デリケートな肛門疾患は
早期発見・早期治療が肝心
かもりクリニック
(福岡市東区/舞松原駅)
最終更新日:2024/10/11
- 保険診療
老若男女を問わず罹患する可能性のある痔。デリケートな部分の疾患であるために、医療機関を受診せず市販薬でやり過ごしているという人も多いのではないだろうか。またひと口に痔と言っても、切れ痔(裂肛)、イボ痔(痔核)、穴痔(痔ろう)と種類がある上に、それぞれ治療方法も違うため、専門家による適切な診断が欠かせない。加えて痔ろうに関しては放っておくとがんになる可能性もまれにあるため、早期発見・早期治療が重要だ。そこで今回は肛門疾患の治療に携わる「かもりクリニック」の家守智大先生をインタビュー。痔を中心とした肛門にまつわる疾患をはじめ、痔の治療法や予防法などについて詳しく話を聞いた。
(取材日2021年9月16日)
目次
デリケートな肛門疾患は市販薬でごまかさずに専門家の受診が肝要。早めの治療から重症化を防ごう
- Q肛門に関する疾患にはどのようなものがあるのでしょうか?
-
A
肛門は一応消化器に属するものの、組織には肛門上皮と呼ばれる皮膚も含まれ、その構造も特殊であるために、非常にデリケートなところです。排便のために毎日使う部分ですから、日々の習慣の積み重ねなどによって幅広いトラブルが起こりやすい場所だと言えるでしょう。代表的な病気として痔が挙げられますが、肛門が切れてしまう切れ痔、肛門の外にできる外痔核と内側にできる内痔核があるイボ痔、そして皮膚や筋肉の下にばい菌によるトンネルができ炎症を起こす穴痔といくつか種類があります。ほかにもがんや皮下に膿がたまる膿皮症、あるいは性感染症で肛門の周りにいぼができるコンジローマなどさまざまな病気が見られる部分になっています。
- Q痔をはじめ肛門疾患になりやすいのはどういう方ですか?
-
A
痔を中心にお話ししますが、まずは妊娠出産を経験された女性は、一度は痔に悩まされた経験があるのではないでしょうか。中には市販薬でやり過ごしている、という方も多いと思います。痔は老若男女問わず罹患する病気ではありますが、排便習慣や生活習慣が原因となるケースが多いので、40代から50代になると増えていきます。他にも便秘がちな人で排便の時にいきんでしまう癖がある方は、特にイボ痔のリスクが高まります。お尻の中は肛門上皮の部分と腸粘膜の部分があり、腸は痛みの神経がないために、奥にできる疾患に関しては痛みを伴いません。一方、外側に近いところにできる切れ痔などの疾患については、痛みが起きやすい傾向にあります。
- Q悩んでいる方も多い痔。こちらではどのような治療ができますか?
-
A
種類によっても違いますが、急に肛門の外側にできる血栓性外痔核については、診療当日に切除を図れます。内痔核は大きさや症状によって変わりますが、座薬や注射による治療もあるものの、最も成果が期待できると考えられるのは、切開して患部を取り除くための手術になります。切れ痔に関しては軟膏を処方して治療していきますが、何度も繰り返していると皮膚が厚くなり肛門が狭くなるケースも。そうすると結果的に手術を行うことが必要になっていきます。穴痔については自然と良くなることはないので、基本的には切開をしてばい菌のトンネルを取り除く必要があります。繰り返しているとがんになる可能性もあるので必ず治療しなければなりません。
- Q検査から手術までの流れを教えてください。
-
A
まずはお尻の状態を確認して、触診を行います。ここがほかの診療科と最も違う部分だと思うのですが、触診が非常に大切です。そして肛門鏡という特殊な道具を肛門に入れて中を見ていきます。基本的にはこれらの対応で診断がつきますが、目と指で調べていくので、知識と経験が求められる領域だと思います。ただし出血などがある際には下部内視鏡検査を行い、大腸にがんなどの異常がないかを調べたほうが良いでしょう。検査の結果、手術による治療が必要ということになれば事前に血液検査や心電図検査を行い、問題がないかを調べた上で予定を組んでいきます。手術を受ける場合には、概ね3泊4日から4泊5日ほどの入院が必要です。
- Q痔にならないために日頃から注意すべきことはありますか?
-
A
痔をはじめとする肛門の疾患を予防するには、排便習慣が非常に重要になります。おなかに力を入れて力んで便を出すというのが、最もお尻に負担をかけてしまう。理想的なのはトイレに座ったらスルッと出るような便。そのためには野菜や発酵食品を取るなど食生活を整えていきましょう。またお酒の飲み過ぎ、辛いものの食べ過ぎは肛門に刺激が強いので控えること。座りっぱなしや立ちっぱなしでいると血行が悪くなりやすいので、血流を良くするために軽く体操をすることも大切です。あとは腰を冷やさないこと。そしてお風呂にゆっくりとつかってお尻の血の流れを促すとともに、肛門の周りを清潔に保つように気をつけましょう。