慢性腎臓病で人工透析となる前に
早期発見・治療を
吉田内科クリニック
(芦屋市/芦屋駅)
最終更新日:2025/10/31
- 保険診療
10年、20年と長い期間をかけて進行する慢性腎臓病。腎臓の機能が低下していくと最終的には人工透析を受けなければならない。1週間に3度の透析、さまざまな合併症リスクの増大があるそう。超高齢社会といわれる現代においては、80代、90代になって人工透析を始めるというケースも増えてきている。一方、ここ数年医療の進歩により慢性腎臓病に有用な薬が新たに開発されたことで、早期介入による容易な進行抑制も期待できるようになってきた。そこで、日本東洋医学会漢方専門医でもあり、漢方医として40年の経験を有する「吉田内科クリニック」の吉田光範院長に、慢性腎臓病の治療について詳しく教えてもらった。
(取材日2024年11月7日)
目次
慢性腎臓病は放置していると、将来人工透析へと進むリスクも。早期治療に取り組もう
- Q慢性腎臓病とは、どのような症状なのでしょうか?
-
A
▲健康診断で数値の指摘があれば、診断結果を持参して受診を
慢性腎臓病(CKD)とは、腎臓の機能が正常の60%以下に低下したり、タンパク尿など尿検査の異常が3ヵ月以上続いたりする状態のことをいいます。初期では自覚症状がほとんどないため、気づかぬうちに進行していたというケースが少なくありません。一度低下した腎機能は元に戻すことが難しく、やがて進行を止められない状態になると、透析治療や腎移植が必要となることも。なお、腎機能は加齢に伴って低下するので、慢性腎臓病は誰でもかかる可能性のある病気といえます。近年では、成人の約8人に1人が腎臓病といわれているほどで、もはや国民病ともいえる病気なのです。
- Qどのようなタイミングで受診すればよいのでしょうか。
-
A
▲患者一人ひとりに合わせて、漢方薬の併用も勧めている
筋肉の代謝により生じる老廃物である血清クレアチニンの値と、年齢、性別から計算されるeGFRの数値が59以下の場合はすぐに受診をしてください。また、尿検査で異常が見つかったときも同様です。特に尿タンパクや尿潜血が認められた場合は、腎臓機能の異常を疑い、痛みや違和感がなくても再検査を受けましょう。また、尿の色の変化や泡立ちが認められた場合など、日常生活で気になることがあったときもご相談ください。その他、めまいやむくみ、全身の倦怠感なども腎臓疾患が原因となる場合があります。ケースとしては少ないのですが、遺伝性疾患に起因する慢性腎臓病もあるので、ご家族に腎臓を患われている方がいる場合も注意が必要です。
- Q慢性腎臓病はどのように治療していくのでしょうか。
-
A
▲早期発見と継続的な治療が何よりも重要となる「慢性腎臓病」
治療は腎機能が悪化するスピードを遅らせるのが目的です。生活習慣に関わりが強いものか、感染や遺伝、自己免疫疾患などに起因するものかでアプローチが変わります。状況に合わせて、まず睡眠時間を含めた生活習慣、食事指導による血圧管理や適度な運動といった生活の見直しを行います。そして、慢性腎臓病の治療薬として脚光を浴びている「SGLT2阻害薬」。これは、腎臓の保護効果が長期にわたり期待できる薬で、当院でもこの薬を主とした治療を行っています。またこの数十年、ここでは十分説明できませんが、慢性腎臓病の治療に対しては漢方薬も役立つのではないかという観点で研究が進んでおり、私もその成果に大いに期待しています。
- Q治療により人工透析の回避につながる可能性があるのですね。
-
A
▲落ち着いた雰囲気の待合室
慢性腎臓病は10年、20年と長い期間をかけて悪化していき、最終的には人工透析を受けざるを得ない状況になるのが実情です。人工透析には週3回、1回4~5時間ほど生活が制限されるという課題があります。さらに人工透析は、腎臓とまったく同じ機能というわけではありませんので、心筋梗塞や脳梗塞など合併症リスクが非常に高いのです。また人工透析の患者数を減らすことは、国の医療費抑制にもつながります。早いうちから慢性腎臓病のリスクを見つけ出し、悪化させないよう治療することはとても重要なことなのです。
- Q腎機能を低下させないために、気をつけるべきことはありますか?
-
A
▲漢方薬のさらなる可能性について話す吉田院長
腎機能悪化の原因は、血圧や血糖値、尿酸値が高いなどさまざま。そのため、生活習慣の改善が重要です。塩分や脂質を取りすぎずバランス良く食べ、適度な水分補給を心がけましょう。節酒や禁煙、薬の服用にも配慮し、状況によってはタンパク質の摂取制限も必要です。また、適度な運動や質の良い睡眠を取り、ストレスをため込まないようにしましょう。最近では高齢化が進み、糖尿病や高血圧から腎臓病になる方が増え、腎不全となり透析を始める方も多いです。しかし今の段階で、腎不全の進行を完全に防ぐ有効な薬は残念ながらありません。そんな中、近年は漢方薬により腎機能の維持・改善が見込めるのでは、という視点で研究が進められています。

