“より良い人生を歩んでほしい”
全世代の女性に向けた体の話
いつきウィメンズクリニック
(福岡市中央区/西鉄福岡(天神)駅)
最終更新日:2023/03/08
- 保険診療
「あなたはどんな人生を歩みたい?」と、全世代の女性へ問いかけを続けるのが「いつきウィメンズクリニック」の理事長、城田京子先生だ。「生理やピルへの理解は年々深まっていますが、まだ足りないと感じています。それは日本の文化が性をタブー視しがちで、誤った思い込みが多いことにも起因するでしょう。だからと言ってそこで立ち止まっていては、人生をより困難なものにしかねない。それを女性自身が知る必要があるのです」と、情熱的に語る。理事長の根底にある願いは、すべての女性が納得できる人生を送ること。そのためには思い込みを捨て、正しい知識をつかむ行動力も必要だ。優しくひたむきな理事長に、女性特有の健康問題とそれを取り巻く現状、女性が力強く生きるための心構えなど、詳しく話を聞いた。
(取材日2022年3月18日)
目次
生理をはじめとした“女性の体”に関わる正しい知識を持つことが、女性が自立して生きるための第一歩
- Q女性が、もっと自らの体について理解する必要があるとか。
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A
生理が最も順調な20代から30代前半は、月経前にはPMS(月経前症候群)、月経中は月経痛などさまざまな不調が伴います。また、妊娠適齢期とされるこの時期は、ちょうどキャリアを積み重ねていく時期。仕事が楽しい一方で、体は年齢とともに変化し、若返ることはありません。50歳前後になると更年期で月経は不順になります。このライフステージごとの体の課題とその時々の過ごし方について、多くの女性が意識しないようです。生理や閉経といったホルモンの変動によりどんな不調があるのか、家族や周囲の方々に「わかってよ!」ではなく、具体的に説明できるくらいに、女性自身が体の仕組みを理解する必要があるのだと思います。
- Q高校で性教育の講演を行われたそうですね。
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A
はい。男子生徒から「生理がそんなに大変だとは知らなかった」、「女子にもっと優しくしようと思った」という優しい感想、男女双方から「両親に感謝した」という言葉もあり感動しました。相手を思いやるにも知識が必要な証です。ただ、同じ内容を大人に話した際も、初めて聞いたという感想が多く、危機感を覚えました。社会人が性教育の内容を知らないのでは社会が変わらないわけです。日本は文化的に、学校や家庭で性の話をしませんね。大人側が知識に自信がなくて話せない側面もあるのではないでしょうか。知らないから教えられず社会が変わらない。この悪循環を断つために、私たち産婦人科医がお役に立てるのなら、今後も続けていきたいです。
- Q各世代特有の婦人科疾患には、どのようなものがありますか?
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A
10〜20代に多いのは性感染症、20〜30代は子宮頸がん、その後子宮内膜症と子宮筋腫、50歳頃には更年期障害が増加します。中でも私が危惧するのは、月経異常の軽視です。日中に夜用ナプキンを使うほど経血が多いとか、用量ギリギリまで痛み止めが必要なのは病気のサインである可能性も。しかし、徐々に慣れてしまい、自分の生理痛や不調は「普通」と思っている方が多い。自分の体への気遣いが足りずに子宮内膜症の重症化やがんの診断の遅れにつながることもあります。歯が痛ければ歯医者さんへ行くように、不調があれば専門家である婦人科に相談し、周囲の意見やネット上の誤った情報による思い込みや間違った判断は避けてほしいですね。
- Q結婚には適齢期がなくても、妊娠には適齢期があるのですね。
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A
男性は50代、60代でもお子さんが生まれたという話を聞きますよね。しかし女性は30代後半には妊娠する力が低下し始め、40代では体外受精をしても妊娠率はかなり低くなります。もちろん子を持つことは必須ではありませんが、子を産み育てることを望むのなら20代、30代をどう過ごし、「人生をどう生きるか」という人生設計に、正しい体の知識は欠かせません。それと同じくらい、子を望まない場合の避妊や、40代、50代での老年期に向けた健康管理も大切です。正解はなく本人によるオーダーメイドなので、自由に自分らしく生きるためには、人任せにしないで真剣に取り組んでほしいと、いつも思っています。
- Q自分の体に興味を持ち、正確な知識と自ら考えることが大切だと。
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A
女性特有のライフイベントとして出産や更年期があります。日本では、残念ながらこれらを契機に女性がキャリアを諦めることも多いのが現状です。社会が変わるのを待っていては、後に結婚・出産・キャリアについて後悔する可能性も。そうしないために学生時代から性と体を理解し、ライフプランを立てることが肝要です。知っている土地では道に迷わないのと同じで、自分の体について正しい知識があれば、人生においても必要な時に周りに助けを求めたり、慌てず納得のいく判断ができるでしょう。自身の体と人生を守るために、自分の立ち位置を、時にはカーナビのように婦人科で確認するような意識を持つといいでしょう。