城田 京子 理事長、鋤本 祥子 先生の独自取材記事
いつきウィメンズクリニック
(福岡市中央区/西鉄福岡(天神)駅)
最終更新日:2023/03/02
生理(月経)痛は病気ではない……そんな風潮が変わり始めている。婦人科の治療に低用量ピルの使用が認められた、その頃から月経痛や子宮内膜症に向き合い、時代の変遷を感じてきたのが「いつきウィメンズクリニック」の城田京子理事長だ。「生理に振り回されず、うまくコントロールして生活してほしい」という言葉は、数々の手術や患者の悩みと向き合ってきた理事長の切なる願いともいえる。医師は城田理事長と、鋤本祥子(すきもと・さちこ)先生の2人。院内は天神の喧騒を感じさせない、静かで落ち着いた空間。患者同士の視線が合いにくい造りになっており、足を運びやすい工夫がなされている。城田理事長と鋤本先生に、これまでの道のりやすべての女性に伝えたい思いをじっくりと語ってもらった。
(取材日2020年11月30日/再取材日2023年1月30日)
月経痛は大したことない、という思い込みを払拭したい
医師をめざしたきっかけをお聞かせください。
【城田理事長】自分が子どもの頃に入院し、そこで医療を目の当たりにして興味を持ちました。薬剤師や看護師とも迷いましたが、入院時の主治医の先生に相談したところ、「決定権があるほうが楽しいよ」とアドバイスをいただいたんです。でもその言葉の意味が本当にわかったのは、40歳を超えた頃でしたね。医師になりたての頃は先輩の先生についていくので精いっぱいでしたが、5年10年と経験を積み、自分が判断する側に立つと「こういうことか」と実感しました。判断には責任も伴いますが、その重みを教えてくれた主治医の先生とも2年ほど前に再会し、「先生のおかげで今こうして医師をやっています」とお礼を言うことができました。
鋤本先生のきっかけは何だったのでしょう。
【鋤本先生】私の場合は、父が婦人科の医師でしたので、幼い頃から「お医者さん」が身近な存在で、父の働く姿を見て自然と医師を志すようになり、大学を卒業後は、父と同じ婦人科の道に進んでいました。福岡中央病院(旧福岡逓信病院)・福岡赤十字病院などで勤務し、一般婦人科疾患の治療や分娩にも多く携わりました。命の誕生は奇跡の連続で、経験できて本当に良かったと思っています。その後、城田先生とともに診療するようになり現在に至りますが、以前分娩を担当した患者さんが来てくれることもあり、うれしく感じています。
長年診療を続けてこられたからこそ感じる変化もあるのでは?
【城田理事長】大学病院では子宮内膜症などの腹腔鏡手術も行っていましたが、月経困難症をともなうなど手術だけでは対処しきれない症例も多く、そういう時に活用するのが低用量ピルです。低用量ピルは1999年に避妊薬として承認され、その後、月経困難症の治療にも用いられるようになりました。以前は子宮内膜症が疑われるような重い月経痛があっても、それだけで受診する人は少なく、子宮内膜症が進行してしまっているケースもありましたが、近年はピルについてかなり認知され、月経痛がつらいからクリニックに行こうという方も増えてきました。とはいえ、それでもまだまだ我慢している人は多いんです。
確かに「月経は痛いものなんだ」という風潮はありますね。
【城田理事長】まさにそこが課題です。「月経痛はみんなある」「痛みは気合で乗り越えられる」なんて意見にさらされ、女性なのだから仕方ないと引け目を感じているうちに、子宮内膜症が進行してしまうこともあり得ます。痛みは他人とは比較できませんが、過去の自分とは比較できます。「夜用ナプキンを昼も使うようになってきた」「5年前より痛み止めを飲む頻度が増えている」などの変化に気づいたら、少しでも早く婦人科の門をたたいてください。これは子宮内膜症の手術をたくさん行ってきた立場だからこそ言える言葉です。痛みがあることは、普通じゃないんです。
気軽に体のケア・相談ができる場所でありたい
自分の物差しで勝手に決めつけないということですね。
【城田理事長】そうです。インターネットが発達した今感じるのは、例えば「ピル」を検索したいときに「ピル 副作用」と関連したワードが出てくることで誤解が生じる危険性です。ピルだけで調べればどのような病気・症状にどう作用するのかがフラットにわかるのに、余計な単語があることで検索結果が狭まり、情報に偏りが生じてしまうのです。専門家として、薬の情報を適切かつ客観的にお伝えするのが、私たちのようなクリニックの医師の役目だと感じます。
クリニックの診療体制と、通っている患者さんの層について教えてください。
【城田理事長】火曜と木曜は鋤本先生で、それ以外の曜日は、私が診療を行っています。患者さんの中には、大学病院時代からお付き合いさせていただいている方もいますよ。同じ先生だと安心だと感じてくれているのでしょう。長いお付き合いになると、お子さんを出産されたことも、親御さんのことも存じ上げているので、まるで親戚のように感じます。患者さんの年齢層は幅広いです。20〜30代のオフィスワーカーの方もいれば、年配の方もいらっしゃいます。西鉄福岡駅が近いですから、西鉄天神大牟田線の終点である大牟田からはるばる足を運んでくださる方もいるんですよ。お悩みも、月経痛・PMSから更年期、子宮脱まで、年齢によってさまざまですね。
診療コンセプトと、診察時に心がけていることをお聞きします。
【城田理事長】「女性のための健康サポートクリニック」が、私たちが掲げるテーマです。私は以前、大学病院で症状が重症化した患者さんたちの手術を行っていました。しかし、私が医師になった時にめざしたのは、「いつでも患者さんが来てくれてなんでも相談できる、患者さんに一番近い“防波堤”になる」ことだったはず。そう気づいて、このクリニックを開業しました。若いうちから体のメンテナンス・ケアを年に1回でいいから気軽に行える場所。それがこのクリニックであってほしいと思います。
【鋤本先生】診察時の心がけについては、いかに患者さんにわかりやすく伝えるかに配慮しています。症状や病気についての説明、それに対する今後の治療方針をお話しする時も、できるだけわかりやすい言葉選びを意識しています。
月経で悩まず、女性が生きやすい世の中に
おしゃれな内装に先生のこだわりを感じます。
【城田理事長】2年ほど前に改装をしました。待合室とドアの間にはすりガラスを設けて、中が直接見えることはないですし、おしゃれだと言ってもらえる窓際のカウンターも、患者さん同士が顔を突き合わせないようにと思ったんです。ああやって外を向いていると、気晴らしにもなりますし、入ってきた方と必然的に顔を合わせない状態になりますから。知らない方とばっちり目が合って気まずい、なんてこともないですからね。ほかにも間接照明を取り入れたり、子どもさんが喜びそうな絵を飾ったりと、居心地の良い空間になるよう工夫しています。
婦人科ですと内診に抵抗がある方もいるのでは?
【城田理事長】そうですね。ですからまず、産婦人科での診察の経験があるかを確認しますし、経腟エコーの場合はどういう仕組みになっているかを説明します。経腹エコーもありますから、10代の若い方であればそちらを使用しますし、まずはご本人の希望をお聞きします。ただ、得られる情報量でいえば圧倒的に経腟エコーのほうが豊富です。当院では漢方薬も取り扱っていますが、ホルモン剤にしても、漢方薬にしても、患者さんに選択肢を提示することが大事だと考えます。それぞれのメリット・デメリットを理解していただき、症状の変化があるならそれらも踏まえた上で、ご自分の生活に合うのはどれなのか、患者さん自身に選んでもらっています。
読者へのメッセージをお願いします。
【鋤本先生】昔に比べ、婦人科に通うハードルは下がっているとは思いますが、初めての方は不安を感じることもあるでしょう。でも、検査をして何も異常がないことがわかればそれで安心ですし、案外「こんなものか」と思うかもしれません。自分の体を整えるための場所だと思って来てくださるとうれしいです。
【城田理事長】私もここまで生きてきて閉経世代にもなり、一通りの女性の悩みも経験しました。医師としても人生の先輩としても相談に乗れると思いますので、一人で悩まずに足を運んでみてください。「今日は先生に会いに来ただけ」ということでもでもいいですよ。月経に振り回されるのではなく、うまくコントロールしながら、生きやすくなっていただければ、こんなにうれしいことはありません。かしこまらず、行きつけのコーヒーショップに行くような感覚で、いつでも気軽に来院してくださいね。