骨密度検査で自分の骨を知ろう
骨粗しょう症であれば早期治療を
古賀整形外科
(荒川区/熊野前駅)
最終更新日:2023/04/03
- 保険診療
日本人の健康寿命を脅かす原因の1つとされているのが、加齢などによって骨の強さが低下し、骨折しやすくなる「骨粗しょう症」だ。年齢を重ねるほど発症する危険性が高くなり、特に女性はそのリスクが高いとされている。ところが、初期には症状がないか、きわめて軽いため、発見が遅れる場合が多い。予防や治療をせずに放置すると、骨がもろくなり、尻餅をついたぐらいのことでも背骨が骨折するようになってしまうという。「古賀整形外科」の近藤泰児院長は「自覚症状がない場合でも、1年に1回のペースで定期的に検査を受けてほしい」と呼びかける。気になる検査の内容や流れについて、詳しく教えてもらった。
(取材日2023年3月17日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q骨粗しょう症とはどんな病気か教えてください。
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A
骨粗しょう症とは、さまざまな原因により骨の新陳代謝のバランスが崩れ、骨の強度が低下することで骨折しやすくなる病気です。閉経や加齢が原因のことが多いのですが、遺伝の影響もあると言われ、家族や親族に骨粗しょう症の人がいたら注意が必要です。また、ステロイドホルモンを長期的に服用している人や、がんによる消耗性の疾患がある人など、内科的な疾患によって骨粗しょう症になる場合もあります。主な症状として、背中や腰が重い、だるい、曲げ伸ばしで痛いなどが挙げられます。進行すると、背中や腰が曲がる、転んだり手をついたりした際に骨折するようになります。初期の段階では症状がないことも多く、自覚しにくい病気でもあります。
- Q特に検査が必要なのはどのような人ですか?
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A
閉経後の50歳以上の女性です。骨の新陳代謝は女性ホルモンの影響を受けていて、閉経して女性ホルモンの分泌量が減ると、骨の量が減少し、骨の質も低下していきます。そのため、女性は50歳を過ぎたら検査を意識してもらいたいと思います。痩せ型の人や家族に骨粗しょう症の人がいる、がんによる手術歴があるという人はさらにリスクが高まります。これらに当てはまらない人や自覚症状がない人も、「自分は大丈夫」と思わず、70歳を超えたら必ず検査を受けるようにしてください。自分の骨が今どのような状態なのかを知り、早めに予防や治療に取り組むことで骨折や背骨が曲がるリスクを減らすことが期待できます。
- Q骨粗しょう症の治療はどのようなものですか?
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A
まずは薬物療法があります。患者さんの骨の新陳代謝に応じて、骨の量や質を向上させる薬の処方や注射を行います。そして、骨粗しょう症の治療にはバランスの取れた食事と運動による力学的な刺激が欠かせません。骨粗しょう症と聞くと、カルシウムを十分とることが強調されますが、それだけでなくタンパク質やビタミン類もしっかり補えるよう食事が重要です。運動は全身運動なら何でもよいですが、ある程度の強度があった方が望ましいと思います。ウォーキングは手軽で有用ですが、週1・2回は早歩きをしてみたり、歩行中に小走りやスキップを短時間取り入れたりするとさらに効果が期待できます。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診
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問診では、まず高血圧や糖尿病をはじめとする内科疾患の既往歴や骨折既往の有無、家族に骨粗しょう症の人がいるかを確認する。さらに、若い頃や現在の運動習慣やその量、仕事や家事、家族構成、食生活についてもヒアリング。初期段階では自覚症状が出にくいことに加え、ストレスや環境の変化によって症状の進行が早まることもあるため、日常生活全般について患者の話にじっくり耳を傾ける。
- 2骨粗しょう症に対する検査
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骨粗しょう症がもっとも現れやすい背骨のレントゲン撮影を行い、椎体の変形の有無、骨梁や椎間板の状態などをチェックする。続いて骨密度測定を行う。これは2種類のエックス線の透過度の違いを用いて骨密度を計測するもので、通常は背骨と大腿骨の付け根の2ヵ所を計測。かかる時間は10分ほど、検査結果はその日のうちにわかる。さらに骨代謝の状態を知るために、血液と尿検査を行う。
- 3検査結果の判定・説明
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レントゲン撮影、骨密度検査、血液・尿検査の結果をもとに、骨粗しょう症の診断。レントゲン写真で、椎体骨折や変形の有無、骨粗しょう症以外の疾患の合併の有無を判定する。骨密度の数値を評価し、血液・尿検査から骨吸収と骨形成の状態を判定する。以上により、骨粗しょう症の有無、程度、骨代謝からみて改善すべき点などが診断され、説明を受ける。治療が必要な場合には、年齢や生活スタイルに合わせた治療計画を話し合う。
- 4治療
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骨密度が65%を下回っている場合には、なるべく早くに内服薬や注射による薬物療法を開始して、骨密度を向上させ、骨折しにくい状態にすることを目標とする。同時に、生活習慣の改善を行う。重要なのは、食事・運動・睡眠の3つ。バランスの取れた食事や適度な運動を行い、十分な睡眠をとること。薬物療法の効果が高まると期待でき、しなやかで骨折しにくい骨を形成し、維持することが望める。
- 5通院と経過観察
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骨粗しょう症の診断を受けた場合には、治療を続けながら半年に1回のペースで検査を。異常が見つからなかった、または経過観察となった場合も、最低でも1年に1回の検査が必要だという。治療で症状の緩和が望めたとしても、加齢による体の変化は止めることはできない。また、検査や医師の目でなければ気づかない症状の端緒もあるという。定期的に自分の骨の状態を確認する機会を持ち、医師からアドバイスを受けることが大切だ。