福井 毅顕 先生、大倉 裕子 先生の独自取材記事
ふくい内科クリニック
(米子市/東山公園駅)
最終更新日:2022/02/02

米子市の上福原にある「ふくい内科クリニック」は糖尿病や腎疾患、訪問診療に注力するクリニックだ。インタビューに答えてくれたのは、福井毅顕院長と、姉の大倉裕子先生。福井先生は腎臓内科、大倉先生は内分泌代謝・糖尿病が専門だ。2人とも予防と健診の大切さを語り、大倉先生は「生活習慣病の予防は子どもの頃からの食育が大切」と子どもの将来に向けた予防を訴える。福井先生は大学病院で透析治療に通う高齢患者の大変さを数多く見てきた経験から、「患者さんの負担を減らしたい」と訪問診療や腹膜透析に力を入れる。開院から6年、クリニックの特色や今後について話を聞いた。
(取材日2021年1月28日/更新日2021年12月1日)
専門分野の医師が複数在籍するクリニック
クリニックの概要からお聞かせください。

【福井先生】当院は6年前に開院し、一般内科に加えて内分泌、糖尿病、腎臓をそれぞれ専門とする複数の医師が在籍し、総合病院的な性格を持つクリニックです。二診制をとっていて、常勤医の担当は福井幸子先生と大倉裕子先生が糖尿病、甲状腺、一般内科、私が腎臓、透析、一般内科、胃カメラ、エコー検査となります。水曜日の午前中は、鳥取大学医学部附属病院から来ていただいている糖尿病や内分泌が専門の複数の医師が週替わりで診察しています。また管理栄養士による栄養相談、訪問診療や往診にも対応していて、在宅療養支援診療所として24時間365日のサポート体制を整えています。
クリニックの特色を教えてください。
【福井先生】糖尿病に関して専門的な診療を提供していることです。糖尿病は代謝の病気ですが、当院には日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医が在籍しています。さらに糖尿病が悪くなると、腎臓のろ過機能が低下して糖尿病性腎臓病を発症する人もいます。私は腎臓を専門としているので、一つのクリニックの中で糖尿病と腎臓を診療できることは患者さんにとっても大きなメリットかと思います。大きな病院だと、糖尿病と腎臓内科のそれぞれに通わなければいけませんからね。当院には透析設備はないのですが、透析になったときにどのような種類があり、どのような人生になるのか、看護師さんにも協力してもらって患者さんにアドバイスをしています。
医師やスタッフの間でしっかりと連携されているのですね。

【大倉先生】そうですね。患者さんは、一人ひとり異なる背景をお持ちです。糖尿病や高血圧といった生活習慣病、腎臓病による動脈硬化などの合併症について、連携をとりながら各専門の医師がそれぞれの患者さんの現在の状態を専門的立場からわかりやすく説明することを心がけています。管理栄養士による栄養相談では、実際の食事についてヒアリングした上で問題点を考え、患者さんが実践できそうな提案を行っています。また鳥取大学医学部附属病院の医師による外来を設置しているほか、私も同大学病院で週に1回、診療や検査を行っています。このため、同大学病院との連携もスムーズと思いますし、その他の近隣クリニックや総合病院との連携体制も築いています。
在宅医療に力を入れ、腹膜透析にも対応
福井先生は日本腎臓学会腎臓専門医ですが、クリニックのドクターでは珍しいのではないですか?

【福井先生】大学病院の医局の雰囲気や、学問としての興味から腎臓を専門にしたのですが、腎臓内科の医師はとても少なく、大学病院でも重宝がられましたね。当院の腎臓内科では、透析に至るまでの間はしっかりと管理させてもらい、大きな病院での検査や、透析内科で治療が必要になった場合は都度紹介をしています。ただ、腎臓が悪い人は高齢の方が多いのですが、車いすが必要なくらいつらい状態での通院は本当に大変です。特に血液透析の場合、週3回必ず通わなければなりません。当院の場合、そういった通院が困難な患者さんに対しては訪問診療も行っていて、在宅でも透析治療ができる腹膜透析も選択肢として用意しています。
在宅で透析治療ができるのですね。
【福井先生】腹膜透析とは、おなかに専用の管を手術で挿入して、そこから透析液を注入し、自分の腹膜を利用して老廃物や余分な水分を排出して血液をきれいにする透析療法です。患者さんご自身やご家族による毎日の透析液バッグの交換は必要ですが、自宅でできて、体にかかる負担も少なく済みます。診療は月に1~2回、定期的に私たちが訪問して診させてもらいます。腹膜透析については当院の腎臓内科の患者さんには必ずお話ししていますが、選択肢として多くの方に知っていただきたいです。また、かなり高齢の患者さんの場合は「つらい状態を引き延ばさないために透析をしない」ことも選択肢の一つとして広がりつつあり、当院では訪問診療で患者さんやご家族を支援しながら、在宅での看取りもさせていただいています。
大倉先生のご専門について教えてください。

【大倉先生】内分泌代謝が専門です。昨年12月までの2年間はアメリカで非アルコール性脂肪肝炎の臨床研究に携わり、肝臓の機能や脂質代謝の研究から全身の糖代謝について理解を深めることができました。糖尿病は「膵臓から分泌されるインスリンの働きが低下することで起こる」ことはご存じの方も多いと思いますが、その前段階では、肝臓や筋肉などの全身の機能が血糖を下げようと働きかけているんです。実は血糖が上がっている状態は、そんな全身の機能をもっても、代償をしきれなくなった状態。糖尿病も含めた生活習慣病は初期の段階で手を打つことで、合併症が起こりにくくなり良い経過が見込めます。症状がない中で、食生活の改善や運動などを継続することはモチベーションを上げにくいのですが、進行すると通院やお薬などが増えて患者さん自身が大変になるので、納得いただけるようしっかりお話しすることを心がけています。
大切なのは予防と健診。今後は地域への啓発にも注力
内分泌系疾患には甲状腺や副腎の病気も含まれるのですね。

【大倉先生】甲状腺疾患は女性に多く、妊娠・出産をきっかけに見つかったり、発症したりする人がいます。実際に婦人科クリニックからの紹介も多く、甲状腺ホルモンのコントロールが必要な妊娠・周産期の患者さんも多いです。甲状腺や副腎はあまりなじみがないかもしれませんが、自覚症状としては、甲状腺疾患では動悸、体重減少やむくみ、脱毛といった症状があります。山陰には甲状腺や副腎疾患を専門とする医師が在籍するクリニックは少ないので、複数の病院やクリニックの婦人科と連携して診療しています。当院は、女性医師が在籍しており女性が気軽に相談をしていただける環境だと思います。甲状腺が腫れている、家族歴があるといった不安がある方は一度ご相談ください。
読者へのメッセージをお願いします。
【福井先生】腎臓は「沈黙の臓器」といわれ、病気がかなり進行するまで自覚症状がありません。健診で尿タンパクを指摘されたら、症状がなくても必ず専門の病院で検査してください。腎臓の機能は低下してしまうと基本的に回復することはありません。高血圧や糖尿病といった基礎疾患がある人、それからご高齢の方で降圧剤を飲んでいる方は夏場の脱水によって腎機能が低下する恐れがあります。生活習慣を整えて、定期的に健診を受けてほしいです。
【大倉先生】糖尿病の予防には食生活が大切です。ですからその基本をつくる子ども時代の味覚や食育はとても大事。保護者の方はお仕事などでお忙しいかと思いますが、お子さんが将来独立された時に自炊ができるようにご家庭でお手伝いなどをさせてあげてください。自炊ができる人は糖尿病のリスクも低くなりますよ。あとはやはり定期的な健診。放置をせずに早めに手を打つことが大切です。
今後の展望についてお聞きします。

【福井先生】クリニックをもっと患者さんが利用しやすい空間にしていけたらと思っています。そのために、看護スタッフの拡充のほか、クリニックの建て替え工事も完了したので12月からはさらに環境や体制を強化し、医療を提供していきます。そして、今後も糖尿病や腎疾患の専門的な診療と、訪問診療へ注力していくのはもちろん、より幅広い領域をカバーできるように専門の医師を増やし、地域の医療を支えていきたいです。
【大倉先生】新型コロナウイルスの感染状況を見ながらですが、地域の方へ、糖尿病教室や健康教室などを随時行っていきたいですね。そうした健康につながる情報を広く発信していきたいと思っていますので、興味のある方は、当院ホームページをご覧ください。
自由診療費用の目安
自由診療とは人間ドック/3万円、甲状腺総合検診/7000円、糖尿病総合検診/5000円、腎総合検診/5000円