失明の可能性もある緑内障
進行抑制を図るには早期発見が重要
溜池眼科医院
(港区/溜池山王駅)
最終更新日:2024/02/09
- 保険診療
40代以上の20人に1人が発症する「緑内障」。日本人の中途失明原因の第1位に挙げられる深刻な疾患ながら、自覚症状なく進行するため発見が遅れ、視野欠損などを自覚した時点では既に末期といったケースも少なくない。失明という最悪の事態を防ぐための鍵は、やはり早期発見と早期治療。緑内障の治療を数多く手がける「溜池眼科医院」の鹿内真美子先生は、「症状が出る前に対応できれば、進行を遅らせ、生活に必要な視力を維持していくことも望めます」と話す。緑内障とはどのような病気なのか、また発症しやすい傾向や治療法について解説してもらった。
(取材日2023年10月19日)
目次
40歳以上は定期的な眼科検診を。視力・眼圧だけでなく眼底検査も受けることが早期発見の鍵
- Q緑内障とはどのような病気ですか?
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A
緑内障は視神経の細胞が少なくなって、視野が欠けてしまう病気です。眼圧の上昇が原因の一つとされていますが、日本人には眼圧が正常であっても視野が欠ける「正常眼圧緑内障」が多いといわれています。眼圧だけで判断すると見逃しやすく、視神経の状態を確認する眼底検査や視野検査などを行って診断します。自覚症状はほとんどなく、出ても視野の一部がかすむ程度。片目ずつであればかすんで見えても、普段は両眼で補完し合って見ているため、非常に気づきにくいです。一方、眼圧上昇によって起こる「閉塞隅角緑内障」は、眼痛や頭痛などの急性緑内障発作を起こす恐れがあり、放置するとわずか1日で失明に至ることもあります。
- Qどんな人がかかりやすいのでしょうか?
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A
正常眼圧緑内障は、血縁に緑内障患者さんがいる場合は特に注意が必要です。年齢では40歳以降に発症することが多いですが、中には30代の患者さんもおられます。また、強い近視があると緑内障を発症しやすいといわれています。近年、レーシックや眼内コンタクトレンズなどの視力矯正手術を受ける方が増えました。しかし、手術により近視の矯正を図っているに過ぎず、近視体質にあることに変わりはありません。手術で視力の改善が見込めても、年に1度は眼科で検査を受けられることをお勧めします。閉塞隅角緑内障は遠視の方に多い傾向があります。いずれにせよ、40歳を過ぎたら検査を受けて異常がないかチェックすることが大切です。
- Q治療法にはどのようなものがありますか?
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A
点眼薬などによる薬物治療、レーザー治療、手術の3つがありますが、いずれも根本的な治療ではありません。現在の医療では一度欠けてしまった視野を取り戻すことはできず、だからこそ早期発見・早期治療によって進行を遅くすることをめざし、一生自覚症状が出ないようコントロールを図ることが大切です。早期に発見して点眼治療を続けていけば、車の運転なども続けられ、日常生活に支障を来すことはない状態に保てることが望めます。進行抑制を図るには眼圧を低く保つことが有用とされ、まずは点眼薬から治療を始め、4~5種類の点眼薬を併用しても眼圧が下がらない場合や、視野欠損の進行速度が速い場合にレーザー治療や手術が選択されます。
- Qレーザー治療や手術について教えてください。
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A
眼圧とは「目の硬さ」のことで、目の中で作られる水(房水)が循環することで一定に保たれています。房水の量が増えたり、排出される量が減ったりすると眼圧が高くなるため、レーザー治療や手術で房水の出口を広げて循環を良くすることをめざしたり、房水の産生を抑えることを図ったりすることで眼圧を下げることをめざします。一般的に、レーザー治療を行っても効果が見込めない場合に手術が選択されますが、目的は眼圧を下げることなので手術をしても一度欠けた視野は改善されません。手術方法によっては感染症など合併症のリスクもあり、手術にならないよう早期に治療を始めることが大切だと思います。
- Q緑内障を早期に発見するためのポイントを教えてください。
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A
健康診断によっては眼底検査がないこともありますので、40歳を過ぎたら眼底検査を含んだ健診を定期的に受けましょう。1、2ヵ月で悪くなる病気ではないので年1回の受診で十分です。眼底検査では、緑内障の兆候である「視神経乳頭陥凹(視神経のへこみ)」を観察し、へこみが大きいと緑内障の疑いありと診断します。人間ドックで撮影される眼底写真でも評価はできますが、見逃されることもあります。その点、眼科では眼底3次元画像解析(OCT)で視神経の断面図を撮影、潜在的な緑内障の兆候を詳細に調べることができます。撮影時間は数分で痛みも少なく、当日結果がわかるので、眼科で視神経のチェックを受けることをお勧めします。