生理的な症状に思わぬ疾患が潜む
飛蚊症と網膜剥離
溜池眼科医院
(港区/溜池山王駅)
最終更新日:2021/10/12


眼の前に小さな虫や糸くずが飛んでいるように見える「飛蚊症」。加齢によって誰にでも起こる症状の一方、網膜剥離など失明にもつながる重大な疾患によって引き起こされるケースも多く、その数が急に増えたり、頻繁に見え出した時には特に注意が必要だ。飛蚊症のメカニズムと検査方法、網膜剥離の場合の治療法などについて、網膜剥離のレーザー治療も手掛ける「溜池眼科医院」の鹿内真美子先生に聞いた。
(取材日2013年10月3日)
目次
病的な変化を伴っていれば失明の危険も。精密眼底検査で早期に見極めを
- Q飛蚊症とはどんな病気ですか?
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A
▲負担の少ない治療や、専門用語を多用しない分かりやすい説明を心がけている
目の前に何か浮いているように見えたり、視線を動かすのに伴ってその浮遊物も動いて見えたりします。目玉の中には「硝子体」と呼ばれるゼリー状の物質が詰まっていて、目はこの硝子体を包む「網膜」が感じた光を電気信号に変えて、視神経を通じて脳に伝えます。この硝子体と網膜はもともと密着していますが、年齢とともに硝子体の組織から水分が失われてしぼんでくることによって、硝子体と網膜の癒着がはがれる際に飛蚊症が起こります。それ自体は加齢に伴う生理的な現象なのですが、うまく癒着がはがれずに引っ張られた網膜の組織が破れたり、出血することがあります。こうした病的な変化を伴っている場合、放置すると失明の可能性があります。
- Q飛蚊症が起こりやすいのはどういう人ですか?
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A
▲院長は眼科専門医であり幅広い治療分野に対応できる実力の持ち主
近視の人は飛蚊症の症状が早く出ると言われていて、中には20代で症状を自覚し、受診する方もいらっしゃいます。近視は遺伝的な要因もありますが、近年はパソコンやスマートフォンの普及によって、より近視が進むような生活スタイルが定着していますから、網膜剥離などによる病的なケースも念頭に、飛蚊症が気になりだしたら早めに眼科専門医のもとで検査を受けられることをお勧めします。網膜剥離や眼底出血といった病的なケースでない限り、飛蚊症は治療する必要はありません。出始めはとても気になるものですが、病的なケースでなければ時間の経過とともに視界の中心から端にずれていき、見える頻度が減るため、あまり気にならなくなります。
- Q検査はどのように行うのでしょうか?
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A
▲飛蚊症の症状を感じたらすぐに眼科受診を!
飛蚊症は網膜剥離のほか、糖尿病網膜症、ブドウ膜炎、黄斑変性などの疾患を含んでいる可能性がありますが、生理的な飛蚊症か、こうした病的なものかは、精密眼底検査を行わなくては判断できません。精密眼底検査は目薬を使って瞳孔を広げ、網膜の端から端までを医師が顕微鏡でくまなく調べます。なお瞳孔が開いて網膜の端まで見える状態になるまで、点眼してから30分程度を要します。人間ドックで撮影する眼底写真では網膜の中央部しか撮られないため、発見できないことも多いですから、飛蚊症の症状が気になり始めたら、一度眼科専門医の検査を受け、失明につながるような深刻な疾患が隠れていないか見極めてもらうことが大切です。
- Q網膜剥離の場合、治療はどのような方法で行いますか?
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A
▲予約制にてレーザーによる日帰り手術を行う
剥離が広範囲に及ぶ場合は入院を伴う手術になりますが、小さいものであれば、日帰りのレーザー治療で完治させることができます。レーザーの処置自体は10分〜15分で終わり、処置後に眼帯をする必要もありません。当院は地域柄オフィスワーカーの方が多いのですが、網膜剥離は飛行機に乗った際の気圧の影響でも悪化してしまうため、出張前にレーザーの処置を希望される患者さんも目立ちます。以前、飛蚊症で受診され、検査で網膜の一部に網膜剥離になりやすい箇所があることを指摘していた患者さんが、受診せずにいるうちに症状が悪化し、手術を余儀なくされたケースもありました。定期的な受診はそうした重症化を防ぐことにもつながります。
- Q飛蚊症も治療で治すことはできますか?
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A
▲早期発見、治療に積極的に取り組んでいる
飛蚊症は主に加齢に伴う現象で、いわば目の中にできた「シミ」。伴って起こる網膜剥離を手術やレーザーで治せば失明することはありませんが、そうした治療でそもそもの飛蚊症が消えることはありません。ただし飛蚊症を引き起こしている病的な原因を取り除いたわけですから、飛蚊症が見える頻度が減ることは期待できるでしょう。飛蚊症をなくすには、加齢によって変化した硝子体の組織をまるごと人工的なものと取り換える「硝子体手術」を行う方法がありますが、極めて大掛かりでリスクの高い手術ですから、お勧めできません。市販の点眼薬や内服薬で「飛蚊症が消えた」という広告を見かけることがありますが、これらも医学的な根拠はありません。