妊娠から分娩まで一貫して
女性を支援する新タイプの産科
メディカルパーク湘南
(藤沢市/湘南台駅)
最終更新日:2021/10/12
子どもを切望する人々に、細いながら強い光をもたらす不妊治療。努力が報われようやく子どもを授かったとき、不妊治療で通った医院から別の産科を紹介され出産するのが一般的だと言われる。ただ妊婦の立場からすると、妊娠から出産まで継続的に管理してくれたらいいのにな、と思う人も少なくないだろう。そこで今回は、不妊治療専門医院で産科も併設するという珍しい形態をとる「メディカルパーク湘南」の田村俊男先生を取材した。
(取材日2016年1月4日)
目次
卵の状態から分娩まで見届ける、妊娠・出産を望む女性たちの頼もしいサポーター
- Q新しい形態の産科という印象ですが、特徴を教えてください。
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A
妊娠から分娩までを一貫してサポートするスタイルをとっている点です。もともと当院は不妊治療専門医院で、なかなか子どもに恵まれない方たちの“妊娠のサポート”をしてきましたが、妊娠したら終わりではなく出産まで継続的に女性を支援したいという思いから、産科を立ち上げました。不妊治療のクリニックで産科が併設し周産期医療まで対応している医療機関は、クリニックレベルではまだ珍しく、赤ちゃんを抱っこして帰るところまでやってるところは少ないのが実情です。そのため、当院に通われる妊婦さんは、自然妊娠の方もいらっしゃいますが、当院で不妊治療を受けられた結果妊娠して引き続き産科に通われる、というケースが多いですね。
- Q妊婦さんにはどのような傾向がありますか?
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A
高齢出産の方が多い傾向があります。不妊治療を受け、その結果ようやく妊娠したという方が多いためです。2012年のデータでは35〜39歳が最も多く、次いで30〜34歳、40歳以上と続きます。また、不妊治療の一環として内視鏡手術を受けた経験がある方など、本来は大学病院で対応するようなハイリスクの妊婦さんが多いのも傾向として挙げられます。安心して元気な赤ちゃんを産んでいただけるように当院では、万一の場合でも緊急手術に即対応できる技術を持つスタッフと大学病院レベルの手術設備をそろえています。時として大学病院など高次機能病院とも密に連携を図りながら、『安全に勝るものは無い』というスタンスで周産期医療に取り組んでいます。
- Q手術設備が整っていると、患者さんの安心感も大きいですよね。
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A
そうですね。妊娠期間中は大きなトラブルがないことがほとんどですが、お産については重篤な合併症が起きることもあり得ます。例えば、赤ちゃんの心音が下がって救命を要するような場合や、予定よりかなり早く生まれてくるケース、あとは、お産に時間がかかって赤ちゃんが弱ってしまい、通常分娩を行うのは難しく手術するといった状況。それから、高齢出産の場合は血圧が高くなる傾向があり、そのまま自然のお産を迎えるとさらに血圧が高くなり危険を及ぼす可能性も。そうしたさまざまなケースを想定したうえで、どんな状況にもいつでも対応できるように技術や設備を整え、365日24時間オンコール体制で緊急の手術に臨めるようにしています。
- Q5人に1人が帝王切開で生まれると言われますが……。
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A
当院は不妊治療で妊娠された方のお産が多い関係で正常分娩が難しいことが多く、帝王切開は相当な数を手がけています。2014年は450のお産のうち108件が帝王切開。母体への負担を考え、帝王切開にしろ会陰切開にしろ、細い糸や小さな針で縫合します。ちなみに108件のうち107件は横切りでした。おへその下から恥骨に向かって切る縦切りは手術時間が短く赤ちゃんを早く安全に取り出せる一方、傷が目立ちます。そのため、恥毛のすぐ上を切開し傷跡が目立たない横切りを望む方が多いのです。傷跡も痛みも縫い方次第で天と地ほどの差がありますから、妊婦さんの体にも心にも負担の少ない方法を選ぶのも産科医の重要な役目だと思います。
- Q無痛分娩も行っているそうですね。
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A
はい。2014年は全妊婦さんの10%程度でしたが、2015年は30%と、当院では無痛分娩は増加傾向にあります。基本は自然妊娠を推奨していますが、妊娠10カ月までの間に赤ちゃんと向き合い、自然分娩にするか無痛分娩にするかたくさん迷って決めてほしいですね。よく誤解されがちですが、無痛分娩は痛みが完全になくなるわけではなく、背中・腰周辺に硬膜外麻酔という麻酔を注入し痛みを和らげる方法で、「和痛」と言ったほうが正しいかもしれません。ただ、お母さんの痛みは緩和できても赤ちゃんの痛みを取ることはできませんから、「赤ちゃんは痛みに耐えて頑張って生まれてきてくれた」という思いを子育てに生かしていただけたらうれしく思います。