲線のカーブに沿って成長しているかの確認が大事です。急激な体重増加、その逆の低栄養も要注意です。最近特に多いのが鉄と亜鉛の欠乏。脳が大きく形成される乳幼児期に鉄不足だと、後で補っても遅い可能性があります。成長曲線の傾きがカーブに沿ってない、栄養状態が気になる、乳幼児健診で指摘を受けたという場合は早めに受診してください。また睡眠不足とスマホ任せの子育ても、脳の発達への影響が懸念されます。しかし核家族化が進んだ今、孤独に子育てに悩む親御さんも少なくないでしょう。そんなときは遠慮なくご相談ください。学童の場合は、学校健診で勧告があったら必ず受診を。そのチャンスを逃さないことです。
- Q具体的な検査方法や取り組みについても教えてください。
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A
身長、体重、腹囲を測定し、腹囲(おへその回り)が身長の半分以上の場合は、内臓脂肪が多いです。これは子どもに限らず全世代共通です。次に血液検査。肝機能、中性脂肪、コレステロールなどの数値を見て、体に異常がないか調べます。やせも同様です。取り組みの基本となるのは食事療法と運動療法と行動療法です。食べた量と消費量のバランスが大事です。家族の応援を得て、自分の健康を考える力を養います。小学1年生の時点で肥満症だと、高学年でも肥満症であるリスクが上がるので、就学前の取り組みも大切になります。やせの場合、他の病気が隠れていないかを検査し、経過を追ったり、必要な場合は専門機関へ早期に紹介します。
- Q講演など院外活動も精力的に行われているそうですね。
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A
小児生活習慣病について講演する機会が多く、低出生体重児や肥満の幼小児には将来数多くのリスクがあると心を込めて伝え、行動につなげてもらう必要性を感じています。例えば低出生体重児が誕生後に栄養過多となると、成人期の糖尿病や高血圧などにつながる恐れがあることが証明されています。つまり、小さく生んで大きく育てるのは問題です。福岡市医師会では、医師会主導のもと小児生活習慣病検診を小学4年次学校健診の一環で行っています。さらに現代では、いじめや不登校、家庭内トラブルなど心の成育に関わる問題も急増していますから、今後も小児科医として院外でもできる限りの活動をしていきます。